〇個人の仕事部屋
ポメ助「・・・」
　　目の前の男が
　　日光を浴びると 小動物になった
矢内　サオリ「キ・・・」
ポメ助（しまったな・・・）
矢内　サオリ「キャンワイ～～～!!」
ポメ助「!?」
矢内　サオリ「え～なにこれなにこれ！ 耳とか尻尾とかもっふもふじゃん!!」
矢内　サオリ「犬？ コアラ？ 目もクリクリ～!!」
ポメ助「はっ、離せ!!」
矢内　サオリ「あっ」
ポメ助「驚きの順応力だな・・・まあいい」
ポメ助「見ての通りだ イケメン美白プロゲーマーは世を忍ぶ仮の姿」
ポメ助「お前達ニンゲンからはグレムリンなんて呼ばれたりもするが」
ポメ助「人の強い感情を喰らって生きる寓話生物が俺の正体さ!!」
矢内　サオリ「なんて・・・？」
ポメ助「フンッ！ とにかくお前の発する憎しみの感情波動はす～～～んごく俺の好みだっ！」
矢内　サオリ（鼻を鳴らすのかわいい～）
ポメ助「だからその熟成を手伝ってやる!!」
矢内　サオリ「ゴホン！ つまり私が元彼なり誰かを憎むと、あんたが美味しい思いをできる、と」
矢内　サオリ「だから、いろいろ手伝ってくれるってこと？」
ポメ助「そうだ！」
矢内　サオリ「私が誰かを憎むと、それで具体的にどうするの」
ポメ助「キャンディーにして食う!!」
矢内　サオリ「まあ・・・そういうことができるのね」
ポメ助「そうだ!!」
矢内　サオリ「それってさ、私どうなんの？ 感情食われて無感情人間になったりとかしない？」
ポメ助「?」
ポメ助「そういうのはない～」
ポメ助「俺が美味しいだけだ!!」
矢内　サオリ（ほんとか・・・？）
矢内　サオリ「ふ～ん・・・」
矢内　サオリ「ま、いいよ」
ポメ助「いいのか!!」
矢内　サオリ「私に身体的なリスクがないならね」
矢内　サオリ「それにたしかに 私を裏切っておいて今も二人でイチャイチャとゲームしてるって考えたら・・・」
矢内　サオリ「殺す・・・!!」
ポメ助「いいぞ～ もっと憎め!!」

〇オフィスのフロア
矢内　サオリ「戻りました～」
向井デスク「矢内ちゃんおかえり～ ちょっと聞いてよ！」
矢内　サオリ「どうしたんですか？」
向井デスク「ひっ、そっちこそどうしたの！ 目が血走ってるよ」
矢内　サオリ「ちょっと色々ありまして・・・」
向井デスク「何があったかは聞かないけど あまり思いつめないようにね・・・」
向井デスク「それでさ！ 木場くんとずっと連絡とれないんだよね 何か知らない？」
矢内　サオリ「今回はなにも聞いてないですけど 失踪するのもいつものことじゃないですか」
向井デスク「仕事抱えたまんま音信不通になることは なかったのにな～」
向井デスク「困ったよ 今日行ってもらったプロゲーマーの人との密着企画もあったのに」
矢内　サオリ「いいですよ、それ私が引き取ります」
向井デスク「本当!? こっちは助かるけど」
向井デスク「でもどうしたの 進んで仕事引き取るなんて珍しい」
矢内　サオリ「色々あるんですよ・・・ それに」
矢内　サオリ「殺るべきことがわかったんで・・・」
向井デスク「えぇ・・・」
向井デスク「不穏だなぁ・・・」

〇個人の仕事部屋
ポメ助「さっそく特訓だ！」
矢内　サオリ「・・・」
ポメ助「なにその表情」
矢内　サオリ「そっちの姿はかわいくない」
ポメ助「しょうがないでしょ～」
ポメ助「ちんまい手じゃ操作できないからね！」
矢内　サオリ「で、なにからやるの？」
ポメ助「まずはなにより操作に慣れること！」
ポメ助「時間が許す限りプレイし続けるよ！」
ポメ助「ちゃんと着替えは持ってきた？」
矢内　サオリ「持ってきたけど・・・」
矢内　サオリ「ほんとにワンチャン狙ってない・・・？」
ポメ助「ニンゲンのメスには興味ないよ～」
矢内　サオリ「それなんだけどさ～」
矢内　サオリ「あんたみたいなのって他にもいるの？」
ポメ助「俺と同じグレムリン種って言われてる奴らだけでもけっこういるよ」
矢内　サオリ「うっそでしょ・・・」
ポメ助「紛れてんだね～巧妙に」
ポメ助「最近じゃ他人とあんまり関わらなくてもできる仕事も増えてるし 俺らにはいい時代よ～」
矢内　サオリ「それでゲーマー・・・」
ポメ助「じゃあそっちのPC使っていいから チュートリアルからやってみよう！」
矢内　サオリ「はぁ・・・」
　　10分後
矢内　サオリ「オボロ”ロ”ロ”ロ”ェ」
ポメ助「ツンと鼻にくるゲロだ お昼はパスタかな」
矢内　サオリ「オ”エ”ェ・・・」
ポメ助「画面酔いはね、体を慣らすしかないよ」
ポメ助「少し休んで、回復したら再開しよう」
矢内　サオリ「いやしんど・・・」

〇シックなバー
ミィコ「うい～～～」
矢内　サオリ「おっつ～～～」
矢内　サオリ「ハッ～～～!!」
ミィコ「どう？ 独り身ライフ満喫してる？」
矢内　サオリ「いや～・・・」
矢内　サオリ「あ、そうだ。私もあれ始めたよ、BtS」
ミィコ「うっそ あんただいぶつ島のスローライフにしか興味ないんだと思ってた」
矢内　サオリ「ふっ・・・」
ミィコ「まさか・・・元彼関係ある？」
矢内　サオリ「まあ～・・・」
矢内　サオリ「ないこともないねぇ・・・」
ミィコ「え～、追い出しといてまだ引きずってんの？」
ミィコ「不毛～!!」
矢内　サオリ「引きずってるとかそういうんじゃ いや・・・引きずってるのか？」
矢内　サオリ「でもねでもね、さっぱりと吹っ切るためにも必要なことなのかもって・・・」
ミィコ「ふぅん」
ミィコ「そんで　誰とやってんの？ 一人で野良？」
矢内　サオリ「いや、最近知り合ったプロゲーマーと」
ミィコ「え～、なにそれ、聞きたい なんでそうなんのよ その人、男？」
矢内　サオリ「男だけどぉ まあそういうんじゃないよね～」
ミィコ「匂わせクソ女～ 今度紹介しなよ」
矢内　サオリ「聞いておきます」
ミィコ「じゃあさじゃあさ、今度BtSのオフラインイベントあるらしいから一緒に行かない？」
矢内　サオリ「そんなのあるんだ？ てかゲームのイベントってなにやるの？」
ミィコ「人気ストリーマーとかプロ集めてエキシビションしたり キャラのコスプレなんかもいるらしいよ」
矢内　サオリ「そういえば別れる前にヨウタがなんか言ってたなぁ・・・」
ミィコ「あ～・・・元彼も来るかもだ？」
矢内　サオリ「顔合わせちゃったら、なにしちゃうかわかんない」
矢内　サオリ「入り口で持物検査とかあるかな？ 怪しまれない凶器ってなんだろう」
ミィコ「ストッキングと、硬貨多めに持っていくとか」
矢内　サオリ「フフッ、それなんかで読んだなぁ」
ミィコ「あはっ、けっこう広い会場だし そうそう鉢合わせなんてしないでしょ」
矢内　サオリ「うん、そうだよね じゃあ休みとっておく」
矢内　サオリ「楽しみ!!」

〇個人の仕事部屋
ポメ助「・・・」
ポメ助「憎しみって甘いなぁ」
　　カロ・・・コロ・・・
ポメ助「芳醇なるアムリタ・・・」
ポメ助「もっと・・・」