クラークコードー愛to憎しみの歴史IF小説ー

神テラス

第九話 捜査の進展/歴史の真相(脚本)

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〇警察署の入口
  何か手がかりはないのか?
  ワタシは何度も何度も何度も考えていた。
  ワタシは、石竹警部補と定期的な捜査のミーティングのために、大通りにある特別捜査本部に訪れていた。
  ワタシは現場に何回も何回も何回も足を運んだ。
  その日の新聞や過去の新聞にも一通り目を通した。
  何か見落としている。
  何かにとらわれている。
  渡氏はそう思った。
  「Boys be ambitious(ボーイズビーアンビシャス)」と現場に書かれたダイイングメッセージに関してもだ。
  渡氏の意識の中にふと、原始人が描いたという、洞窟の壁画が浮かんできた。
  それは、牛を描いた作品だ
  発見当時、その壁画はあまり評価がよくなかった。
  原始人に、高度な描写能力はないといわれていた。
  しかしその牛の絵は、実は素晴らしいものだったのだ。
  それは、牛が後ろを振り返っている、極めて写実的な絵だったのだ。
  けれども、その当時は、誰もそのことに気がつかなかった。
  あのダイイングメッセージは、本当に「Boys be ambitious」なのか?
  実は違うのではないのか? と感じた。
  その牛の絵のように何かにとらわれ、何かを見失っている。
  渡氏はそう感じていた。
  渡氏は少しボーとしていると、不意にインスピレーションが沸いてきた。
ワタシ「そうか、あれは「Boys」ではないのか!」
  渡氏はそう叫ぶと、すぐに待合室を出て、石竹警部補の署内のオフィスへと向かった。

〇教室の外
  クラーク先生の理念は、もうこの帝国大学にはない!
  「俺は遠友夜学校に移る!」
  「俺もだ!」
  「俺も!」
  「俺もいくぜ!」
  その日、志を持った大学関係者や学生達は軍部に反発し、北海道帝国大学を去っていった。
  「クラーク博士のお言葉通り、貧しい子女達のために私達は働きます」
  「それが、先生を見送りにいかなかった、せめてもの罪滅ぼしです」
  その中の一人が天を仰ぎながら述べた。

〇田舎の病院
  ある男が書斎に籠りながら、日記を書いていた。
  (日記)
  昭和二十一年
  ここに、志のある仲間と共に遠友夜学校に移籍する。
  同時に、友愛と自由の結社、「クラーク自由団」を有志と共に立ち上げる。
  合言葉はもちろん、「Both」
   be ambitiousで。
  帝国大学に残った他の仲間とは袂(たもと)を分かつ。残念だが仕方がない。
  (日記)
  昭和二十九年 日本はもはや地獄だ。
  遠友夜学校に通う学生達の兄弟や親戚も、あいつで戦死している。
  政府からも閉鎖の圧力あり。
  いつまで、この学び舎の明かりを保てるかわからない。
  でも、私はBoth be ambitious の精神で在り続けたい。
  それが、クラーク先生を見送りに行かなかった、せめてもの罪滅ぼしだ。
  町医者の初老の男が、診察室の机に座りながら、日記を読み返していた。
  隣には、同じく初老の女性が椅子に座り、ウトウトと眠ってもいる。
  すると、夜中の医院にドンドンと戸を叩く音がする。
  開けると、遠友夜学校の女学生の一人が息を切らしていた。
遠友夜学校の女学生「先生にげて! はあ、はあ、はあ、特高達が、先生達のことを探している!」
  遠友夜学校の女学生は息を切らしながら、述べた
  「あいつらを見つけ次第、抹殺しろ!」
  外では特高(警官)達が声を上げて、遠友夜学校の関係者を軒並み探していた。
クラーク自由団団員「くそ!遠友夜学校の閉鎖の混乱に乗じて、クラーク自由団もろとも、皆殺しにするつもりか!」
  奥の病床で寝ていた男が、起き上がり述べた
激動の時代を生きたある男「すぐに馬の準備だ!鈴さん!」
  町医者の初老の男性は、隣にいた初老の女性に声を掛けた。
激動の時代を生きたある女性「ハイ!」
  女性はすぐに、馬と旅支度の用意へと向かった。
激動の時代を生きたある男「他のクラーク自由団員と共に、小樽で船に乗って内地(本州)に逃げろ!」
  初老の町医者の男性は、若い負傷した男性に述べた。
激動の時代を生きたある男「そしてまた、この人のもとに身をよせるんだ!」
  町医者の男はそう述べると、手紙と現金、交通切符を、若い負傷した男に渡した。
激動の時代を生きたある女性(クラーク先生、そしてお姉様達、どうか天の国から、見守っていてください)
  鈴と呼ばれるその初老の女性は、若き学生時代のことを、思い出してもいた。
  クラーク教頭やお姉様、そしてまた、そのお姉様の伴侶となり、後に女子大学の建学に尽力した、兄貴分の男子学生の事を思い出した
  そしてまた、札幌の夜空の星に祈りをささげた。

〇集落の入口
クラーク自由団員「○○先生!」
クラーク自由団団員「○○先生!」
  ○○とよばれる初老の男は、命からがら山梨に逃げてきた、クラーク自由団員達に、ニッコリと笑った。
  そしてまたこう答えた
〇〇「今は耐えるずら」
〇〇「息を潜めて耐えるずら」
〇〇「必ず日の目をみるときがくるら」
  ○○がそう述べると、団員達は涙を流していた。
  その逃げ込んだ、○○の別邸の周囲には、官憲達がうろついてもいた。
  「あいつらめ! 山梨の○○の元に逃げ込みおったか!」
  官憲の一人がそうつぶやいた。
  「どうしますか、邸宅に入って捕まえますか」
  官憲の一人がそう述べた。
  ダメだ。あの○○という狸は、食えんやつだ。なかなか尻尾をださない。
  官憲の男はそう述べた。
  「どちらにせよ、あいつらに何ができる?引き続き監視を怠るな!」
  官憲の男が強い口調で述べた。

〇集落の入口
  山梨を拠点に、クラーク自由団を再編する。
  甲州人(山梨人)達は本当によくしてくれる。本当にありがたい。
  命からがら、他のクラーク自由団員と共に逃げてきたその若い男は、○○の別邸の客間で、日記を書いていた
  〇〇先生の山梨の別宅で身を潜めてから、もう幾年も経つ。
  その間に、日本の占領地の至るところで、玉砕が相次いでいる。
  戦局は一気に傾き、内閣も総辞職している。
  東京の下町への大空襲も始まってる。
  戦地に赴いている、遠友夜学校の子弟や関係者、他のクラーク自由団員達のことを考えていると、胸が痛くなる
  第二の故郷の札幌の人達は無事だろうが。皆、無事であって欲しい。
  男はそう強く願った

〇野営地
  「隊長! もう防御線が持ちません!」
  「耐えるんだ! ここで時間を稼がなければ、北海道に上陸される! そうなれば、北海道の住民は皆殺しだ!」
  「右の防御線も崩れました。私は部下と命運を共にします。隊長、御武運を!」
  「左翼トーチカ群、突撃!」
   兵士の男は突撃ラッパの号令とともに突撃した。
  「左翼トーチヵ群、玉砕! 間もなくこちらの中央に敵がなだれ込んできます!」
  中央のトーチカにいた若い兵士は震えながら、小隊長に述べた
  「俺もまもなく逝く、心配するな・・・。お前達は後方へ軍旗を持ち撤退!」
  「隊長は?」
  「俺はここに残り、一秒でも時間を稼ぐ! この先は、絶対にソビエト兵は一人も通さない」
  「隊長、ご撤退を! 軍司令部はすでに北方前線を見捨てています。援軍はきません。 これ以上、戦っても無駄です」
  「隊長!」
  部下の二人は懸命に小隊長を説得しようとした。
  「俺は残る。おまえ達は後方に下がれ! そして、生き延びろ!」
  トーチカに残り、なおも小隊長は防戦を続けていた。手にはペンダントを握り締めながら・・・。

〇野営地
  「この猿は何を持ってる?」
  ソビエト兵の一人は、トーチカ群を完全に制圧した後で、指揮官らしき死体が手に何かを握っているのが分かった。
  その死体の手から、何かを力ずくでとろうとしたが、とれなかった。
  「この猿、何を握っていやがる!」
  ソビエト兵は、手首を切り落とそうとナイフを抜くが、それを上官が止めた。
  「猿は、ほおっておけ!」
  「それよりもまだ、島の奥に猿どもの生き残りがいる」
  「 同志からの攻略指令は、この猿どもの悪あがきでだいぶ遅れてしまった。いくぞ!」
  「ダ!(わかりました)」
  上官に言われるとソビエト兵は、死体につばを吐き掛け、島の奥へと進軍した。
  指揮官と思われる男の死体の手には、その手には、クラーク自由団の紋章と、家族の写真が入ったペンダントが握られていた。

〇外国の田舎町
クラーク自由団団員「先生、本当にありがとうございました」
  青年達は笑顔で述べた。
〇〇「君達の時代ずら」
  〇〇はニッコリと笑って答えた。
  そしてまた、こうつけ加えた。
〇〇「Both,be ambithiouth !」
〇〇「両性よ、大志を抱け!」
〇〇「クラーク先生の残した言葉を忘れるなし!」
〇〇「平和な日本、科学技術の先進国日本を、女性達と、手を取り合って目指すずら!」
  その後、旧日本政府の弾圧を生き延びたクラーク自由団員達は、戦後復興に大きく貢献していくこととなる。
  しかし、一方では、クラーク自由団と決別し、日本の帝国主義の幻想に飲み込まれた者達もいた。
  彼らは旧日本軍の残党とともに合流し、GHQの目を盗んで、密かに落ち延びてもいた。
  彼らは、帝国日本を諦めきれずにいた。
  その上、クラーク博士を札幌農学校の男子学生達が見送りに行かなかったという事実も決して認めることはできなかった。
  彼らもまた、密かに政官財を通じて、また、自衛隊を用いて、帝国日本の再興の準備を密かに続けてもいた、、、

次のエピソード:第10話「時計台での決闘」

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