読切(脚本)
〇魔法陣2
ビャッコル「ニャンチワー!!」
ビャッコル「ボクの名前は、ビャッコル。 魔法少女のお手伝いをする聖獣さ」
ビャッコル「えっへん!」
ビャッコル「すごいでしょ!!」
ビャッコル「・・・さて、読者の諸君は算数はできる?」
ビャッコル「あぁ、数学じゃないよ? さ・ん・す・う」
ビャッコル「足し算とか引き算とか掛け算とか、割り算とか・・・」
ビャッコル「できるよねっ?」
ビャッコル「えっ、できないの!?」
ビャッコル「・・・やばいね」
ビャッコル「でも、だいじよーぶっ」
ビャッコル「そんなキミは魔法少女に適任さっ」
ビャッコル「えっ、興味を持ってくれた? じゃあ・・・」
ビャッコル「キミの先輩になるかも知れない二人の物語を紹介するね」
・・・あっそうそう
ボクが東洋の聖獣なのに、西洋魔術である魔法少女の使い魔みたいになんて言う・・・
勘のいい子と煩い大人は大っ嫌いだから・・・
夜道には気をつけてね・・・
・・・フッ
アハハハハハハッ──!!
〇養護施設の庭
都立自然公園
「鬼さんこっち」
「待てー」
様々な人々が集まる憩いの場──
けれど、深夜の誰もいない時間──
〇養護施設の庭
魔物「ギエェッ──!!」
人々を脅かす魔物が暴れ出す。
ただ、SNSがこれだけ多用される社会で我々がその存在を認知せず、しかも被害を被っていないのは
彼女たちのおかげだ──
アン「えっと、あっと、そっと、ええっと・・・ええっと・・・・・・」
アン「ビャッコルちゃん、呪文ってなんだっけ!?」
ビャッコル「呪文は──」
未熟な魔法少女の成長を待つほど魔物は甘くない
魔物「ギエェッ!!」
魔物は火力を後ろに噴射させ、鈍臭そうなローブを着た少女との距離を一気に詰める
アン(──もう、ダメ・・・)
・・・我が正義よ、冷気となって魔を凍て尽くせ──
サキ「アイスソードッ!!」
魔物「ウガアッ!!」
自身の持つ剣に氷魔法を纏わせたもう一人の少女が背後から魔物は切りつけると、魔物は跡形も無く消えてしまった
サキ「大丈夫、アン?」
アン「ふぇ〜ん。 サキちゃ〜ん、怖かったよぉ〜」
ビャッコル「流石だね、サキ」
アン「ビャッコルちゃんっ」
ビャッコル「もー言ったじゃないか、アン。 呪文は何でもいいって」
ビャッコル「一番大事なのは気持ち。 サキなんてこんなクールな感じなのに、ノリノリで──」
サキ「うっうるさいっ」
アン「でっでも、サキちゃんは天才魔法少女だよ!」
サキ「ありがと、アン」
ローブを纏った少女の名はアン。
剣を携えている少女の名はサキ。
二人は魔法少女だ。
アンは遠距離魔法を得意(?)とし、サキは自身や装備を向上させる向上魔法が得意だ。
アン「これからもよろしくね、サキちゃん」
サキ「・・・」
アン「サキちゃん?」
サキ「・・・ねぇ、ビャッコル」
ビャッコル「んっ?なんだい」
サキ「私たちはいつまでこうして戦わなければならないの?」
ビャッコル「前も言ったでしょ、全ての魔物を退治するまでさ」
魔物発生の理由は詳しくは分かっていない。しかし、世の中が乱れたり、不況になったりすると頻繁に現れる。
そのことはビャッコルがサキたちを魔法少女に任命した時に十分説明したことだった。
サキ「・・・私、魔法少女を引退するわ」
「ええっ!?」
2人には、誰よりも責任感があり、困った人を助けることに躊躇がないサキがそんなことを言うとは夢にも思っていなかった──
それからアンは一人で魔物と戦うようになった。
天よ、我に力を──
アン「アクアインパクト!」
〇養護施設の庭
魔物「グエッ」
アン「ふぅ・・・っ」
ビャッコル「アンっ、やったね!」
ビャッコル「サキが引退するって聞いた時にはこの世の終わりだと思ったけれど、こうしてアンが成長してくれて、本当に良かったよ!」
ビャッコルに褒められても、アンの表情は曇っていた。
ビャッコル「どうしたんだい? 成長しているのに、暗いじゃないか」
アン「ううん、何でもない」
ビャッコル「あっ、大変だ」
アン「もしかして・・・」
ビャッコル「あぁ、今日はもう一体魔物がいるみたいだ。 それも、気をつけてアンナ」
ビャッコル「どうやら、今度の敵は過去最強のようだ!」
アン「・・・行こう、ビャッコルちゃん」
〇遊園地の広場
ニクイ
不平等なこの世界も
弱者から貪る強者も、数の暴力で少数派を弾く多数派も、見て見ぬふりの偽善者も。
でも、一番許せないのは──
アン「いたっ」
アン「サキ・・・ちゃん」
サキ「はあああっ!」
目が合った瞬間、サキは剣を振る。しかし、アンナも反射的に魔法を発動し、攻撃を躱す。
ビャッコル「魔物を倒すんだ、アン!」
アン「でも、サキちゃんだよ!?」
アン「サキちゃん! どうしてなの? どうして貴女が──」
ビャッコル「そいつは魔という強力な力を得たことで、損得勘定できないバカから、魔に飲み込まれたバカだ! だから早く──」
アン「そいつじゃないしバカでもないっ!! サキちゃんはサキちゃんだよ!!」
けれど、サキはアンナの急所を狙って剣を振るう。
ビャッコル「たく、本物のバカは救えないぜ・・・」
サキ(・・・そうよ、バカは救われない)
サキ(でもね、私は『みんな』を救いたかった)
サキ(なのに、何で私は『みんな』の中にいないの?)
サキ(こんなことを考える私が・・・)
サキ(一番・・・ニクイ)
アン「私は救われなくていい」
ビャッコル「何を──」
アン「でもね、みんなのために一番頑張ってきたサキちゃんは絶対救わなきゃ」
アン「だって、私は──」
アン「サキちゃんの味方の魔法少女でありたいの」
それは魔法じゃ無かった。
けれど、その言葉は奇跡を起こした。
サキ「ありがとう、アン」
〇魔法陣2
ビャッコル「馬鹿馬鹿しい」
ビャッコル「とんだ茶番だ」
ビャッコル「色々間違っている。 馬鹿だから」
ビャッコル「でも、世の中を良くしているのって、合理性も論理性もセオリーも通じない馬鹿の力だったりするじゃない?」
ビャッコル「だから、ボクは魔法少女が」
ビャッコル「大好きさ」
ビャッコル「じゃ、待っているよ」
ビャッコル「キミが魔法少女になる日を」
ビャッコル「なーんてね、バイバーイ」
完
ビャッコルが最後に言ってた「世の中をよくしているのは馬鹿の力」というのは一理ありますね。世の中を救うのは頭ではなく心なんだということをアンから教わったような気がします。
魔法少女どうしの友情、尊いぜ…これは僕も魔法少女にならねば😆
なんでもいい呪文をクールなキャラがしっかり仕上げてくる所が面白かったです☺️
アンちゃんかわいい!