笑わない彼女(脚本)
〇教室
後悔していることがあるんだ
なんであんな事を言ってしまったのか
タケオ「エミ、おはよ」
エミ「おはよ 今度のクリスマス、遊ぼうよ」
タケオ「うん、いいよ」
同級生「タケオのやつ いっつもエミと一緒にいるよな 二人つきあってんのか?」
タケオ「ばっ・・・! そんなんじゃねーよ」
同級生「顔赤くなってるぞ 好きなんだろー」
タケオ「ち、ちげえよ」
同級生「またまた」
タケオ「誰がこんなブスと付き合うかよ!」
エミ「ひどい・・・!」
同級生「本当かよ?」
タケオ「付き合うわけないだろ! 笑顔もきめーんだよ!!」
エミ「なんで、そんな事いうの なんで・・・」
タケオ「あっ・・・」
同級生「あーあ なーかせちゃったー」
タケオ「・・・」
〇黒
〇アパートのダイニング
母親「エミ、行ってらっしゃい 気をつけるのよ」
「行ってきます」
母親「どうしてあの子 笑わなくなったのかしら・・・」
〇通学路
制服を着た女性「昨日あれ見たー?」
スカートが短い女性「見た見たー! あはは」
人が通り過ぎたのを確認し
あたしはそっと家を出る
あたしは
人の顔を見るのが怖い
〇壁
自分の顔を見られるの怖い
学校ではいつも一人
あたしに声をかけてくれる人はいた
だけど
あたしは人と関わるのが怖い
みんなの顔を見るのが怖い
みんなに嘲笑されるのが怖い
あたしは全て拒絶してしまった
話しかけてくれた人達は
もう声をかけてこない
自業自得なのはわかってる
どうしてこうなったんだっけ
何がきっかけでこうなったのか
思い出せないけれど
ただ朧げに覚えているのは
誰かに「笑うな」と言われた事
周りを囲まれてみんなに見られた
羞恥、孤独、拒絶、恐怖
ずっとその暗くて粘っこい感情が
あたしまとわりついて離れない
〇ゆるやかな坂道
今日もまた苦痛の時間が終わり
いつものように帰り道を急ぐ
今日も疲れたな・・・
そう考えていた時だった
細身の男性「あ、あの・・・!」
「・・・?」
細身の男性「えっと君に話が」
「急ぐので・・・ ごめんなさい」
細身の男性「あっいや、えぇっと・・・」
〇アパートのダイニング
母親「おかえり ・・・何かあった?」
「変な男の人がいたの」
母親「あらいやだ! 警察に通報しなくちゃ」
「うん・・・」
母親「そうそう 海外で列車事故があったのね 大きなニュースになってるわ」
「ふぅん?」
母親「あら、そういえば この事故が起きた国って あなたの同級生の・・・」
「疲れたから少し休むね」
母親「あ・・・」
〇ファンシーな部屋
さっきの男の人は
なんだったのだろう・・・
「まぁいいや・・・ 疲れたし」
〇黒
〇イルミネーションのある通り
それから数日後
今日はクリスマスイヴ
毎年この時期は
いつも以上に嫌な気持ちになる
何か思い出せないけど
嫌な事があったような気がする
街はすっかり聖夜仕様に染まり
楽しげな音楽があちこちで聞こえてくる
それでもあたしの日常は変わらない
人に顔を見られないよう
ひっそりと生きるだけ
クラスメイトの子達は
きっと今頃パーティしてるんだろう
普通に生きたい
だけどそんな事は・・・
低い男のような声「そこの君!」
どこかで聞いた事のある声が聞こえた
「・・・」
低い男のような声「無視しないで! 話があるんだ・・・」
「・・・」
低い男のような声「逃げないでくれー! 怪しくないから!」
〇アパートのダイニング
母親「おかえり ・・・どうしたの?」
「なんか変な人が・・・」
母親「あらいやだ! 物騒ねぇ、警察に言って パトロール強化してもらわなきゃ」
「うん・・・」
母親「そうそう──」
〇ファンシーな部屋
「なんの音・・・?」
野太い男の声「メリークリスマス! サンタさんですよぉ」
「おかーさん! 窓に不審者がいる」
サンタを名乗る不審者「ち、違うって!! 君に伝えたい事が・・・」
〇川に架かる橋
クリスマスが過ぎて
街は年末に向けて何かと
慌ただしい雰囲気だ
それでもあたしは
冬休みというのあって
誰にも会わず済むから安心していた
「家にずっといたいけど お使い頼まれちゃったし」
「さっさと買って帰ろ・・・」
妙に甲高い声「メリー! クリスマス!!」
「は・・・? もうクリスマス過ぎてるじゃん」
そこで振り向いてしまった
その季節外れな挨拶の方に
〇ゆるやかな坂道
サンタ「やっとこっち見たな」
トナカイ「トナカイさんもいるのですー」
サンタ「その格好でトナカイか?」
トナカイ「細かい事はいいのです あなたがさっさと終わらせないから」
サンタ「すまん」
「・・・」
トナカイ「ほら! 早く要件を」
サンタ「そ、そうだ! 君に伝えたい事があるんだ 聞いてくれ!!」
「え?」
サンタ「笑顔がキモいなんて言ってごめん」
「・・・!?」
サンタ「本当はエミの事好きだった 笑った顔が可愛いと思ってた」
「それって」
サンタ「冷やかされてついあんな事言って ずっと後悔してた けど、謝る前に転勤しちゃって」
「あなたは・・・?」
サンタ「直接謝りに行きたかったけど もう行けなくて・・・ ごめんな、エミ」
「タケオ君?」
サンタ「俺はタケオの伝言を届けに来た」
「そうなんだ」
サンタ「あいつは遠いとこ行ったから 戻って来れなくてな」
「・・・なんでサンタの格好? クリスマス終わったのに」
サンタ「これは、アレだ 普段姿だと君に逃げられたから 少し声かけやすく変装を」
トナカイ「クリスマスまでに伝える約束でしたのに」
サンタ「ほら、サンタとトナカイがいれば いつだってクリスマスだろ」
トナカイ「締切守れない子は 本来ならお仕置きなのですが」
サンタ「ひぃ」
「ぷっ・・・ あは、あははは」
トナカイ「笑われましたねぇ」
サンタ「可愛い笑顔だ」
「あたし・・・ 久しぶり笑った気がする ありがとう」
〇幻想2
〇ゆるやかな坂道
サンタ「さて任務完了したし帰るか 早く着替えたいし」
トナカイ「お疲れ様でした トナカイちゃんは 先に戻るのですー」
警察「ちょっとキミ 話を聞かせてもらえないか」
サンタ「えっ!?」
警察「最近この辺で不審者出没すると 通報があってね キミはなんでサンタの格好してるの?」
サンタ「いや、これにはワケが・・・ さよならっ」
警察「待ちなさい!!」
〇教室
エミ「──そうそう、それでね」
〇黒
〇雲の上
サンタ「伝言しといたぜ 安心して行きな」
サンタ「さて、次は誰の願いを叶えようか」
終盤までトリコンキャラをあえて伏せるという手法がとても印象的でした!
トナカイ(?)の子が可愛い!「〜のです」口調は癒しです✨
サンタとの上下関係はトナカイが上でしたか…良き(笑)
お母様が観たニュース、もしやと思いましたが…悲しい。けれどサンタが男の子の遂げられなかった想いを伝え、彼女に自信を持たせてくれたのはグッと込み上げて来ました。
読み終えて心がほっこりとしました…!
じんわり感動しちゃった。終盤まで立ち絵を出さない&モノローグで引っ張って先を気にさせる構成が効いてますね。サンタさんのコメディぽいラストも良かったです。
終盤までのシルエット攻勢からのトリコンキャラの登場はインパクトありました!
職質されるサンタ、面白かったです😄