家族全殺しQUEST

西瓜頭

EP.2「ゴブリン退治」後編(脚本)

家族全殺しQUEST

西瓜頭

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〇CDの散乱した部屋
  家族は愛しあうもの
  助けあうもの
  そう思う
母「よくできたね勇子!」
母「さすがお母さんの子供だね!」

〇黒
  子供は無条件に
  愛されるもの
  守られるもの
  あたりまえ
  それが普通
  そう思う

〇CDの散乱した部屋
勇子「お母さん!」
勇子「またテスト100点とった〜」
母「・・・」
母「なに?」
勇子「あのね! こくごのテストでねっ」
母「あてつけ?」
勇子「えっ」
母「だから、中卒の私へのあてつけ? って聞いてるの」
  じゃあ
  愛されなかった子供は
  普通じゃない?
  普通じゃない子供は
  どうすればいい?
母「そんなこともわかんないの?」
母「私を怒らせたいの?」
勇子「・・・」
母「生意気だぞお前」

〇黒
母「勉強しなよ、その中で」
母「『思いやり』ってやつをさ」
勇子「やだ・・」
勇子「ここヤダよ!」
勇子「出して!」

〇CDの散乱した部屋
勇子「ごめんなさい!」
勇子「ごめんなさい!!」
勇子「おぼえるからっ」
勇子「出してよ」

〇黒
  お母さん!

〇CDの散乱した部屋
  母の豹変
  その「スイッチ」に触らぬように
勇子「──」
母「──」
母「・・・」
母「あら、ごはん作ってくれてるの」
母「ありがとね」
  私は覚えた
  母の機嫌をとることを

〇CDの散乱した部屋
  顔色を、窺うことを
母「・・・」

〇CDの散乱した部屋
  だけど
勇子「おかえり、お母さん」
母「・・・」
母「・・・」
母「え? なに?」
母「お母さんと、ケンカしたいの?」
母「ご飯もつくらないなんて」
母「母親失格って言いたいんだ」
勇子「ち、ちが」

〇黒
  愚かな勘違い
  スイッチは「彼女の頭の中」
  母の機嫌しだいだ
  よくある現実
  単なる乱数(りふじん)
  それでも、私は母の顔色を窺い続けた
  勉強し続けた
  「思いやり」ってやつを・・・

〇狭い裏通り
  ブツッ ツー ツー
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「なんかムカついたら 変なこと思い出しちゃった」
山下 勇子(やました ゆうこ)「くそがよ」
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「人はやり直せる、とはいうけども」
山下 勇子(やました ゆうこ)「リセットボタンはないのよね〜」
山下 勇子(やました ゆうこ)「ははっ」
山下 勇子(やました ゆうこ)「おんもしれえなあ」
山下 勇子(やました ゆうこ)「このクソゲー」
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「まあいいか」
山下 勇子(やました ゆうこ)「あろうとなかろうと」
山下 勇子(やました ゆうこ)「「ある」かのようにふるまおう」
山下 勇子(やました ゆうこ)「──」
山下 勇子(やました ゆうこ)「ゲームは楽しまなきゃね」

〇川沿いの道
魔法使い「ひぃ、ふぅ・・」
魔法使い「げっ」
魔法使い「・・・」
魔法使い「あはは、勇子ちゃん、あのね?」
勇子「──さくせんを」
勇子「へんこうする」
勇子「『めいれい、させろ』」
魔法使い「──は、」
魔法使い「はい・・・」

〇黒

〇繁華な通り
「お待たせいたしました 開店です!」
「ズブラドブゥーン3 当日分のお客様、こちらです!」

〇レンタルショップの店内
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「──」
山下 振吾(やました しんご)「・・・・・・ばあば」
山下 振吾(やました しんご)「俺、あきちゃった」
山下 辰江(やました たつえ)「えっ」
山下 振吾(やました しんご)「あっち見てくるから、並んでて」
山下 辰江(やました たつえ)「あら! ちょっと、シンちゃん」
山下 辰江(やました たつえ)「外に行ったらダメよ」
山下 辰江(やました たつえ)「・・・」
山下 辰江(やました たつえ)「こらえ性のない子だね」
山下 辰江(やました たつえ)「まあ、メモもあるし」
山下 辰江(やました たつえ)「大丈夫かね」

〇狭い裏通り
魔法使い「オッケー、待機しとく」
魔法使い「出てきたら連絡すればいいのね」
山下 勇子(やました ゆうこ)「そう」
魔法使い「・・・うまくいくの?」
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「さあ?」
魔法使い「『さあ』って・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「まあまあまあまあ」
山下 勇子(やました ゆうこ)「見とけよ、私の」
山下 勇子(やました ゆうこ)「『思いやり』をさ」

〇街の全景
  ──♪
  こちらは 防災センターです
  大雨特別警報が 発表されました
  市民の皆様は 周囲の状況を見て
  避難行動をとってください

〇レンタルショップの店内
  くり返します・・市民の皆様は──
山下 辰江(やました たつえ)「・・・」
店員「お次の方、どうぞ〜」
店員「お待たせいたし──」
山下 辰江(やました たつえ)「このメモのを頂戴」
店員「は? いや、しかし──」
山下 辰江(やました たつえ)「いいから!」
山下 辰江(やました たつえ)「はやくして頂戴 お代はこれでぴったりでしょ!」
店員「か、かしこまりました・・」
店員「こちらが商品に──」
店員「・・・」

〇レンタルショップの店内
山下 辰江(やました たつえ)「よかった、中にいたのね」
山下 振吾(やました しんご)「もうズブラ3買えた?」
山下 辰江(やました たつえ)「もちろん、ほらね」
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「違うよ、これじゃない」
山下 辰江(やました たつえ)「え・・?」
山下 辰江(やました たつえ)「でも、メモには・・」
山下 振吾(やました しんご)「コレじゃないよ!」
山下 振吾(やました しんご)「はやくもう一回行ってきてよ!」
店員「申し訳ございませーん!」
店員「ズブラドゥブゥーン3当日分完売です」
店員「尚、次回入荷は未定となり──」
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「いらないよ、こんなクソゲー!」
山下 振吾(やました しんご)「ばあばなんか──」
山下 振吾(やました しんご)「死んじゃえ!」
山下 辰江(やました たつえ)「・・・」
山下 辰江(やました たつえ)「・・ご」
山下 辰江(やました たつえ)「ごめんね、シンちゃん」
山下 辰江(やました たつえ)「ばあば、馬鹿で・・」
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 辰江(やました たつえ)「・・・」
山下 辰江(やました たつえ)「・・あ」
勇子「お義母さん 今どこですか!?」
山下 辰江(やました たつえ)「勇子さん、それが──」
勇子「えーっ 振吾は一緒じゃない!?」
勇子「なに考えてるんですかァ」
勇子「信じられない」
勇子「こんな台風の中を子供一人で出歩かせるなんて」
勇子「お義母さんを信じてお願いしたのにッ」
勇子「振吾になにかあったら どうするつもりですかァ」
山下 辰江(やました たつえ)「・・あ、ああ!」
勇子「はーっ もういいです!」
勇子「私は家から探しに行きますから──・・・」
  ブッ ツー ツー
山下 辰江(やました たつえ)「・・・」
山下 辰江(やました たつえ)「シン、ちゃん」

〇狭い裏通り
魔法使い「──」
魔法使い「わかってたの? こうなるって」
山下 勇子(やました ゆうこ)「べつに」
山下 勇子(やました ゆうこ)「ズブラ3はどうせ魔法使いが買うし」
山下 勇子(やました ゆうこ)「マゾコロ7のリメイクが やりたかっただけ〜」
山下 勇子(やました ゆうこ)「それにね」
魔法使い「?」
山下 勇子(やました ゆうこ)「失敗したら、やり直せばいいじゃん」
山下 勇子(やました ゆうこ)「ゲームなんだからさ〜」
魔法使い「──はは」
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」
山下 勇子(やました ゆうこ)「魔法使いも」
山下 勇子(やました ゆうこ)「マジメにゲームしてね」
魔法使い「──」
魔法使い「お任せあれ」

〇街の全景

〇学校脇の道
山下 振吾(やました しんご)「はぁ、はぁ」

〇ダイニング
山下 振吾(やました しんご)「あーあ」
山下 振吾(やました しんご)「親ガチャ失敗した!」

〇グラウンドのトラック
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「来てない」

〇レンタルショップの店内
山下 振吾(やました しんご)「ばあばなんか、死んじゃえ!」

〇学校脇の道
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「・・・・・・俺」
魔法使い「──あ、君!」
山下 振吾(やました しんご)「!?」
魔法使い「大変だ──川に、人が流された」
山下 振吾(やました しんご)「えっ!?」
魔法使い「青い服のお婆さんみたいだったけど──」
魔法使い「もしかして・・」
山下 振吾(やました しんご)「そんな」
山下 振吾(やました しんご)(俺を探して・・?)
魔法使い「と、とにかく助けを呼んでくる」
魔法使い「まだ「沈んでない」けど」
魔法使い「絶対に「川に近づいちゃダメ」だよ」
魔法使い「いいね!」
山下 振吾(やました しんご)「・・・」
山下 振吾(やました しんご)「・・・・・・俺のせいだ」
山下 振吾(やました しんご)「ばあば!」
魔法使い「・・・」
魔法使い(これで)
魔法使い(血の繋がった「唯一」の家族は・・)

〇川沿いの道
山下 振吾(やました しんご)「どこっ!?」
山下 振吾(やました しんご)「ばあば」
山下 振吾(やました しんご)「ばあば──!」
「・・・」

〇CDの散乱した部屋
  母の──
  人の顔色を窺いながら生きてきた

〇教室
  嫌われないように、怒られないように
  普通でないことが、バレないように

〇オフィスのフロア
  皆の言うように幸せになって

〇病室のベッド
  家族を、つくって

〇黒
  でも
  押し入れの中のあの子供は
  ずっと
  ずうっと・・・

〇黒
  どんなに理不尽でも
  クソゲーでも
  選択肢を、人に預けちゃ
  ──ダメなんだ
  家族を愛しますか?
  ▶はい
  _いいえ
  しかしMPが足りない
  ・・・だよね
  家族を○○しますか?
  ・・・
  ▶はい
  _いいえ
  それを殺すなんて
  とんでもない!
  ははっ
  うるせえよ
  やりなおそう
  リセットボタンは無いけれど
  ・・・はじめよう
  私だけのゲームを

〇川沿いの道
山下 勇子(やました ゆうこ)「・・・」

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コメント

  • タイトルからして心の準備が要りそうだなぁ……と身構えつつ1話から一気読み。
    案の定、胸糞悪くなりました(褒め言葉)。

    ギャグ路線を断ち切った勇子さん、つよい。
    いやでも溺れてからすぐ発見、救急車も来たし、あるいは振吾生存の可能性も……?
    いや…厳しいか……

  • 心臓バクバクです…
    下手なホラゲより胸糞悪いです…
    気の利いた文章も思いつかないくらいです…

  • 『とくべつ』なゴブリンを討伐しちゃったからレベルが爆上がり💜😱

    トリプルコンは甘口の作品が多めだから、DNPコンの作品と交互に摂取すればバランスが……やっぱり家族○しクエストが勝ちました。

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