エピソード1 バレそう!?(脚本)
〇教室
私には秘密がある。
皆に内緒でアイドル活動をしている。
きっかけは従姉のお姉ちゃんが応募した履歴書。
元々歌うこともダンスも好きだったからか、選考に受かってしまったのだ。
勉強よりも運動の方が好き。
髪の毛だって男の子みたいに短かった。
そんな私がウィッグをつけて、ぱっちりメイクをしたら、まるで魔法をかけられたように、アイドルのもう一人の私が顔を出した。
〇ライブハウスのステージ
アイドル名は【ユウ】
小学生から中学生までのグループで活動する私たちは、まだまだ駆け出しだ。
けれど、大手の事務所のプッシュもあって、出演依頼も徐々に増えてきた。
応援してもらえるのは嬉しい。
歌って踊って、誰かを元気づけるのは楽しい。
戸惑いが多かったけど、同じメンバーの子たちと頑張る日々が私は楽しかった。
そんなある日、事件が起こった。
〇教室
優子「え? 乙葉ちゃんの出た音楽番組!?」
同じクラスの乙葉ちゃんが、テレビに出たからクラスの皆で、その番組の動画を教室で見ることになった。
乙葉ちゃんはこの前の音楽番組の、小~中学生を対象とした一般応募のバックダンサーとして踊っていたのだ。
そしてその番組には、私たちのグループも出演していた。
あの時は撮影で、色んな人たちがいたから、私は全然気付かなかった。
乙葉「優子ちゃん、どうしたの?」
優子「な、何でもないよ!」
優子(バレたらどうしよう・・・・・・)
だって全然タイプが違う。
アイドルの時は女の子らしい女の子を演じているユウと
平凡で勉強が苦手で女の子らしくない私。
乙葉「さ、一緒に見よ!」
誰かのタブレットで、アップロードされた動画が既に準備されている。
断りきれず、無情にも皆の前で番組の映像が再生された。
〇街中の道路
結局、どうなったかというと。
ひとまずバレることなく済んだ。
私たちのグループの出演は短かったし、皆がしっかり見ていたのは乙葉ちゃんの踊っているところだったから。
けれど・・・・・・
乙葉「ねえ、ユウって優子ちゃんなの?」
帰り道、突然そう告げられて私は絶句した。
優子「え・・・・・・乙葉ちゃん?」
乙葉「テレビ撮影の時ね、本当は気付いていたんだよ。でも、確信が持てなくて今日、わざわざ皆の前で見たの」
優子「・・・・・・」
乙葉「ねえ。アイドルのユウって、優子ちゃんだよね?」
優子「・・・・・・うん」
バレちゃった。嘘をつき通せばよかったのに、それが出来なかった。
乙葉「そっかー。すごいなあ」
意外な言葉に、私は面食らった。
優子「だ、誰にも言わないで!」
乙葉「どうして? 頑張っててすごいのに」
優子「すごいのは私じゃないよ」
優子「メイクしてくれる人が、可愛い衣装を作ってくれる人が、私を変身させてくれているだけ。私自身は何もすごくない」
あの可愛さは全部作られたもの。
私自身が持つ魅力なんて、ほとんどない。
乙葉「ううん。ユウも優子ちゃんも両方可愛いし、格好いいよ」
乙葉「あんなに歌やダンスを一生懸命頑張るのも、素敵に変身できるのも、誰にでも出来ることじゃないよ」
乙葉「私も今回、バックダンサーで色々教えてもらったけど、すごくすごく難しかった」
乙葉「だから、あんなに輝けるのは、優子ちゃんだからだよ!」
優子「え・・・・・・?」
乙葉「私は応援してるよ。頑張ってね」
乙葉ちゃんはそう言って笑った。
本当は誰かにずっと認めてほしかった。
ユウも優子も私だから。
優子「ありがとう・・・ でも、やっぱり恥ずかしいから他の皆には秘密ね」
乙葉「わかった! 優子ちゃんの秘密、一緒に守るよ」
そうして、秘密を共有した私たちは一緒に夕暮れの道を帰って行った。
心がすごく軽くなって、今までよりももっとずっと、頑張れる気がした。
乙葉ちゃんが気づいてたと言った時はドキッとしましたが、いじわるとかじゃなくてよかったです。いいお友達になれそうで、見ていて嬉しくなりました。内緒でアイドルって夢があるけれど、それも自分だって認めてもらえるのはもっと素敵ですね。
小学生で自分のビジョンがしっかりあってすごいですね、友だちも、友だちとして応援できる姿がほほえましく映りました。将来が楽しみですね。
優子の、認めてほしいという気持ちと隠したい気持ちが共存する様子が、しっかりと伝わってきます。自己分析もできる賢さのなかにそういった気持ちがあるところに小学生らしさが感じられます。