もう一度君に会うために、僕は生まれ変わったんだ。あの時の約束を果たすよ。

はやまさくら

前世の約束(脚本)

もう一度君に会うために、僕は生まれ変わったんだ。あの時の約束を果たすよ。

はやまさくら

今すぐ読む

もう一度君に会うために、僕は生まれ変わったんだ。あの時の約束を果たすよ。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  最近、僕は
  同じ夢を繰り返し見ている。

〇田舎駅の改札
将太の父「将太、お国のために頑張るんだぞ」
将太の母「身体に気をつけるのよ。 あなた、そそっかしいから心配だわ」
将太(しょうた)「心配しないで!」
将太(しょうた)「日本男児の務め、立派に果たしてみせます」
咲子(さきこ)「将太、元気でね。 絶対に戻ってきてよ?」
将太(しょうた)「許嫁の君を置いて、僕は死んだりしない」
将太(しょうた)「戦争から復員したら、正式に求婚するよ」
将太(しょうた)「受けてくれるよね?」
咲子(さきこ)「・・・うん」
将太(しょうた)「必ず迎えに行くから、待っててくれよ」
咲子(さきこ)「分かったわ、約束よ?」
将太(しょうた)「では行ってきます」
「東京行き汽車、まもなく出発します。 ご乗車の方はお急ぎ下さい」
咲子(さきこ)「将太・・・」

〇男の子の一人部屋
将之(まさゆき)「・・・はっ!!」
将之(まさゆき)「なんだ、またあの夢か・・・」
将之(まさゆき)(僕と何か関係があるんだろうか?)
  夢の意味を考えても、
  答えは出ない。
  僕は考察を一旦保留して、
  大学へと向かった。

〇大学の広場
美沙紀(みさき)「将之くん、おはよう!」
将之(まさゆき)「おう、おはよう。 美沙紀も一限目の講義に出るんだろ?」
美沙紀(みさき)「もちろんよ、必修科目だからね」
将之(まさゆき)「じゃあ、一緒に教室まで行こうぜ」
美沙紀(みさき)「ええ、行きましょ♪」
  彼女の名前は、篠塚 美沙紀。
  大学の同期生だ。
  お互いの地元が近く、話が合うので、
  一緒に行動することが多い。
  僕も男だ。彼女の存在は気になるけど、
  どうやら想い人がいる模様・・・
  だから、
  美沙紀とは友人づきあいで満足している。
将之(まさゆき)「そういえばさ、前に「変な夢を見た」と 話したことがあるだろ?」
将之(まさゆき)「今朝も見ちゃったんだよ。 妙にリアルな夢だし、何なんだろう・・・」
美沙紀(みさき)「それって、 戦争に行った許嫁を待つ女の子の話?」
将之(まさゆき)「そう、その話」
将之(まさゆき)「立て続けに同じ夢を見ると、 さすがに気になるんだよね」
将之(まさゆき)「夢に出てくる人たちについて 調べたいんだけど、」
将之(まさゆき)「どうすればいいんだろ?」
美沙紀(みさき)「将太という人が汽車に乗るんだったよね?」
美沙紀(みさき)「その駅の名称が分かる? 夢の中に出てこない?」
将之(まさゆき)「なるほど! 駅名から将太の出身地が分かるのか!」
将之(まさゆき)「考えつかなかったな・・・ ちょっと思い出すね」
将之(まさゆき)「ええと・・・」
将之(まさゆき)「確か・・・霜月駅、だったと思う」
美沙紀(みさき)「えっ、それって私の地元よ!」
美沙紀(みさき)「将之くんの地元からは、 電車で1時間くらいかしら?」
将之(まさゆき)「同じ県内なのに、気づかなかったな・・・」
美沙紀(みさき)「ローカル線の無人駅だからね。 知らなくて当然だよ」
将之(まさゆき)「よし、GWの休みを利用して、 霜月駅まで足を伸ばしてみるよ」
将之(まさゆき)「・・・もし都合がよければ、 同行してくれないかな?」
将之(まさゆき)「地元の人と一緒なら、 スムーズに調査できると思うんだ」
美沙紀(みさき)「いいわよ? 私、GWは帰省するつもりだったし」
将之(まさゆき)「本当、助かるよ!!」
  美沙紀に相談してよかった。
  これで夢の意味を知ることができる。
  それに美沙紀と
  一緒に行動できるなんて嬉しいな。

〇田舎駅の改札
  数日後・・・
将之(まさゆき)「ここが美沙紀の地元かぁ。 のどかな町だね」
美沙紀(みさき)「あはは、田舎だからね。 では、早速調査を開始しよっ!」
美沙紀(みさき)「とりあえず 駅前の商店街で聞いてみよっか」
将之(まさゆき)「そうだね。 ご年配の方なら、何かご存知かも・・・」

〇商店街
将之(まさゆき)「あの、突然すみません。 少しお伺いしたいことがあるんですけど」
老婦人「ん、何だい? 見ない顔だね」
老婦人「・・・おや、そちらは篠塚さん宅の お嬢さんじゃないか。大きくなったね」
美沙紀(みさき)「こんにちは、ご無沙汰しております」
  一気にご婦人の警戒心は解けたようだ。
  美沙紀に同行してもらってよかった。
将之(まさゆき)「実は、将太と咲子という人物について 調べているんですけど・・・」
将之(まさゆき)「二人とも1920年代の生まれだと 思います」
将之(まさゆき)「何かご存知ないでしょうか?」
老婦人「将太という人物には心当たりがないねぇ」
老婦人「私は戦後生まれで、世代が違うからね」
老婦人「でも、咲子さんなら知ってるよ」
将之(まさゆき)「ほ、本当ですか!?」
老婦人「私が通っていた幼稚園に、 ”大原 咲子”という名の先生がいたんだ」
老婦人「長くお勤めだったから、 親子二代で世話になったよ」
将之(まさゆき)「今、その咲子先生は どうしているんですか?」
老婦人「ああ、随分前に亡くなったよ」
老婦人「綺麗な人だったんだけど、」
老婦人「戦死した許嫁のことを忘れられず 一生涯独身を貫き通したんだ」
老婦人「だから、今は市営墓地にある 大原家のお墓で眠っているよ」
将之(まさゆき)(将太さんは戦死したんだ・・・)
老婦人「私が知っているのは、このくらいかねぇ」
将之(まさゆき)「色々ありがとうございました!」
美沙紀(みさき)「この後、どうしよう?」
将之(まさゆき)「そうだね・・・」

〇黒
  何故だろう?
  咲子さんの墓標に手を合わせねば、
  と僕は強く思った。

〇霊園の入口
将之(まさゆき)「ここが市営墓地?」
美沙紀(みさき)「ええ、大原家のお墓はこっちよ」
  僕は美沙紀の後をついていった。

〇墓石
  咲子さんの墓前に立った瞬間、
  僕は全てを思い出した。

〇密林の中
  そうだ、”僕”は南方作戦に従軍し、
  ニューギニアで
  マラリアに罹って死んだんだ。
  ごめん、咲子。
  約束を守れなくて・・・

〇墓石
咲子(さきこ)「やっと思い出してくれたんだ?」
咲子(さきこ)「将太のバカ。何十年待たせるつもり?」
将之(まさゆき)「えっ、美沙紀・・・?」
美沙紀(みさき)「私は大学で将之くんに会った瞬間、 全てを思い出したのに・・・」
美沙紀(みさき)「あなたは1年経っても 思い出してくれなくて」
美沙紀(みさき)「内心焦ってたんだよ」
美沙紀(みさき)「このまま思い出してくれなかったら、 どうしようって・・・」
美沙紀(みさき)「今度こそ、約束守ってね?」
将之(まさゆき)「も、勿論だよ!」
  そうか、美沙紀の想い人というのは・・・
  将太さん、
  もとい僕のことだったんだ。
  生まれ変わっても、
  また待たせてしまってゴメンよ。
  怒られて当然だ・・・
  でも、今度こそ君を幸せにしてみせる。

〇幻想
  HAPPY END

コメント

  • 途中で挿入された死亡告知書にハッとしました。これが手元に届いた家族はどんな思いでこれを見たのか…。ラストシーンの HAPPY END に至るまでどれほどたくさんの涙が流れたんだろうなと思うと、現代を生きる将之と美沙紀も私たちも、幸せになる義務みたいなものを感じました。

  • 時代を越えて2人の夢がようやく実現。素敵なストーリーでした。
    2人で夢の内容を調べに行くという設定もよかったです。
    本当に、もっと字数増やしてじっくり読みたいストーリーですよね。

  • 最後までどうなるかハラハラして読んでいましたが、ハッピーエンドで良かったです。お幸せに・・・。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ