31/集結(脚本)
〇和室
久野フミカ「え、何?!」
「ば、爆発?!」
パソコンが本当に爆発するところなんて初めて見た。
まさかミウさん、機械音痴なのか?
星木ミウ「ごめん。先手を打たれてたみたい」
ミウさんが顔色一つ変えず立ち上がった。
「先手・・・・・・?」
星木ミウ「外部で資料を開こうとしたら、パソコンが自爆するようにプログラムされてたのかも」
久野フミカ「な、何それ・・・・・・?」
そんなことが本当にできるのか? いや、もしそうなのだとしたら。
「今資料を開こうとしたこともバレてるんじゃ・・・・・・」
星木ミウ「それは、多分」
・・・・・・それは、やばい状況なのでは?
「み、ミウさん、組織に狙われたりしないよね?」
久野フミカ「いやでも、ミウはそこで一番偉い人の子供なんでしょ? さすがに・・・・・・」
するとミウさんがため息をついて、かけていた眼鏡をカバンの中にしまった。
星木ミウ「・・・・・・願望会の中にも、私のことを良く思わない人達はいる」
久野フミカ「で、でも・・・・・・じゃあ、どうするの?」
星木ミウ「逃げてから考える」
そしてミウさんが右目の眼帯を外す。
久野フミカ「それ・・・・・・」
眼帯に隠されていたその瞳の中には、見覚えのあるものが入っていた。
星木ミウ「この義眼の中には、コハク君のと同じ指輪が入ってる」
「これと、同じ・・・・・・?」
僕は右手の真っ黒な指輪を見つめる。
それはつまり、天使の指輪・・・・・・?
星木ミウ「コハク君も使いこなせるようになれば、私みたいにフェーズを渡ることができるようになるはず」
「・・・・・・フェーズ?」
星木ミウ「平行世界、みたいなもの」
星木ミウ「数多のフェーズを渡り歩く翼」
星木ミウ「それが私達願望会、フェイザー」
ミウさんの義眼が真っ黒な光をまとい点滅を始める。
つまりミウさんは、今から平行世界に逃げるってことか?
久野フミカ「ミウ、待って!」
久野もそれに気づいたのか、すかさず手を伸ばす。
星木ミウ「・・・・・・ごめん、久野さん」
星木ミウ「また学校で」
久野フミカ「ミウ!」
「・・・・・・そうはいきませんよ」
その時僕の胸から生えてきた右腕は、僕の額に、金の銃を向けていた。
「コロン・・・・・・?」
そして僕の中から出てきた悪魔は、そのまま僕の眉間に銃を突きつけた。
久野フミカ「コロン、何のつもり?!」
声を荒げる久野に、コロンは予め左手に握られていたもう一丁の銃を向けた。
コロン「星木ミウ。今あなたが逃げれば、二人ともここで死にますよ」
星木ミウ「・・・・・・」
コロンは冗談を言っているわけでも、わざと挑発しているわけでもなさそうだった。
コロン「お兄様とそいつは、あなたのことを信用しているみたいですが」
コロン「でもさっきの爆発、あなたの自作自演かもしれませんよね?」
久野フミカ「自作、自演・・・・・・?」
星木ミウ「・・・・・・そう思ってもらっても構わない」
星木ミウ「でも、私には時間が無いの」
ミウさんがその右手を、指輪の入った義眼にかざす。
何かが起きる。
直感的にそう感じたその瞬間、何かが起きるその前に、
部屋の外から何者かが、勢いよく窓を突き破ってきた。
〇アパートのダイニング
「誰だ・・・・・・いや、お前・・・・・・!」
割れた窓ガラスの破片の上で、その影は素足のままゆっくりと立ち上がる。
見覚えのある少し背の高い人影は、今日の放課後生徒会室に現れたもう一人の悪魔、クロコだった。
クロコ「・・・・・・」
クロコは一瞬でミウさんの足を払うと馬乗りになり、金の銃を彼女の義眼に突きつけた。
ミウさんが、観念したように目を瞑った。
星木ミウ「・・・・・・ここまでなの?」
しかしその金の銃は、僕の後ろから聞こえた発砲音と共に、別の悪魔が撃った金の銃弾に弾き飛ばされ宙を舞った。
二人の悪魔が、僕の目の前で視線を交わす。
クロコ「・・・・・・これは何のつもりだ、コロン」
コロン「それはこちらのセリフです、クロコ」
コロン「まさか人類の味方をするつもりですか?」
クロコがもう一丁の拳銃を取り出しミウさんに構えた。
クロコ「・・・・・・そうだ。人間に、力は必要無い」
その時、今度は久野が、コロンを押しのけ僕の頭のカチューシャを払い落とした。
「・・・・・・え、久野?!」
一瞬だけ、久野と目が合った。
久野フミカ「・・・・・・コハク、お願い」
久野フミカ「私に、力を貸して!」
「久野・・・・・・!」
そして久野の後ろ姿が、瞬く間に人間のものではなくなっていく。
久野フミカ「コハク・・・・・・は、渡さない!」