詐欺師の誤算!(脚本)
〇噴水広場
カモ1「綺麗な婚約指輪でしょう?」
カモ1「これなら、私と結婚してくれる?」
ウィリアム「もちろんです」
〇レストランの個室
カモ2「私と結婚して?」
ウィリアム「YES」
〇西洋の市街地
ウィリアム(チョロイ、チョロイ!)
ウィリアム(もっと稼ぎたいところだが・・・)
ウィリアム(そろそろ狩場を変えるか)
ウィリアム(詐欺師たるもの、引き際は見極めねえとな)
ウィリアム「お次は・・・」
ウィリアム「『クレア伯爵家でバトラー募集』?」
ウィリアム「こいつは、ちょうどいい」
〇ファンタジーの学園
ウィリアム(なかなか立派な屋敷だ)
ウィリアム(たんまり金を貯めこんでいそうだな)
〇洋館の玄関ホール
ウィリアム(まずは、ここの奥様を誘惑して貢がせるか)
アイラ「こんにちは。 メイド長のところへ案内するね」
坊ちゃん「君が新しいバトラー?」
アイラ「この家の坊ちゃんよ」
ウィリアム「よろしくお願いします」
坊ちゃん「よろしく」
ウィリアム(顔はいいみたいだが・・・)
ウィリアム(俺様には敵わないな!)
〇大広間
ウィリアム(俺様にかかれば、どんな女だろうとメロメロだ!)
グレース「メイド長のグレースと申します」
ウィリアム「め」
グレース「め?」
ウィリアム(めっちゃ、かわええぇぇぇぇぇ!)
ウィリアム(待て待て)
ウィリアム(モロ好みなんだけど、このメイドさん!)
ウィリアム(天使か?)
グレース「何か?」
ウィリアム(いや、百戦錬磨のこの俺様だぞ!)
ウィリアム(こんな年端もいかない少女に惚れるか?)
ウィリアム(ありえないだろ。何かの間違いだ)
ウィリアム「メ、メイド長だなんて、若いのに優秀なのですね」
グレース「いえ。先日、使用人の約半数がいなくなったので、くり上がっただけです」
ウィリアム「何かあったのですか?」
グレース「・・・・・・一身上の都合です」
ウィリアム(何? 今の間・・・)
グレース「現在、当家にはフットマンもバトラーもいないので、特例として私が教育係を勤めます」
グレース「どうぞ、よろしく」
ウィリアム(くそう、この笑顔・・・天使だ!)
ウィリアム「あの!」
ウィリアム「仕事が終わったら、お茶でも──」
グレース「見習いに、そんな暇はありません」
ウィリアム「見習い?」
グレース「試用期間のうちは、貴方は見習いの扱いです」
グレース「危険手当もその分少ないので、そのつもりで」
ウィリアム「は?」
坊ちゃん「メイド長、ちょっといい?」
グレース「少し失礼します」
ウィリアム「危険って、何だ?」
ウィリアム(だが、そんなことより一番の問題は・・・)
ウィリアム(あのメイドさんが、かわいすぎることだ!)
ウィリアム(仕事に全く集中できん!)
アイラ「ウィリアム君!」
アイラ「ちょっと荷運びを手伝ってくれる?」
〇華やかな広場
アイラ「ありがとう、助かったわ」
ウィリアム「どういたしまして」
ウィリアム「アイラさんはここに勤めて、長いのですか?」
アイラ「2、3年てところかな」
アイラ「メイド長なんて、親の代からこの家に仕えているから、」
アイラ「生まれたときからここで働いているようなものよ」
ウィリアム「彼女、美人ですよね」
アイラ「惚れたの?」
ウィリアム「いえ、そんなことは・・・」
ウィリアム「ちなみに、メイド長に彼氏はいるんですか?」
ウィリアム(って、何を訊いているんだ、俺様は!)
ウィリアム(そんなことより、屋敷の警備や奥様のことを訊くべきだろう!)
アイラ「彼女は、やめたほうがいいわよ」
アイラ「何せ、坊ちゃんと恋仲って噂だもの!」
ウィリアム「えっ」
ウィリアム「あいつと・・・」
アイラ「坊ちゃんは、メイド長と年が近くてね」
アイラ「幼なじみっていう王道の展開よ!」
アイラ「それに、身分差の禁断の恋・・・」
アイラ「ぽっと出に勝ち目はないわ!」
ウィリアム「あ、はは・・・ソウデスカ・・・」
アイラ「フラフラしているけど、大丈夫?」
ウィリアム「大丈夫です、オカマイナク・・・」
アイラ「ふふ、ちょっと遊びすぎちゃったかな」
〇大樹の下
グレース「こんなところにいたのですか」
グレース「探しましたよ」
ウィリアム「すみません」
グレース「どうしました? 顔色が悪いですよ」
ぴとっ。
〇雲の上
ウィリアム(か、彼女の手が頬っぺたに・・・!)
ウィリアム(もう、いつ死んでもいい・・・)
〇大樹の下
ウィリアム「ごふっ」
ウィリアム「な、何で急に平手打ちなんか──」
ウィリアム「銃声!?」
グレース「ちっ。さっきの侵入者の残党か」
ウィリアム「は!?」
グレース「ウィリアムさんは、そのまま伏せていて」
ウィリアム(ス、スカートの下から銃!?)
ウィリアム(下着は白か・・・!)
ウィリアム(ん? あれは──)
刺客「死ね!」
ウィリアム「危ない!」
グレース「ウィリアムさん!?」
グレース「この!」
グレース「怪我は!?」
ウィリアム「大丈夫、腕を掠めただけです」
グレース「手当てします」
ウィリアム(あーあ。何してんだろ)
ウィリアム(所詮、赤の他人なのに)
〇西洋の街並み
〇荒廃した街
ウィリアム「どうせ、この世に神なんていない」
ウィリアム「他人に甘ければ、自分が割りを食うだけ」
ウィリアム「今までの人生で、嫌というほど学んだ」
ウィリアム「だから、他人を騙すことにした」
〇中世の街並み
ウィリアム「自分が騙されて奪われるより、ずっといい」
〇大樹の下
ウィリアム(それなのに、他人を庇うなんて・・・)
グレース「私を庇ってこんな怪我をするなんて、馬鹿ですね」
グレース「貴方には何の得もないのに」
ウィリアム「その通りだと思います」
ウィリアム「でも、貴方を守れてよかったと思う気持ちがあるのも、確かです」
グレース「なるほど」
グレース「さすが、すご腕の詐欺師」
グレース「危うく騙されそうな嘘ですね」
ウィリアム「は? 何を──」
グレース「隠さなくても、既に調べはついています」
グレース「というか、その腕を見こんで雇いました」
グレース「貴方の人心掌握術、資産運用力はバトラーとして使えます」
ウィリアム「なっ」
グレース「ああ、人手不足なのは本当ですよ」
グレース「当家は派閥争いで、襲撃が絶えないのです」
ウィリアム「もしかして、使用人の半数が辞めたのって・・・」
グレース「死亡退職です」
グレース「ああ、大丈夫ですよ」
グレース「危険手当は出ますし、私たちも護衛します」
ウィリアム「よく命をかけられるな」
グレース「仕事ですから」
ウィリアム「坊ちゃんのためか?」
グレース「は?」
ウィリアム「仲がいいんだろ?」
ウィリアム「さっきだって、呼びにきていたし!」
グレース「何のことですか?」
グレース「先ほどのは、敵襲があったからです」
ウィリアム「だって、アイラさんが・・・」
グレース「ああ。詐欺師のくせに、担がれましたね」
グレース「坊ちゃんとは、何もありません」
グレース「人を弄ぶのは、アイラの悪い癖です」
ウィリアム「本当に?」
グレース「ええ」
ウィリアム(よかった・・・)
ウィリアム(神よ、今回だけは感謝してやる!)
グレース「何をそんなに・・・ああ」
グレース「私を丸めこみたいのですか?」
ウィリアム「へ?」
グレース「女性を落とすのが、貴方の常套手段だとか」
グレース「でも残念ながら、当家の奥様は里帰り中です」
ウィリアム「里帰り?」
グレース「旦那様との関係が修復するまで、戻りません」
グレース「だから、ターゲットを私にしたのでしょう?」
ウィリアム「いや、違う! 俺は──」
グレース「甘言には惑わされません」
グレース「怪しい動きをしたら始末するので、そのつもりで」
ウィリアム(これじゃ、口説けないじゃないか・・・!)
こめかみに、冷たい銃口の感触がした。
ウィリアムとグレースのキャラ性と関係性、緊張感があっていいですね! ドキドキします。
使用人たちに一癖ありそうな設定にも、興味をひかれます。
難攻不落か…クール系かな?仕事バリバリ系かな?などと思ってたら、それどころじゃなかった 笑 こめかみに銃口って🤣
汚れ仕事も何のその、裏社会の人間も使えればウェルカムのストロング系メイドさん、いいですねー✨
結婚詐欺師が惚れると一途な感じなのも良かったです👍 マトモにならないと相手にされないが、そもそもヒロインの方がよほどマトモじゃないという…笑
アイラの容赦ないおちょくりも面白かったです😆
まさに難攻不落!攻略の糸口さえ掴めないまま終わる所が強キャラ感(でもかわいい)あってイイですね😄