暗き街のエストレリャ

おそなえひとみ

交わる星(脚本)

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おそなえひとみ

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〇洋館のバルコニー
ベガ「私を殺すか・・・・・・なんの為に?」
エストレリャ「口封じに決まっている・・・・・・」
「居たか!?」
「こっちにはいない!!」
「相手は深手を負っている! そう遠くへは逃げれないはずだ!!」
ベガ(義賊か・・・・・・)

〇荒廃した教会

〇洋館のバルコニー
ベガ「ふん、義賊と呼ばれるエストレリャも万事窮(ばんじきゅう)すだな」
エストレリャ「こんなところで終わるつもりはない・・・・・・」
ベガ「私を殺してでも、目的を遂げるか?」
エストレリャ「くっ・・・・・・」
ベガ「・・・・・・」

〇中世の街並み
男の子「早くまたエストレリャが出てこないかな・・・・・・」
男の子「また悪い奴からお金を盗んでくれると良いのに・・・・・・」

〇洋館のバルコニー
エストレリャ「・・・・・・」
ベガ「迷うなよ・・・・・・」
ベガ「迷わず人を襲うような男だったら、気兼ねなく自警団に突き出せたのに・・・・・・」
  ベガがエストレリャに歩み寄ると、彼の体に手をまわす。
  彼の支えになり、ゆっくりと立ち上がらせる。
エストレリャ「なにを・・・・・・」
ベガ「夜とは言え、ここでは誰かの目につくとも限らない」
ベガ「私の部屋に来い」

〇貴族の部屋
  エストレリャに肩を貸し、ゆっくりと部屋の中を移動していく。
  ポタリ、ポタリと血が床に滴り落ちていく。
  窓際から一番近い、自分の椅子にエストレリャを腰かけさせる。
  彼はわき腹を押さえながら、力なく椅子にもたれかかる
エストレリャ「知らない男を、部屋に招き入れるとは感心しないな・・・・・・」
エストレリャ「しかも、こんな夜更けに・・・・・・」
ベガ「相変わらず憎まれ口しか喋らない男だな」
エストレリャ「なにを言っている?」
ベガ「変装するつもりなら、目の色と声も変えておくべきだ」
ベガ「アルテア・ドミナ・メンデス様」
  ベガが相手の髪を掴み、力強く引っ張る。
  するりと彼の髪が取れ、その下から赤毛が現れる。
アルテア「気がつかないフリをしていれば良いものを・・・・・・」
アルテア「口を封じられるとは思っていないのか?」
ベガ「貴方がそんな人間なら、短剣を抜いた時に襲い掛かっていたはずだ」
アルテア「狙いが分からん。 なぜ正体を見抜いたことを話す」
アルテア「勝ち誇りたい気分だったか?」
ベガ「まさか・・・・・・」
ベガ「ただ意外だっただけさ」
  出血を続けるアルテアのわき腹に、ベガが手を添える。
ベガ「死と再生の女神よ 彼の者に癒しの祝福を」
アルテア「なぜ俺を助ける?」
ベガ「お前が死んだら、困る者がいるからだ」
アルテア「義賊は好きじゃないのだろう?」
ベガ「あぁ、嫌いさ。 だがお前はエンハンブレではない」
アルテア「バカな女だ。 自分から、厄介ごとを抱え込むとはな」
ベガ「この街を再生させようと考えているんだ」
ベガ「それに比べればたいしたことではないさ」
アルテア「この街を再生か・・・・・・」
ベガ「どうしても私一人の力では、それは叶えられない」
ベガ「お前の力も必要だからだ」
アルテア「だろうな・・・・・・」
アルテア「お前が組織の中で力を持つには時間が掛かりそうだ」
ベガ「しかし、いま助けが必要な人間がいる。 その人達を助けてやって欲しい」
アルテア「言われなくても・・・・・・」
ベガ「少し休め。 傷は治ったが、失った血までは戻せない」
アルテア「他人に自分の命運を委ねるか・・・・・・」
アルテア「嫌な感覚だ」
  アルテアは目を閉じ、しばらくして小さな寝息を立てて、眠りに落ちる。

〇貴族の部屋
  時計の音にアルテアが目を覚ます。
  見慣れない場所に思わず飛び起き、短剣の柄に手を伸ばす。
ベガ「安心しろ、私の部屋だ」
ベガ「それと自警団は他の場所を探しに行ったよ。もう安全だ」
アルテア「どのくらい寝ていた?」
ベガ「二時間くらいだ」
アルテア「誰もこの部屋に来なかったのか?」
ベガ「訪ねられてもらっては困るから、部屋から出ていたよ。鍵を掛けてな」
アルテア「不本意な話しだが・・・・・・助かった」
ベガ「生憎だが、そろそろ出て行ってもらおうと思ってな」
ベガ「共に朝を迎える間柄ではないだろう?」
アルテア「ふっ、間違いない」
  アルテアが立ち上がり、ベガの側に歩み寄る。
アルテア「この礼はいずれしよう」
ベガ「私には必要ない。 その分は街の人に与えてやってくれ」
アルテア「気に食わない女だ」
  アルテアがベガの腰に手を回し、彼女の体を引き寄せる。
  咄嗟のことに反応できず、なすがままになったベガの口にキスをするアルテア。
ベガ「な、なにを考えているんだ貴様!!」
アルテア「騒ぐと誰か来るかもしれんぞ」
ベガ「困るのは貴様だろう!!」
アルテア「お前の口を封じると言った手前、何もしないのでは俺のプライドが許さなくてな」
ベガ「意味が違うだろっ!!」
アルテア「こう見えても、約束は守る人間なのさ」
ベガ「気に食わない男だ・・・・・・」
  窓を開け、ベランダに出るアルテア
アルテア「じゃあな、いずれまた!!」
  アルテアはそう言い残し、ベランダから飛び降り、姿を消す。
ベガ(まったく信じられん男だ・・・・・・)

〇貴族の部屋
「ベガ、起きてる?」
ベガ「イレネか、入って来て構わないよ」
ベガ「こんな昼間からどうしたんだ?」
イレネ「お客さん・・・・・・って言って良いのかな?自警団の人達が来てるの」
ベガ(昨日のエストレリャの件か・・・・・・)
ベガ(こうも早く来るとはな)
ベガ「昨日の騒ぎの件だろ? 上がって頂いて構わない」
ライラプス「ではでは。 お構いなく上がらせてもらうよ」
ベガ「あなたが自警団の方?」
ライラプス「えぇ、自警団所属のライラプスです」
ライラプス「何か気に障ることでもありました?」
ベガ「いいえ。自警団の方の顔と名前は大体把握しているんですが、初めてお見掛けする方でしたから」
ベガ「誰だろうと思いまして」
ライラプス「なるほど・・・・・・僕は最近雇われたんですよ。自警団にね」
ライラプス「しかし顔が広いんですねぇ」
ライラプス「僕なんか、同僚の顔と名前も覚えてないのに」
ライラプス「まぁ、興味が無いだけなんですけど」
ベガ「色々な方と交流を持つのも、わたくし達の仕事ですもの」
ライラプス「それは表の? それとも裏の仕事かな?」
ベガ「お高いとは言えここは娼館ですわ」

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コメント

  • 娼館で働いてるベガでも咄嗟のことだとそれなりに慌てるのがかわいかったです。エストレリャ、僕は全然見当がついてなかったです。
    新しく仲間になりそうな人かなって思ってました。じゃあやっぱり二人で何とかするしかないのか…。

  • 厄介そうな自警団の男が出てきましたね……💦
    バレないかとヒヤヒヤします。

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