真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

24/悪夢(脚本)

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不安狗

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〇シックな玄関
  見兼ねたコロンが、僕の心を読んでからため息を一つついた。
  「コロン・・・・・・」
コロン「ですが久野先輩、お兄様がその装備を外すとどうなるか・・・・・・覚えていますか?」
  ・・・・・・え?
  「コロン、覚えているってどういう・・・・・・」
  するとコロンが僕の口の前に右手を出して、人差し指を立てた。
コロン「お兄様、少しの間、様子見を」
  「様子見・・・・・・?」
  すると久野の目が泳ぎだした。
  明らかに、動揺しているようだった。
久野フミカ「お、覚えてるよ・・・・・・?」
久野フミカ「装備・・・・・・ を、外したら・・・・・・」
久野フミカ「えっと、コハクが、死んじゃうんだよね?」
久野フミカ「いや、違ったっけ・・・・・・?」
  「え・・・・・・?」
  これは・・・・・・どういうことだ?
コロン「そうですか、それでは久野先輩」
コロン「お兄様の頭の上についているもの、何か見えますか?」
久野フミカ「頭・・・・・・?」
  久野が明らかに、何のことか理解できていない顔をしている。
  まさか・・・・・・。
久野フミカ「コハクの頭の、上・・・・・・?」
久野フミカ「えーっと・・・・・・? え、えっと・・・・・・、ふけ?」
  「・・・・・・ふけ?」
  僕は咄嗟に、右手で頭を払う。
  その拍子にカチューシャが落ちそうになり、僕は慌てて左手で支える。
久野フミカ「コハク、何やってんの・・・・・・?」
  何とかカチューシャを外さずに済んだ。
  今の久野には、さっきまで話題になっていたこのカチューシャが、どうやら見えていないらしい。
  理由はわからない。
  でも見えていないとはいえ、今これを外してしまうのは危険な気がした。
コロン「そうですね」
コロン「久野先輩はもう帰って良いですよ」
コロン「あんまりのんびりしていると、学校に遅れてしまいますからね」
久野フミカ「え、あ、わかってるから!」
久野フミカ「コハクも、早くしないと遅刻するよ!」
  「あ、ちょっと待って!」
  久野が帰ろうとしたので、僕は咄嗟に呼び止めた。久野がびっくりした顔をしている。
久野フミカ「コハク、どうしたの」
  「いや、何ていうか・・・・・・」
久野フミカ「えっと・・・・・・急ぎじゃないなら、また学校で話そ?」
  「え、あ、うん・・・・・・」
久野フミカ「じゃあ放課後、生徒会室で」
コロン「・・・・・・」
  久野はコロンを一瞥してから、急ぎ足で帰っていった。
  久野が見えなくなってから、僕はカチューシャと指輪を外して机の上に置いた。
  「・・・・・・コロン、久野に、何かした?」
コロン「失礼ですね。私じゃありません」
  コロンがわざとらしく腕を組んで、ふくれっ面をした。
  「いや、でも、じゃあ・・・・・・誰が?」
コロン「コクノの仕業ですよ、小賢しい」
コロン「久野フミカのフェーズ1に関する記憶は、恐らくそれらの装備に封印されています」
  机の上のカチューシャと指輪を、コロンがちらりと見た。
  「コクノが、記憶を封印・・・・・・?」
コロン「そして記憶を封印された記憶も封印する過程で、封印する媒体であるその装備も記憶することができず、」
コロン「彼女に認識できなくなった可能性があります」
  「・・・・・・」
  正直もう、コロンが何を言っているのかすら理解できていない。
コロン「つまり久野フミカは、先輩を襲ったことも、お兄様のご両親を食ったことも、覚えていないということです」
  「・・・・・・」
  でも一番大事な、最後の一言だけはしっかり理解できた。
  つまり久野は、久野自身がゾンビとなって経験した悪夢を、今はもう覚えていないということだ。
コロン「そしてそれは、忘れていた方が良い記憶、ですか?」
  コロンが僕をまっすぐ見た。
  「・・・・・・コロン、今僕の心予測した?」
コロン「ええ。お兄様がそう言うと思って、私はあいつを逃がしたんですよ」
  「・・・・・・どういうこと?」
  コロンが自慢げに人差し指を立てた。
  コロンが何を言いたいのかはわからない
  でも、人を襲う記憶なんて、そんなの忘れていた方が良いに決まっている。
  トラウマどころの話では、ないはずだ。
コロン「コクノの術を解くのは容易い」
コロン「だからまた、あいつが新たに罪を重ねた時、一気に全ての罪を思い出してもらう方が良い」
コロン「あいつには、先輩に何を言われたところで立ち直れないような、急激な絶望を味わってもらいます」
コロン「この、あいつが一番人目に触れている世界で」
  「・・・・・・」
コロン「それでは先輩、後はごゆっくり」
コロン「私は先に行っています」
  コロンが鞄に銃を仕舞った。
  「・・・・・・それ、学校に持って行くの?」
コロン「あいつは、いつお兄様に襲い掛かってもおかしくありませんから」
  「さっき、大丈夫だったじゃん」
コロン「さっき大丈夫だっただけです」
コロン「私はあいつのことを信用していませんから」
  「信用って・・・・・・」
  自称悪魔が、人間相手に何をムキになっているのだろうか。
コロン「先輩も、あいつのことは信用し過ぎない方が良いですよ」
  「あの・・・・・・コロンってさ」
  「何でそんなに久野のこと嫌うの?」
コロン「・・・・・・色々訳アリなんですよ、悪魔も」
  振り返ったコロンの髪が黒く染まっていき、段々背が高くなっていく。
  この、目の前の物体が変化していく景色。
  目の当たりにするのは、これで二度目だ。
  「・・・・・・」
  そして上着のポケットから、ユウヒマル跡高等学校生徒会顧問、宮浦先生がいつもかけていた黒縁の眼鏡を取り出す。
  そして咳払いをしたコロンの声は、いつも学校で聞いていた、宮浦先生のものだった。
宮浦先生「それじゃあ虎丸、必要になったらいつでも呼んでくれ!」
宮浦先生「先生、全力で協力するからな!」
  「・・・・・・はい、先生」
  そしてコロンは、姿を消した。
  「・・・・・・」
  世界は元に戻った。
  久野も一連の記憶を失い、今まで通りの生活に戻りつつある気がする。
  でも僕は、以前のような、何も知らない僕に戻ることは無かった。
  学校で割と仲の良かった宮浦先生も、バイト先で頼りにしていた山河店長も、たった一人の弟も、全てがコロンだった。
  全員悪魔で、同一人物。
  「・・・・・・学校行こう」

〇土手
  そして僕は、考えることをやめた。
  玄関の扉を開けると見えたのは、真っ赤な空でもドローンで覆いつくされた空でもなく、入道雲がそびえたつ夏の青空。
  聞こえてくるのはゾンビのうめき声でもドローンの羽音でもなく、止まないヒグラシの蝉時雨だった。

次のエピソード:25/新生徒会

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