エピソード2(脚本)
〇城の会議室
ケイ=レクター「──「魔女」は問題なく潜り込んだか」
フレイヤ「はい。ケンドリック伯の助力もあり、情報工作と編入は滞りなく・・・」
フレイヤ「誰がいくら経歴を洗おうとも、今の彼女はケンドリック伯の養女「カルメン」──」
フレイヤ「コールブランドはケンドリック領で生まれ育ち、父方の遠縁である彼に引き取られたという事になっています」
ケイ=レクター「うむ・・・」
ケイ=レクター「この「カルメン作戦」は、最低でも2年を掛ける長期戦となる」
ケイ=レクター「そのため任務に当たる諜報員は上層部でも精査したわけだが・・・」
フレイヤ「・・・何か不都合でも?」
ケイ=レクター「いいや、むしろその逆だ」
ケイ=レクター「あまりにも条件に合いすぎていてな・・・正直驚いている」
フレイヤ「・・・・・・・・・」
フレイヤ「・・・彼女の技能は私が保障します」
フレイヤ「あの若さであれ程の腕前・・・間違いなくクラレインにとって良き成果をもたらしてくれるでしょう」
ケイ=レクター「それは信用している。ただ・・・」
「モルドー電撃戦」──
手元の報告書に記された一文を一瞥して、クラレイン上層幹部ケイ=レクターは眉根を寄せたのであった──。
〇中世の街並み
コールブランド国の首都「カリヴァン」は、別名「煙の都」とも呼ばれる。
その由来は、街全体を曇らせるほどの濃い煙を目にすれば誰もが察するもの。
煙の原因は、「ノックス」を燃やした後に発生する“煤”である。これが霧に混じって地表に滞留し、常に街を煙らせている。
ただちに人体に影響はない──と科学者達は言っているが、そんなあからさまな虚言を頭から信じている者達は少ないだろう。
何故なら、この“煤”を利用して作られる物こそ幾多の戦争でコールブランド国を勝利へと導いた黒い煙こと「夜の帳」なのだ。
要は──
カルメン(要は濃度の違いでしかない・・・)
カルメン(意図的に強めた毒ですぐ死ぬか、もしくは便利な暮らしの中で緩やかに死ぬか・・・)
道脇の溝から廃棄煙が立ち上るのを見て、吸い込まないように口元を押さえた。
カルメン(・・・急いで帰ろう)
あまり街に長居したくない。
この煙を目にすると、どうしてもあの日を思い出してしまうからだ。
コールブランド王室への復讐を決意した、あの日の事を──
「ねっ! こんなとこでなーにしてんの」
カルメン「オフェリア?」
オフェリア「買い物帰り? なら、一緒に帰ろうよ」
オフェリア「どうせ同じ学寮なんだし」
カルメン「・・・うん。いいよ」
オフェリアは、同じレインズ・グラーフ校に通う女子生徒だ。
見ての通りの明るい性格で、“カルメン”の友達でもある。
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