サングラスの奥の視える瞳(脚本)
〇オレンジ(ライト)
わたしには視えてしまう
他人の思考が、文字として
〇警察署の廊下
麻布警察署内
容疑者A「・・・・・・?」
高倉篤彦「奴にとっては奇妙な時間だったろうな」
知念美久「ほぼ無言の取り調べですからね」
高倉篤彦「お疲れ様」
高倉篤彦「マジックミラー越しとは言え、今回は時間が掛った」
高倉篤彦「疲れただろ?」
知念美久「きょうのは知能犯らしく思考がごちゃごちゃになってなくて」
知念美久「文字も見やすかったですから」
知念美久「ラクなほうでしたよ」
知念美久「でもまあ、確かに疲れましたね。篤彦さんにアフターケアしてもらわないと」
高倉篤彦「承知してるよ。ディナーの予約はしてある」
知念美久「そうこなくっちゃ」
知念美久「明日も付き合ってくれるんですよね」
高倉篤彦「ああ、丸一日オフだ。どこでも付き合うよ」
知念美久「楽しみです」
〇車内
知念美久「ありがとうございます。朝から付き合ってくれて」
高倉篤彦「いや、たまには朝のドライブも悪くない。運転は嫌いじゃないしね」
高倉篤彦「機関の意向とは言え・・・」
高倉篤彦「秘密裡の違法捜査なんて形で警察に協力しているんだ」
高倉篤彦「美久くんに、気晴らしは必須だよ」
知念美久「ですよねえ。貴重な篤彦さんのオフは、わたしの相手をするためにあるんです」
高倉篤彦「それは構わないけど、いいのかい?」
高倉篤彦「そろそろ新しい気晴らしの相手を見つけなくても?」
知念美久「わたしが安心して話せる相手なんか、篤彦さん以外に、どうやって探せと?」
高倉篤彦「難しいのは重々承知してるけどね・・・」
知念美久「能力のことは、もちろん秘密。これは諦めてますけど」
知念美久「いちいち嘘をつくのが面倒なんですよ」
知念美久「サングラスで隠した瞳の色から何から」
高倉篤彦「そうだよな・・・しかし、もったいない気もしてしまうんだ」
知念美久「もったいない?」
高倉篤彦「その美しい琥珀色の瞳を隠しているのは、実にもったいない」
知念美久「またあ。篤彦さんは本心で甘いセリフ言っちゃうからダメなんですッ」
高倉篤彦「そうかい?」
高倉篤彦「美久くんと付き合うときは、本心を隠さないのが礼儀かと思うんだが」
知念美久「それは、ありがたいんですけどッ」
知念美久「わたしも常に視えちゃうわけじゃないんで」
知念美久「甘いセリフは隠してもいいんですッ」
高倉篤彦「りょーかい。今後はそうしよう」
知念美久「はい。そーしてくださいッ」
〇遊園地
知念美久「富士ハイパーランドッ!」
高倉篤彦「平日でも結構な人出だな・・・」
知念美久「これぐらいは、しょーがないですよ」
高倉篤彦「大丈夫?」
知念美久「大丈夫です。よっぽど強い思念じゃなければ文字として飛び込んではきませんから」
知念美久「さーて、まずは・・・」
高倉篤彦「あ、絶叫系は勘弁して欲しい」
知念美久「え?」
高倉篤彦「ダメなんだ。ジェットコースターとか、まるっきり」
知念美久「篤彦さんにも苦手なものあるんだッ」
高倉篤彦「そりゃあ、あるよ」
知念美久「じゃあ、おなか空いたし、ランチにしましょ」
高倉篤彦「いいね。そうしよう」
〇観覧車のゴンドラ
知念美久「はあぁ・・・遊んだ遊んだ」
高倉篤彦「気晴らしになったかな?」
知念美久「はい。とっても」
高倉篤彦「それは良かった」
知念美久「篤彦さんも楽しめました?」
高倉篤彦「ああ、存外に楽しかったよ」
高倉篤彦「嬉しそうにはしゃぐ美久くんを見ているのは楽しいもんだ」
知念美久「まだ子供なところが残ってるんです。自覚してます」
高倉篤彦「そんな一面を見せてくれるのは嬉しいよ」
知念美久「篤彦さん。ひとつ聞いてもいいですか?」
高倉篤彦「どうぞ」
知念美久「わたしと一緒だと、疲れませんか?」
高倉篤彦「出会った頃は思考を保つように努めて、疲れたかもしれないけど」
高倉篤彦「今は、隠し事ができないことを楽しんでいるからね」
知念美久「隠し事が出来ないことって楽しめるものですか?」
高倉篤彦「それは自分でも意外だったけどね」
高倉篤彦「嘘や隠し事だらけの仕事を選んだ私が」
高倉篤彦「それが一切通用しない美久くんの前では、素の自分でいるしかない」
高倉篤彦「その落差を楽しんでいるのかもしれない」
知念美久「篤彦さんも変わってますね」
高倉篤彦「そうかな? うーん。そうかもね」
知念美久「そうですよ。嘘が通じない相手なんて、フツーは気持ち悪いし、怖いですよ」
高倉篤彦「そんな風に思ったことはないなあ」
知念美久「やっぱり変わってますよ。でも・・・」
知念美久「篤彦さんが、わたしの担当でホント良かったです」
知念美久「異能力者アンバーアイではなく、知念美久として見てくれるのは」
知念美久「篤彦さんだけですから」
高倉篤彦「そう言ってもらえると、異動を拒んだ甲斐があったよ」
知念美久「異動の話があったんですか」
高倉篤彦「ああ、あらゆる手段を講じて拒んだけどね」
知念美久「ねえ、篤彦さん」
高倉篤彦「ん?」
知念美久「わたしは、篤彦さんの好意に甘え続けていいんですか?」
高倉篤彦「ああ、もちろん。いいよ」
知念美久「じゃあ、ずっと甘えますよ?」
高倉篤彦「私は、美久くんが望む限り、一緒にいるつもりだからね」
知念美久「篤彦さん・・・」
高倉篤彦「ん?」
知念美久「わたしの好意は伝わってますか?」
高倉篤彦「ああ、私はそれほど鈍感じゃない」
知念美久「じゃあ・・・わたしと・・・」
知念美久「ずっと一緒にいてください」
高倉篤彦「私が言うべきなんだろうが、躊躇していたセリフだ」
高倉篤彦「美久くんの勇気には、こう答えるべきだな」
高倉篤彦「不束者ですが、末永く、よろしくお願いします」
知念美久「言質、取りましたよ。文字じゃなく言葉で」
高倉さん、イケオジ……
この2人のやりとり、キャラ設定無しでもドキドキしてしまうのに、美久さんの”視える”能力のことを考えると、、、ごちそうさまです!
アンバーアイ、なかなか厨二病をそそる設定で好きです👍
美少女とクールな男性の組み合わせも最高です!
早く読まなきゃと思いつつ今日になりましたm(_ _)m
今後の展開が楽しみな内容ですね😊