第十四話 それが生まれた日【後編】(脚本)
〇事務所
赤坂 浩基「はい、赤坂運送です! はい、はい。ありがとうございます!」
赤坂 千草「どうだった?」
赤坂 浩基「ZOZOONが考え直してくれた。 大黒運送との専属契約は白紙にするってさ」
赤坂 千草「え? それじゃあ」
赤坂 浩基「いや、残念ながら赤坂運送ともう一度 専属契約を結ぶってことじゃないよ」
赤坂 千草「そう・・・。 じゃあ、倒産は避けられないのね・・・」
赤坂 浩基「そうでもないんだ。 実はZOZOONは別の提案をしてきた」
赤坂 浩基「大黒運送と赤坂運送。 この二社による業績コンペだよ」
赤坂 千草「業績・・・コンペ?」
赤坂 浩基「ああ。今年度、ZOZOONは 大黒運送と赤坂運送、二社と配送契約する」
赤坂 浩基「そして、売り上げ高がより多かった会社に 来年度の専属契約を任せるそうだ」
赤坂 千草「ええー、そんなのおかしいでしょ! 大黒運送なんて後から出てきたのに!」
赤坂 浩基「最初に比べたらまだましさ 要は、ZOZOONにわからせればいい」
赤坂 浩基「僕ら赤坂運送の方が、 いい配送会社ってことをね!」
赤坂 栞里「・・・」
〇オフィスの廊下
赤坂運送 職員「そんな! 納得できません!」
〇事務所
赤坂運送 社員「どうして大黒運送が定時配達のみで 我々が即時配達の担当なんですか!」
赤坂 浩基「すまない。わかってくれ」
赤坂 浩基「ZOZOONは注文後二時間以内に配達する 『即時配達』の需要が高い」
赤坂 浩基「業界最大手の大黒運送に勝つには これしかないんだ」
赤坂運送 社員「やれないことはないと思いますが・・・ 顧客の商品を昼も夜も二時間以内ですよ?」
赤坂運送 社員「社員が疲弊するのは目に見えてます」
赤坂 浩基「ああ、わかってる」
赤坂 浩基「だが、今回の施設拡充で我が社は 数十億の融資を受けたばかりだ」
赤坂 浩基「彼らとのコンペに勝って、 来年度の専属契約を得られなければ」
赤坂 浩基「赤坂運送に未来はない」
赤坂運送 社員「背に腹は代えられないってわけですか」
赤坂 浩基「それもある。そしてこれは、 大黒運送側の提案でもあるんだ」
赤坂運送 社員「大黒の!?」
赤坂 浩基「そうさ」
赤坂 浩基「『先に専属契約の話があった赤坂運送に 即時配達の権利を譲る』ってね」
赤坂運送 社員「どうしてそんな、 敵に塩を送るようなことを?」
赤坂 浩基「ま、要するに舐められてるのさ」
赤坂 浩基「僕ら赤坂運送が即時配達に 対応できないと思ってるんだ」
赤坂運送 社員「何ですって!?」
赤坂 浩基「だから僕は敢えて その挑発に乗ることにしたんだ」
赤坂 浩基「僕はこれまで一緒に働いてきた 社員を信じてる」
赤坂 浩基「僕らならこの難局を乗り越えられるってね」
赤坂運送 社員「わかりました」
赤坂運送 社員「そういうことなら我々社員一同、 全力で即時配達をこなしてみせますよ!」
赤坂 浩基「ありがとう。心強いよ 一緒に頑張っていこう!」
〇空
〇オフィスの廊下
赤坂 栞里(ホッチキスの針、事務所にあったよね)
赤坂運送 社員A「注文入ったぞ! この距離二時間でいけるか!?」
赤坂運送 社員B「あ、俺行けます! バイクなら二時間で・・・」
赤坂運送 社員A「いや待て、別の注文も入った!」
赤坂運送 社員B「台東区? 逆方向じゃないですか! さすがに無理ですよ」
赤坂運送 社員C「俺、自分の車で行ってきます!」
赤坂運送 社員D「ちょっと待った! 台東区行くなら こっちも持って行ってくれ!」
赤坂 栞里(みんなバタバタしてる。 大丈夫かな・・・)
〇空
三ヶ月後──
〇事務所
赤坂 浩基「みんなに朗報だ!」
赤坂 浩基「この三ヶ月で、我が赤坂運送の売り上げは 大黒運送を大きく上回った!」
赤坂 栞里「やった!」
赤坂運送 社員「やりましたね、社長」
赤坂 浩基「うん。概算だが、売り上げ高は 大黒運送の約二倍を計上した」
赤坂 浩基「このまま後三ヶ月もすれば、 我々の勝利は確定と言える」
赤坂 浩基「これも、皆のおかげだ。 本当にありがとう!」
赤坂運送 社員「でも社長、気をつけて下さいよ? 大黒運送は黒い噂が絶えません」
赤坂運送 社員「勝ち目がないって思ったら 何をしてくるか・・・」
赤坂 千草「えっ!? 嫌がらせとか? 今時そんなことする会社いるのかしら」
赤坂運送 社員「わかりません。噂は噂です。 関わって潰れた会社もあると聞きます」
赤坂 浩基「僕も、彼らの黒い噂については聞いている」
赤坂 浩基「これからも気を引き締めて 業務にあたろう」
「はいっ!」
〇空
〇事務所
赤坂 浩基「ええ? はい、はい・・・わかりました」
赤坂 栞里「お父さん。どうしたの?」
赤坂 浩基「配達員の田辺くんが事故を起こしたそうだ」
赤坂 栞里「事故? どうして?」
赤坂 浩基「トラックのタイヤが突然パンクしたらしい」
赤坂 栞里「えっ!? この間も同じようなことがなかった?」
赤坂 浩基「うん。それに車は車検を通したばかりだ 自然に起こったとは考えにくい」
赤坂 千草「最近監視カメラにもね、 不審な人影が映ってたりするのよ」
赤坂 千草「警察には通報してるのだけど ずっと居てくれる訳じゃないのよね」
赤坂 栞里「まさか大黒運送が・・・?」
赤坂 浩基「確証はない」
赤坂 浩基「けど、死傷者でもいないと 警察はなかなか動いてはくれない」
赤坂 千草「困ったわね・・・」
赤坂 浩基「うん、それにシフトの問題も 出てきてしまっている」
赤坂 浩基「即時配達は24時間対応が基本だ 今の人員ではどうしても無理がでる」
赤坂 栞里「どうするの?」
赤坂 浩基「とりあえず出来る限り、夜勤帯は 僕が入ることにするよ」
赤坂 千草「そう、無理しないでね。 私もまた、シフト組み直してくる」
赤坂 浩基「ああ、頼むよ。僕は病院にいってくる その間の即時配達は山岡君に頼むか」
赤坂 栞里「お父さん。山岡さんはまだ・・・」
赤坂 浩基「あ、そうか。 山岡くんも体調を崩してたんだったな」
赤坂 浩基「仕方ない、配達は僕が代わりにやろう」
赤坂 浩基「栞里、済まないが」
赤坂 栞里「うん、私お見舞いにいってくる」
〇空
更に1ヶ月後──
〇倉庫の搬入口(トラック無し)
赤坂 栞里「あ、脇阪さん、こんにちは」
赤坂運送 社員「・・・」
赤坂運送 社員「あ! ああ、栞里ちゃん! こんにちは。今日もいい天気だね」
赤坂運送 社員「また即時配達の注文が入ったから 行ってくるよ」
赤坂 栞里「ええ、行ってらっしゃい」
赤坂 栞里(・・・いい天気?)
赤坂 栞里「田辺さん」
赤坂運送 社員「えっ! ああ、栞里ちゃん。 元気かい。ちゃんと夜は寝ないと駄目だぞ」
赤坂運送 社員「ああ、また即時配達だ。またな」
赤坂 栞里「あ、うん・・・」
赤坂 栞里(みんな睡眠不足でふらふらだわ)
赤坂 栞里(私に何か出来ることがあれば いいんだけど・・・)
〇綺麗なキッチン
赤坂 栞里「お母さんただいまー」
赤坂 千草「・・・」
赤坂 栞里「お母さん?」
赤坂 千草「あっ、栞里? ごめん! ご飯今作るから!」
赤坂 栞里「大丈夫。私、帰りに買い物してきたから カレーでいい?」
赤坂 千草「あ、ごめん」
赤坂 栞里「社員さんのもだよね? ちゃちゃっと作っちゃうから」
赤坂 栞里「お母さん、休んでていいよ」
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ふぅ…ちょっと休憩します~
すごい展開の連続で、頭がパンクしそうです(ºཀº)
またあとで読みにきますね!
えっ? 栞里、それで復讐で近づいた…?
えっ…?
統合失調症だったから…?
お願いします!中に!まだ家の中に、子どもがいるんですーっ!!!
と叫びたくなるような気持ちです😭