シャーロット

がっさん

エピソード2(脚本)

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〇菜の花畑

〇病室のベッド
オールセン「トウコ、入るよ」
オールセン「お腹の調子、どうだい?」
トウコ「...」
トウコ「先生?」
オールセン「ごめん、起こしてしまったね」
トウコ「いいえ...大丈夫」
トウコ「...」
トウコ「私ね」
トウコ「怖いの」
オールセン「怖い?」
トウコ「妊娠がわかったときは、本当に嬉しかったの」
トウコ「でも」
トウコ「この子の胎動を感じるにつれて」
トウコ「産んだ後のことばかり考えてる」
トウコ「私が母親だと、この子が自由に生きられないんじゃないか」
トウコ「私のことを、恨むんじゃないかって...」
オールセン「...」
オールセン「君はもう、立派な母親の顔をしてる」
トウコ「...え?」
オールセン「自分の身体の心配より、娘の将来を考えてる」
オールセン「大丈夫」
オールセン「君は恵まれている」
オールセン「君も、これから産まれてくるこの子だって」
トウコ「...」
トウコ「ありがとう、先生」

〇おしゃれな大学
  クラクスヴィーク公立病院の
  オールセン医師を訪ねて。
  母からの手紙は、この文章を最後に終わっていた。
  結局、彼女が伝えたい思い出が何なのか、
  私は理解できないまま。
  彼女に導かれるままに、私はこの場所へ足を運んでいた。

〇病院の廊下
  ただ、全てを知りたいと思った以上、
  疑問が渦巻く泥の中で、
  私の足は、否が応でも動き出す。
オールセン「...」
オールセン「...驚いたな」
由希「えっ?」
オールセン「いや、いいんだ」
オールセン「ちょっと場所を移そうか」

〇豪華な客間
オールセン「よく来てくれたね」
オールセン「君とは、30年ぶりになるかな...」
由希「では、あなたはトウコの...?」
オールセン「ああ、私が彼女の担当医だった」
オールセン「彼女が先日亡くなったことは、既に知っているね?」
由希「はい...」
由希「彼女の遺書を頼りに、あなたを訪ねました」
オールセン「...」
オールセン「やはり...そうか...」
由希「...?」
オールセン「ひとつ」
オールセン「トウコとの思い出ばなしを聞いてくれるかな?」
由希「...」
由希「はい」
オールセン「...トウコは」
オールセン「ピアノが好きでね」
オールセン「入院中も、よくこの部屋へ弾きにきていた──」

〇おしゃれな大学

〇病室のベッド
トウコ「先生」
トウコ「今日こそ、弾いてもいいかな?」
オールセン「えぇ...?」
オールセン「もう38週目なのに...?」
トウコ「ピアノを弾いてると、この子いつも以上に強く蹴ってくるのよ」
トウコ「まるで喜んでるみたいで...」
トウコ「だから、お願い!」
オールセン「うーん...」
オールセン「断っても、こっそり弾きに行くんだろう?」
トウコ「あれ、バレてた」
オールセン「そんなことだろうと思って」
オールセン「車椅子、持ってきたよ」
トウコ「さすが先生」
トウコ「妊婦への理解があって助かるよ」
オールセン「どういたしまして」

〇豪華な客間
オールセン「ずいぶん、寂しい曲を弾くんだね」
トウコ「いいえ、寂しくなんてない」
トウコ「これは、始まりの曲」
オールセン「始まり...か」
トウコ「ねぇ先生?」
トウコ「あの日以来」
トウコ「私、この子の誕生を祝福したいと思えるようになったの」
トウコ「この子を授かってから」
トウコ「一日がとても長く感じられるの」
トウコ「その時間の中で、私の価値観がめまぐるしく変わっていった気がする」
トウコ「不思議ね、人間って」
オールセン「そうだね」
オールセン「...」
オールセン「トウコ」
オールセン「お腹の子の名前、もう決めたかい?」
トウコ「うん」
トウコ「実は、ずっと前から決めてたの」
トウコ「私と違って、自由に生きてほしい...」
トウコ「自分の意思で、好きな場所で、好きなものに触れて...」
トウコ「「自由な人」になれることを願って...」
トウコ「...」
オールセン「トウコ?」
トウコ「先生」
トウコ「破水、したかも...」

〇沖合

〇菜の花畑

〇病室のベッド
トウコ「あぁ...」
トウコ「シャーロット...」
トウコ「私の...」
トウコ「私の...愛しい娘...」
シャーロット「んあ゛ーっ!!んあ゛ーっ!!」
トウコ「うっ...」
トウコ「シャーロット...シャーロット...」
トウコ「私が...見えるかしら...?」
トウコ「あなたの...お母さんよ...」
トウコ「...」
トウコ「ありがとう...」
トウコ「生まれてきてくれて...」
トウコ「シャーロット...」

〇豪華な客間
オールセン「君が産まれた瞬間は」
オールセン「今でも鮮明に覚えているよ」
オールセン「30年以上前の出来事なのに、いまだに色褪せない」
オールセン「不思議だね、人間ってのは」
  ...いまさら、
  本当の名前を知っても、ピンとこない。
  ただ、
  自分の今の名前にも、きっと彼女の願いがこめられているのだろうと、
  何故だか、確信が持てた。
由希(名前の意味なんて)
由希(考えたことも無かったな...)

〇病院の廊下
オールセン「実は、トウコから手紙を預かってる」
オールセン「もちろん、宛名は君だよ」
由希「手紙...何で...」
オールセン「はじめは、何かの冗談かと思ったよ」
オールセン「来る保証も無い、娘への手紙を預かるなんて...」
由希「どうして...そんなわざわざ...」
オールセン「トウコの本当の目的はわからない」
オールセン「でも君は実際に、この場所に辿り着いた」
オールセン「これは」
オールセン「君たち二人にとって、とても大切なことだと信じているよ」
オールセン「かくいう私も」
オールセン「君と再び会えて、本当によかった」
由希「...」
由希「私も」
由希「お話を聞けて、よかったと思ってます」
オールセン「...ありがとう」
オールセン「シャーロット」
オールセン「この島で、君は沢山の人と出会うはずだ」
オールセン「旅の幸運を、祈っているよ」
由希「...はい」
  すべてが突然で、何もわからない。
  許すとか、許さないとか、
  怒りの矛先を探している場合じゃない。
  今、私にできることは、
  この手紙に、最後まで向き合うこと。
  それだけだ。

〇堤防

次のエピソード:エピソード3

コメント

  • 感動で涙腺にグッと来ました…!
    由希誕生のシーンでは、ピアノのBGMと合わさってもう感極まってしまいました💦
    ピアノという楽器は、どうしてこんなにも透き通った音色を奏でるのでしょうか……作品にマッチしていて心が揺さぶられました✨
    手紙を通じてフェローの人々とふれあいながら真相に近づいていき、由希……シャーロットは何を思うのか、続きが気になります😊
    温かいお話を、ありがとうございます☺️

  • 素敵なお話でした!
    島にはお母さんの想いが、たくさん残っているのでしょうね😊
    次はどんな想いに触れられるのか、楽しみです!

  • 先生にとっても久しぶりの再会ってのがニクイですね。
    トウコの面影も感じて、切ない気持ちになったことでしょう。

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