願わくば舞う雪のように(脚本)
〇黒
〇荒廃した街
「ユキ!危ない」
ユキ「うう・・・」
ユキ「お母さん?」
ユキ「そんな・・・」
ユキ「お母さーん!」
〇黒
〇荒廃した街
将軍「終わったか?」
兵長「あらかたは・・・」
将軍「待て」
〇空
〇荒廃した街
兵長「これは・・・?」
将軍「このような時期に雪とはな」
兵長「進軍を続けますか?」
将軍「雪は雨に変わりじきに火も消える」
将軍「全軍撤退だ」
兵長「はっ!」
将軍「やはり、ケモノに関わると奇怪なことがよく起こる」
〇黒
〇荒廃した街
ユキ「・・・」
〇黒
〇山並み
〇山中の川
〇ボロい校舎
〇教室の教壇
サリ「転校生が来るそうですよ」
ヨミ「中央街から疎開してきたのですね」
サリ「こんなこと 一体いつまで続くのでしょうか」
ヨミ「ケモノの耳を持つ我らは人間にとって畏怖の対象」
ヨミ「どうあっても戦いが避けられないのは、これまでの歴史が証明している」
キリ「くだらないね!」
ヨミ「キリ?」
キリ「人間なんざ恐るるに足らず!」
キリ「安心しなヨミ この村はあたしが守ってやるから」
ヨミ「どちらが強いかという話ではないのよ」
ヨミ「争い傷つけあうこと自体が無意味なの」
キリ「ふん、人間がどう粋がったところでケモノの方が上なんだ!」
ヨミ「キリ・・・」
サリ「あら、噂をすれば!」
〇特別教室
ユキ「中央街から来ました ユキです」
ユキ「よろしくお願いします」
キリ「やあ、人間にいい様にやられて田舎に逃げて来た子かい?」
ユキ「・・・」
サリ「ちょっとキリ、やめなさい」
キリ「ふん、何か言いたい事あるんなら言ってみなよ」
ユキ「別に・・・」
キリ「はっ、都会のお嬢さんはこれだからなー」
ユキ「・・・」
ヨミ「キリは、物心つく前に戦争で母親を失っているの」
ヨミ「気を悪くしないでね」
ユキ「そうでしたか」
ユキ「お母さんを・・・」
〇体育館の裏
キリ「あ~あ、面白くない」
「ねぇ」
キリ「うわっ、な、なんだよ!」
ユキ「お母さんの仇を取るつもりなら、やめておいた方がいい」
キリ「なんだ?いきなり」
ユキ「勝てないよ、人間には」
キリ「勝てるさ!」
キリ「あたしらの方が人間よりずっと強いんだ!」
ユキ「あなたは何もわかっていない」
キリ「なに!?」
ユキ「力だけじゃない」
ユキ「人間は火を使うし銃だって持っているのよ」
キリ「それがなんだ! 弾丸なんか避けりゃいい」
ユキ「避けられないわ」
キリ「避けられるさ!」
キリ「ケモノの速さに敵うものか」
ユキ「弾丸はケモノの目にも見えないほど早いの」
ユキ「火だってあっという間に広がるわ」
ユキ「中央街の皆も必死で抵抗したけど、結局は・・・」
キリ「黙れ!」
キリ「それは、お前らが都会育ちの軟弱なケモノだったからだ」
ユキ「・・・」
〇原っぱ
キリ「ったく、なんだってんだ!」
キリ「都会のケモノはあんなのばっかりなのかよ」
キリ「だいたい、いつまでも中央街の学校制服なんか着やがって」
キリ「あたしらを田舎者だと思って、からかってやがるんだ」
キリ「村の警鐘だ! 何だ一体?」
キリ「風に乗ってかすかに火薬のニオイ・・・」
キリ「まさか!?」
〇集落の入口
兵長「ケモノは容赦しない!」
キリ「とうとう、この村にも人間が!」
キリ「好き放題やりやがって」
「やめろー!!」
キリ「やった!」
キリ「あたしは強い 人間なんて目じゃない!」
キリ「母さん あたしが仇を討ってあげるからね」
キリ「覚悟しろ!」
キリ「なんだ・・・これ?」
キリ「うぐ・・・」
母・・・さん
将軍「所詮は田舎のケモノか」
いやだ
死にたくない
兵長「あれは中央街の!?」
将軍「空色の制服だ、追うぞ」
なんだ?
何が起きた!?
ユキ「キリちゃん!」
キリ「お、お前、何で・・・」
ユキ「シッ!」
ユキ「急いで手当しないと」
ユキ「村の避難所は?」
キリ「村・・・ あたし達の村が・・・」
ユキ「しっかりして!」
ユキ「村の避難所はどっち?」
キリ「あ、村の反対側に穴倉が」
キリ「何か起きた時、皆そこへ行くんだ」
ユキ「そこまで歩ける?」
キリ「なんとか・・・」
〇黒
〇洞窟の深部
ユキ(いけない・・・)
ユキ(ここはダメだ)
キリ「村の皆も避難してたんだ」
キリ「よかった・・・」
ユキ「手当が済んだら、村の人達を連れてすぐにここを出ましょう」
キリ「なんだって?」
キリ「なんでだよ、ここが一番安全だって・・・」
ユキ「中央街でも皆そう言って穴倉に入ったの」
ユキ「でも、皆死んでしまったわ」
キリ「どうして?」
ユキ「一度火が回ると穴の中は逃げ場がないのよ」
キリ「そんな・・・」
「キリ! ユキちゃん!」
サリ「よかった! 2人とも無事だったのね」
キリ「サリ! 何でここに?」
サリ「大変なの! 学校が突然人間に襲われて・・・」
キリ「なんだって!」
サリ「ヨミたちが何とか防いでいるのだけど、きっともう限界」
サリ「急いで助けを呼びに来たけど、村は・・・」
キリ「くそっ!!」
サリ「キリ、どうしよう?」
ユキ「私が助けに行くわ」
サリ「ユキちゃん?」
キリ「馬鹿言うな! 1人じゃ無理だ」
ユキ「平気よ 考えがあるの」
キリ「なら、あたしも行く!」
ユキ「そのケガじゃ無理よ」
ユキ「キリちゃん、よく聞いて」
ユキ「夜になったら、村の人たちを連れて小川に向かうの」
ユキ「川に沿って山を下れば、きっと人間には見つからないわ」
キリ「待てよ、お前は?」
ユキ「私は大丈夫」
ユキ「サリさん、キリちゃんをお願いします」
キリ「あ、待て! イテテ」
サリ「キリ!大丈夫?」
サリ「あっ、待って!」
〇霧の立ち込める森
サリ「無茶しないで!」
キリ「ハアハア」
キリ「あいつ死ぬ気だ」
サリ「え!?」
キリ「ユキが何で中央街の制服をいつも着ていたと思う?」
キリ「都会のケモノが一番狙われるからさ!」
キリ「きっと、この村に来た時からいつでも自分が囮になるつもりでいたんだよ」
サリ「そんな・・・」
キリ「ユキを止めてくれ!」
キリ「頼む・・・」
キリ「あたし、あいつに酷いこと言って、まだ謝ってないんだ──」
サリ「キリ・・・」
サリ「あっ」
〇霧の立ち込める森
サリ「雪!?」
キリ「くそっ、これじゃ追いつけない」
キリ「この雪は、まるであいつそのものだ」
キリ「1人でこの戦火を消して回るつもりかよ」
キリ「ユキー!!」
〇黒
〇黒
「間違いない! 中央街の生き残りだ」
「全軍追えー!」
将軍「逃がさんよ」
〇ボロい校舎
ヨミ「くっ」
ヨミ「皆、もう少しの辛抱よ」
小川へ向かって
ヨミ「ユキ・・・ちゃん?」
ヨミ「ハッ!」
ヨミ「人間たちが・・・山へ向かっていく」
〇黒
〇山中の川
〇雪山
〇雪山の森の中
私も・・・
誰かを守ることができたかな
ねぇ
お母さん・・・
〇黒
〇雪山の森の中
大切なことを大事に伝えているお話で、感動しました。ラストシーンは優しかったです。素敵なお話をありがとうございました。
悲しいお話でした😭
ユキちゃんの決死の行動はキリちゃんを変える事ができたのでしょうか?
最期にユキちゃんの視界を覆う雪が、彼女にとって美しく見えていれば良いのですが…😭
切ないお話でした😭ユキちゃんの最後の姿が目に浮かびます。
戦争反対❗ケモノ耳ちゃんたちが可愛くて、それがよけい辛かったです😢