第七話 最悪なアセリ(脚本)
〇城の客室
オルガ(な、何か私だけ損してるような気がするんだけど・・・?)
最悪な提案の後・・・
グラディルク城に半ば強引に連れて来られたオルガは、冷静になって考えていた。
オルガ(一カ月・・・ 一カ月の内に何とかしてこの首飾りを外さないと・・・! 私の命が危ういし・・・!)
オルガ(クロノアも・・・いきなり一緒に暮らそうって・・・)
オルガ「もうっ!何なのよっ!?」
クロノア「・・・オルガ。 調子はどうだい?」
オルガ「いいように見える?」
クロノア「ご機嫌斜めだね・・・」
オルガ「・・・一緒に暮らそうって・・・ 何が目的!?」
クロノア「・・・目的は、君に僕を好きになって欲しいっていう想いだけなんだけど・・・。 あの時は・・・まぁ、助け船かな?」
オルガ「助け船?」
クロノア「・・・ソディト、君の首を今にもはねそうだったからね・・・」
クロノア「大切な人の為なら手段さえ厭わない・・・。 ソディトの気持ちはわかるよ。 きっと僕も同じ事をする・・・」
クロノア「だから、君を守る為に僕の手元に置く事を提案したんだ」
クロノア「迷惑・・・だったかな?」
オルガ「・・・」
オルガ「一カ月・・・経って・・・ 首飾りが外れなかったら・・・」
クロノア「僕が全力で君を守るからっ!!」
クロノア「そんな心配はせずに・・・この一カ月、僕と共に過ごして欲しい・・・」
クロノア「一カ月あれば・・・君の心も少しは僕に傾いてくれると信じているから・・・!」
クロノア「・・・色々あって疲れただろう? 今日は、ゆっくり眠るといい・・・」
クロノア「おやすみ。 オルガ・・・」
オルガ(・・・私の心が・・・傾かなかったら・・・どうするのよ?)
オルガ「・・・むむ・・・ ・・・そ、そう簡単に落ちてたまるものかっ!」
〇華やかな裏庭
クロノア「おはよう、オルガ。 さぁ! 冷めない内に食べてくれ!」
オルガ「え?え?」
クロノア「何を驚いているんだい?」
オルガ「えっと・・・クロノア・・・料理するんだ・・・!」
オルガ(しかも、私よりも美味しそうに出来てるし!)
クロノア「びっくりした? 昔、ちょっとハマってた時期があってね。 その名残りさ♪」
オルガ「た、食べていいの?」
クロノア「もちろん!」
オルガ「えっと・・・じゃあ、いただきます!」
オルガ「・・・!!」
クロノア「・・・どうだい?」
オルガ(く、悔しいけど・・・美味しい!!!!)
クロノア「・・・その顔なら・・・満更でもない・・・かな?」
〇屋敷の書斎
オルガ「ふぅ・・・。 クロノアの料理、意外だったけど・・・美味しかったな・・・」
オルガ「屋敷の本とか自由に読んでいいって言ってたし・・・エラトの魂跡について何か手がかりがあるかもだし、ちょっと調べてみよ!」
オルガ(うーん・・・! あの本棚の1番上の本が怪しそうなんだけど・・・。 と、届かないな──って──)
本棚の1番上の本を取ろうとして、オルガは脚立から転落。
ついでに重なっていた本も落ちて来て、本まみれになってしまった。
オルガ「いたたたたっ・・・──って・・・ あっ!!」
オルガ(何気に掴んだ本に──何かエラトの魂跡に似たイラストが・・・!!)
オルガ「何なに? えっと──」
オルガ「”エラトの魂跡を外すには・・・真心を捧げるべし”・・・?」
オルガ「”──もしくは、同等の憎しみを捧げるべし”・・・?」
クロノア「オルガ!!!!!! 大きな音がしたけど── 大丈夫かいっ!?」
オルガ「大丈夫。大丈夫。 ちょっと転んだだけで──」
クロノア「!!!!!!!!!! 血が出てるじゃないか!!!!!!!!」
オルガ「えっ!? ──って、かすり傷だよ。こんなの・・・」
クロノア「ダメだよ!! ほら!!こっちにおいで!!」
〇貴族の部屋
クロノアは、ひょいっとオルガを抱き抱え──自室へ足を向ける。
そして、素早くオルガの傷口を消毒し、絆創膏を貼る。
クロノア「ダメだよ?気をつけなくちゃ・・・!!」
オルガ「あ、ありがとう!!」
クロノア「一体、何を探していたんだい?」
オルガ「えっと・・・首飾りを外す方法を──」
クロノア「──そんなに・・・外したいなら・・・」
オルガ「えっ!?」
クロノア「──君は・・・そんなに僕に愛されるのが嫌なのかい?」
クロノア「──愛されるのを怖がっているようにも見えるよ?」
オルガ「怖がっている?・・・私が?」
クロノア「僕の何が嫌い? 顔?声?仕草?性格?」
オルガ「えっと・・・?クロノア?」
クロノア「僕は、君を愛してる。 だから、大切にしたいって思ってた」
クロノア「・・・そんなにその首飾りを外したいなら・・・外させてあげるよ!!」
次の瞬間、オルガは抵抗する間も無くベッドへ押し倒されていた。
オルガ「クロノア!・・・お、落ち着いて!!」
クロノア「僕は、冷静だよ」
オルガ「全然、冷静じゃない!!」
クロノア「首飾りを外したいなら──こうするのが・・・1番の早道だからね?」
クロノア「今すぐにでも外して解放されたいんだろ?」
オルガ「それは!解放されたいけど!」
クロノア「一カ月、君の心が育つまで待とうと思ってた・・・! だけど・・・そんなに外したいなら──」
オルガ「ま、待って!!」
オルガ「クロノアは・・・それでいいの!?」
クロノア「よくないっ!!」
クロノア「君を抱く時は、君にも僕を愛してもらってからがいいって決めてた! ──決めてた・・・けど・・・」
クロノア「・・・時間がないじゃないか・・・」
クロノア「君の首は、はねさせない」
クロノア「君が生きている方が大切。 無理矢理、君を抱いて・・・君に嫌われて・・・憎まれてしまっても・・・」
クロノア「僕は── 君が生きている方が大切」
クロノア「だから、ごめん。 今から、抱くよ?」
オルガ「ストップ!ストップ!!」
オルガ「私、私も嫌だ!」
オルガ「こんな形で、貴方と一緒になりたくないっ!!」
オルガ「もうちょっと待って! もうちょっとしたら、貴方の事・・・好きになりたいからっ!!」
オルガ「・・・こんな形で・・・貴方の事・・・嫌いになりたくないくらいには・・・好きだから・・・」
クロノア「ほ、本当かい!?」
オルガ「う、うん。 だから、もうちょっと待って」
クロノア「・・・わかった・・・けど──」
クロノア「キスぐらいは・・・許される・・・よね?」
オルガ「・・・今のは・・・お酒1本分ね?」
クロノア「じゃあ・・・もう1本分──って・・・あれ?」
オルガ「?」
クロノア「エラトの魂跡・・・何かちょっと淡い桃色に光ってる?」
オルガ「え!?」
前話までの変態・クロノア様のイメージが、今話冒頭では「心優しき変態」に変わり、後半では「強引な変態」に変わりました。結局は変態には変わりないのですけど。。。そんな変態様に対し、オルガの心境に変化が?