〇黒
　　2022年12月
　　改編された世界
　　・・・・・・おーい
　　・・・おーいってば
　　そろそろ
　　目を覚ましてくれないかな？
　　時間がもったいないよ

〇入り組んだ路地裏
黒猫「・・・やっと起きたね」
黒猫「まったく 君達はすぐ時間を無駄にするんだから 呆れるよ」
有栖川マナミ「・・・ここは？」
黒猫「安心して」
黒猫「無事、別の世界線にたどり着いたから」
有栖川マナミ「・・・・・・」
有栖川マナミ「じゃあここに ジュンちゃんとお姉ちゃんが・・・」
黒猫「うん。そうだよ」
有栖川マナミ「・・・・・・」
有栖川マナミ「行こう！」
黒猫「もちろん！ その為に来たんだからね♪」
黒猫「今の時間なら たぶん家にいるはずだよ」

〇二階建てアパート
黒猫「えーと確か・・・」
黒猫「あ、ここだ！ここ！」
黒猫「ここが、この世界での 植月ジュンの家だよ」
有栖川マナミ「ここにジュンちゃんが・・・」
黒猫「もっとも 一人暮らしではないみたいだけどね」
有栖川マナミ「え？」
黒猫「覗いてごらん」

〇クリスマス仕様のリビング
植月ジュン「おいおい」
植月ジュン「クリスマスの飾り付けなんて まだ気が早いだろ」
有栖川シホ「わかってないなぁ」
有栖川シホ「こう言うのは 月単位でやるもんなの！」
有栖川シホ「当日だけなんて寂しいでしょ？」
植月ジュン「そう言うもんかなぁ・・・」
植月ジュン「まあでもオレは 飾り付け事態ムダだと思ってるけど」
有栖川シホ「はぁ～？ それどう言う意味!?」
植月ジュン「だいたい日本ってのはさ──」
　　あぁ・・・
　　あぁ・・・
　　この光景は・・・

〇二階建てアパート
有栖川マナミ「ジュンちゃん・・・ お姉ちゃん・・・」
有栖川マナミ「私も・・・」
黒猫「待った！ 誰か来る！」
黒猫「隠れて！」
有栖川マナミ「え・・・」
　　あれは・・・
　　私・・・？

〇クリスマス仕様のリビング
有栖川愛実「ただいま～」
有栖川愛実「ってまたケンカしてんの？」
有栖川シホ「あ、ちょっと聞いてよマナ！ ジュンちゃんがね！」
植月ジュン「オレは 間違ったこと言ってないからな！」
有栖川愛実「あーはいはい ノロケ話なら後で聞くからさ」
ジュン&シホ「ノロケてない！」
有栖川愛実「はいはい 分かった。分かった」
有栖川愛実「それより 早くご飯にしようよ！」
有栖川愛実「もうお腹ペコペコ」
　　・・・・・・
　　・・・・・・
　　いつか
　　私とお姉ちゃんとジュンちゃん・・・
　　３人で暮らせたら
　　きっと楽しいだろうね
　　そしたらきっと──
　　どんなことも辛くないよね？

〇二階建てアパート
有栖川マナミ「・・・・・・」
黒猫「君はあの場所には行けないよ」
黒猫「この世界は君の世界じゃない」
有栖川マナミ「・・・・・・」
有栖川マナミ「何で・・・何で・・・」
有栖川マナミ「どうして私は・・・あの時・・・！」
有栖川マナミ「うっ・・・うっ・・・」
　　私にはもう何も残っていない
　　もし私がタイムリープ出来るなら
　　私が生まれる前に戻って
　　全てを消し去りたい
黒猫「・・・・・・」
黒猫「希望はまだあるよ」
有栖川マナミ「え？」
黒猫「言ったでしょ？ 植月ジュンを連れ戻して欲しいって」
有栖川マナミ「でもそんなの どうやって・・・」
黒猫「殺すんだ」
黒猫「植月ジュンを・・・」
有栖川マナミ「殺す・・・？ ジュンちゃんを？」
黒猫「聞かれるとマズいし 場所を変えようか」

〇川沿いの公園
黒猫「ここなら良さそうだね」
有栖川マナミ「どう言うこと？ ジュンちゃんを殺すって」
有栖川マナミ「それと連れ戻すことと どう関係しているの？」
黒猫「まあまあちゃんと 順を追って説明するから 慌てないでよ」
黒猫「えーと先ず、 ここが改編された世界だってことは ちゃんと認識しているよね？」
有栖川マナミ「えぇ・・・ お姉ちゃんもちゃんと生きてる」
黒猫「そう──」
黒猫「植月ジュンは有栖川シホを助ける為に タイムリープをした」
黒猫「自らの死をトリガーとしてね」
有栖川マナミ「・・・・・・」
黒猫「そして植月ジュンは」
黒猫「この世界に辿り着くまでに 何度もタイムリープを繰り返している事が 分かっているんだ」
黒猫「何十・・・何百・・・ もしかしたら４桁行ってるかもしれない」
黒猫「正確な数は分かっていないけど ヤツにとってここは──」
黒猫「ようやく辿り着いた ハッピーエンドの世界ってワケ」
黒猫「でも──」
黒猫「植月ジュンは とんでもない罪を重ねてしまっているんだ」
有栖川マナミ「パラレルワールド・・・？」
黒猫「そう！正解！」
黒猫「大切な人を救う為とは言え、 バッサリと切り捨てた世界が山ほどある」
黒猫「そして、 その世界は存続し続け やがて大きな悲劇生む・・・」
黒猫「君はその最初の犠牲者なんだ！」
有栖川マナミ「・・・・・・」
黒猫「そして 君の希望への道は」
黒猫「ヤツを殺すこと」
黒猫「と言っても 本当の意味で殺すワケじゃない」
有栖川マナミ「どう言うこと？」
黒猫「この剣を使うんだ」
黒猫「これはタイムリープする者を 前の世界に戻すことが出来る武器なんだ」
黒猫「この剣で植月ジュンを殺す── つまりタイムリープさせる事が出来れば」
黒猫「この世界を消滅させ、 前の世界に行く事が出来るんだ！」
有栖川マナミ「前の世界？」
黒猫「例えるならそうだなぁ・・・」
黒猫「ここがハッピーエンドの世界なら ラスボスダンジョン前とかかな？」
有栖川マナミ「・・・・・・」
黒猫「まあとにかく！」
黒猫「この剣で ヤツを殺し続けることが出来れば」
黒猫「やがては最初の世界──」
黒猫「つまり君の世界まで通じているハズ」
黒猫「植月ジュンを タイムリープする前に戻せるんだよ！」
有栖川マナミ「・・・・・・」
有栖川マナミ「あなたは一体 どうしてそうまでして・・・」
黒猫「・・・・・・」
黒猫「僕は未来から来たんだ」
黒猫「未来ではね・・・」
黒猫「パラレルワールド同士が 自分達の世界を懸けて戦争しているんだ」
黒猫「途方もない話で 信じられないかもしれないけど・・・」
有栖川マナミ「うーん 今さら信じるも信じないもないけど・・・」
有栖川マナミ「色んなもの見せてくれたし」
黒猫「それもそっか！」
有栖川マナミ「そうなると」
有栖川マナミ「その戦争のきっかけを 作ってしまっているのが ジュンちゃんってことなんだね」
黒猫「うんうん」