エピソード6(脚本)
〇大衆居酒屋
まばらな客の中に円城寺と祐子がいる。
円城寺はずいぶん酔っ払っていて、真っ赤な顔をしている。
円城寺敏郎「違う。絶対にそうではない! たとえ学校でそう教わろうと、俺にとっては1+1は2なんかじゃねえんだ!」
円城寺敏郎「俺とお前が力を合わせれば、10にも20にもなる」
丸山祐子「ふふ」
円城寺敏郎「っくー、しびれる。 篠宮さんこの作品で主演男優賞取ったんですよね?」
丸山祐子「そうね。 この作品は監督賞と脚本賞も取ったから、それは話題になったみたいよ」
丸山祐子「私はまだ入社前だったから、その時のことはよくわからないけど」
円城寺敏郎「やっぱりすごいっすよねー篠宮さん」
丸山祐子「篠宮さんがすごいだけじゃないわよ。 篠宮さんも、作品やスタッフに恵まれたってよく口にしているわ」
円城寺敏郎「いやー、そうは言っても篠宮さんの実力っすよ」
円城寺敏郎「篠宮さんあっての『ああ、五右衛門』じゃないっすか」
丸山祐子「そんなことないわ。 映画は役者だけじゃ成立しないもの」
円城寺敏郎「ああ、仁科監督っすね。 やっぱり、仁科監督の役割は大きいっすよね」
丸山祐子「監督だけじゃないわ。 カメラマンや照明、大道具、小道具、衣装なんかの美術スタッフまで」
丸山祐子「映画は大勢の裏方によって支えられてるの」
円城寺敏郎「はあ」
丸山祐子「もちろん、エキストラだって作品を作るのに欠かせない存在よ」
円城寺敏郎「エキストラか・・・」
丸山祐子「あら、そういえばこの作品って」
円城寺敏郎「はい。俺のデビュー作っす。 まぁ、エキストラっすけど」
〇田園風景
円城寺敏郎「当時、東京から有名人が来るってんで、村中がそりゃもうお祭り騒ぎっすよ」
〇田園風景
きゃー! 篠宮さん!!︎
円城寺俊郎「!」
篠宮はファンの声援に対し、深々と頭を下げた。
その様子にファンたちはさらに色めき立つ。
円城寺はファンの熱狂ぶりに驚き、キョロキョロと周りを見回す。
〇大衆居酒屋
円城寺敏郎「その瞬間、俺の中で何かが弾けたんすよ」
丸山祐子「ふーん」
円城寺敏郎「んぐ・・・」
ゴクゴクとビールを飲む円城寺。
丸山祐子「大丈夫? あなた、もう6杯目よ」
円城寺敏郎「で、俺、いてもたってもいられなくなっちゃって」
〇田園風景
〇田園風景
「カーット!!︎」
AD「ダメだよ君。撮影の邪魔しちゃ」
篠宮裕次郎「坊主、どうした?」
円城寺俊郎「おじちゃん。僕も出たい!」
スタッフや出演者たちが思わず笑い出す。
篠宮裕次郎「エキストラは足りてないんだっけ?」
AD「はい。でも、子役はもう・・・」
篠宮裕次郎「いいじゃないか。1つくらい増やしてやれば」
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