〇街中の交番
棗絢音「・・・くしゅっ!!」
棗藤次「ああっ!! アカンやん!! 風邪や風邪!! これ着とき!!」
　　・・・季節の変わり目。寒々しい古都京都。
　　商店街からの買い物帰りに、絢音（あやね）が小さくくしゃみをしたので、藤次（とうじ）は慌てて着ていたコートを彼女に着せる
棗絢音「そ、そんなだめ!! 藤次さんが風邪引いちゃう!!」
棗藤次「アカン!! 風邪は万病のもとや!! 万一お前に何かあったら、ワシ・・・」
棗絢音「そんなの・・・ 私だって、藤次さんに何かあったら私もイヤ!! だから、着て？」
　　そうして、絢音は藤次に被せられたコートを脱ぎ、彼に着せる。

〇街中の交番
棗絢音「ホラッ、これで安心！ さ、帰りましょ？」
棗藤次「絢音・・・」
　　なんともいじらしい妻の行為に、藤次の胸はキュンとなり、堪らず彼女を抱き締める。
棗絢音「と、藤次さん?!」
棗藤次「せやったら、ここで絢音があったまるまでこうしとく。 大事な絢音❤︎」
棗絢音「藤次さん・・・」

〇街中の交番
安藤夏子「と言うか、なに人の家の前でイチャイチャしてるんですか？検事」
棗藤次「な、なんや。柏木んとこの安藤さんやん。 イチャイチャて、失礼やな。 絢音が風邪ひかんようあっためとるだけや。な、絢音❤︎」
棗絢音「うん！藤次さん❤︎」
安藤夏子「そう言うのはご自宅でなさって下さい！ 検事も奥様も大人なんですから・・・」
棗藤次「なんや？ そない人さんの目ぇに憚るような事、してへんよなー？絢音❤︎」
棗絢音「うん❤︎ 藤次さん❤︎」
安藤夏子「・・・・・・・・・」
　　そう言って店の前でイチャイチャする２人に、夏子は頭を抱え、着ていたストールを絢音に巻き付ける。
棗絢音「あら、悪いわ夏子さん・・・」
安藤夏子「お気遣いなく。 これ以上店の前で営業妨害されても困りますので。 さ、お帰りください」
棗藤次「え、営業妨害やなんて、あんまりやなぁ〜 ・・まあええわ。 良かったな。絢音❤︎ 早よ帰って、もっとあったかくなろうな❤︎」
棗絢音「うん❤︎ 藤次さん❤︎ じゃあ、夏子さんありがとう！ストール、また返しに伺うわね〜」
　　そうして腕を組んでピッタリとくっついて歩いて帰る２人をため息まじりに見つめていたら、明凛から拓実（たくみ）がやってくる。

〇街中の交番
大橋拓実「この間は、ウチの店の前でやってましたよ。 最早この時期の風物詩ですね」
安藤夏子「まったくよ。 いい歳して、そこら辺の若い子みたいにイチャイチャイチャイチャ。もう少し年相応の事をしなさいって言いたかった」
大橋拓実「あはは・・・ まあ、仲がいいのはいい事なんですけどね」
安藤夏子「そりゃそうだけど・・・ まあ、精々お互い、あのバカップルの営業妨害には、気をつけましょ」
大橋拓実「ま、まあ・・・それは、ごもっともですね」
　　・・・明日はどこの店が被害に遭うのか。
　　そんな事を考えながら、夏子と拓実は、冬の空を眺めていた。