RiversideBaron~最終章~

山本律磨

自由の女神(5)(脚本)

RiversideBaron~最終章~

山本律磨

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〇荒廃した街
  崩壊を経て復興へと向かう帝都
  しかしそれは様々な欺瞞を炙り出している
  瓦礫に埋もれる大衆を押しのけるように、
  ブルジョワもまた被災を装い援助を貪る
  かくてこの国の格差隔絶は決定的となり、
  革命という名の暴発は迫っていた
  全ては自由の女神の名のもとに
  そんな帝都を一匹狼の刑事が疾走る

〇荒廃したセンター街
  官憲の犬と蔑まれながらも弱き者達に寄り添い
  法の番犬と疎まれながらも敢然と悪に立ち向かう

〇空
  そう、彼こそがこの街の真のヒーロー
  石塚伝八42歳、厄年
  そして独身
  そんな伝八に待ち受ける今日の事件とは?

〇雨の歓楽街
  男一匹!カクソデ刑事

〇役所のオフィス
最上「・・・ってことで頑張ってよ」
最上「あとは頼むから。男一匹クソデカおじさん」
伝八「誰がおじさんだ誰が!」
木場「クソはいいんすね・・・」
伝八「どうしちまったんだ、こいつ。ただでさえ覇気のあるタイプじゃなかったのに」
伝八「ヘロヘロじゃねえか」
木場「知らないですよ」
最上「要件なら木場曹長に伝えてくれ」
木場「というわけで、お話しなら僕が伺います。男一匹デカ○ンおじさん」
伝八「デカの意味が変わってるぞ」
伝八「ちょっと嬉しいけどよ」
伝八「うん?奥にいるヤツ。ありゃあ・・・」
伝八「よう、お蝶!どうだ調子は?」
伝八「震災を機にそろそろ組閉めたらどうだ?」
蝶子「チッ、嫌なヤツに会っちまったねえ」
蝶子「解散どころか、ご好評につき店舗拡大を考えてるくらいだよ」
蝶子「復興の先にレヴューの時代がきっと来る。その時御堂組は芸能プロダクションとしてお天道様の下に躍り出るのさ」
伝八「れ、れぶ~?ぷろだく?何だそりゃ?」
ヒナ「ゴリラには分かんねえよ」
伝八「お、キーキー鳴く元気が出て来たみてえだなあ」
ヒナ「がるるるる!」
伝八「ウホッ!ウホッ!ウホッ!」
蝶子「面倒くさがらず言葉を使え」
木場「あの・・・仕事の邪魔なんですけど」
木場「それ以前にここ、憲兵隊なんですけど」
木場「あの熟女って確か蓬莱街のヤクザじゃ」
最上「勝手にさせてりゃいい」
最上「三匹とも腹が減ったら巣に帰るだろ」
ヒナ「何だその言い草は!凹んでると思ったから様子見に来てやったのに!」
蝶子「そしてその様子見に付き合わされる保護者の身にもなってみな!」
ヒナ「まあ、かつての上司のあの体たらくを見たんだ。泣きたくなる気持ちも分かるけどよ」
蝶子「鬼の憲兵司令も、本当におっ死んじまったようだねえ」
「あははははははは!」
最上「あーうるさいうるさい放っておいてくれ!」
最上「何が新時代だ!」
最上「死ね!」
「お前が死ね!」
最上「うああああああーーーーーーーーーー!」
最上「帰る」
最上「木場曹長、後は宜しく」
最上「どけ!サル!」
最上「邪魔だ!オバサン!」
最上「帰る前に湯呑みは洗うこと!」
「・・・」
最上「ブース!」
ヒナ「あの刈り上げ・・・」
蝶子「今度会ったら沈めてやる・・・」
伝八「おいおい。アイツ随分情緒不安定になってねえか?」
伝八「冗談じゃねえぞ。これから本格的に活動家どもを締め上げようって時によ」
蝶子「ほう・・・そうなのかい?」
伝八「オオスギの死によって結社美しきけものは事実上解散。幹部どもは完全に行方をくらませている」
伝八「後に残ったのは有象無象ばかり」
蝶子「そりゃまた逆に厄介だね」
伝八「さらに厄介なのはここからだ」

〇ファンタジーの学園
  『ブルジョワの子息どもが復興と新時代の熱に浮かされて暴れ始めている』
  『始末に負えねえのがその(戦い方)だ』
  『手前らは一切手を汚さず、貧民達に援助と称して金をばら撒き手駒にしている』
  『自分たちの駒となった浮浪者や乞食を(自由の闘士)と呼び、まるでゲームの様に革命というお祭り騒ぎを起こそうとしてやがる』
  『顔も名も晒さずに自己顕示欲を満たし高みの見物を決め込む、新種の活動家たち。それこそがこれから起こるだろう騒乱の真の敵』
伝八「ヤツらを摘発する手段はただひとつ」
伝八「唯一『顔出し』で表舞台に立っているあの女を捕まえて、芋づる式に検挙することだ」
  『自由の女神。来栖川桜子』

〇役所のオフィス
伝八「元憲兵司令の令嬢をひっ捕らえれば、それより格下のブルジョワも逃げきれねえ」
伝八「都合のいいことに桜子の後ろ盾たる父親ももういねえ。後はタイミングだ」
伝八「自由の女神が貧民と一緒に事を起こす前に逮捕する。その協力をここの分駐所に依頼しに来たんだよ」
伝八「どうだ?手柄を立てるには悪い話じゃねえだろう。出世の糸口になるかも知れねえぞ」
伝八「・・・え?なんで泣いてんだ?」
伝八「感動?」
蝶子「な、わけないと思うよ」
蝶子「あまりの重大事項に心が折れかけてんじゃないかい?」
木場「すみません。お腹痛くなって来たので僕もこのへんで」
伝八「お、おい待てよ。話はまだ・・・」
蝶子「お前さん。今、聞かなかったことにしようとしてるだろう?」
木場「僕はね。軍人なんてなりたくなかったんですよ」
木場「親の命令で渋々やってるんですよ」
木場「本当は小説家とか詩人になりたいんです!」
「お前もか!」
木場「出世なんかしたくないです!もめ事になんか巻き込まれたくないです!」
木場「活動家の逮捕ならそっちで勝手にやればいいでしょう!男一匹ハミ○ンおじさん!」
伝八「はみ出しとらんわ!」
伝八「デカも消えてるし」
木場「僕は仕事よりも夢を追って生きていきたいんですよ!」
木場「あとお嫁さんじゃなくてパートナーとかが欲しいんですよ!」
木場「僕と同じ方向を向いてくれる同志(10~20代女子限定)募集中!」
木場「あ、時間だ。夜勤のみんな、後宜しくね」
「・・・」
(この国・・・滅ぶかもな)
ヒナ「さてと。ぐるっと神社回って帰るとすっか」
蝶子「そうかい。いいことだ」
ヒナ「一人で大丈夫だよ。それに」
ヒナ「また前みたいに踊れるようになるなんて、あんまり期待されても困るからさ」
伝八「何ていうか、大変な人生だな。あの娘も」
蝶子「大変慣れしちまってるとは言え、酷な運命だよ」
蝶子「それでも歩き出したのは『あの男』に会ったからかね」
伝八「え?」

〇荒廃した街
  『来栖川憲兵司令が生きてただと!?』
  『話せば長くなるし聞き終えたってあまりにも出来過ぎててバカバカしくなる』
  『つまりは、そういう顛末さね』

〇古びた神社
  『なるほど』
  『確かにそりゃあ、公表しようがねえ』
  『よほど来栖川に恨みでもあるか他人に鼻で笑われてもいいような人間以外は、聞き流すか肚に収めるに限る馬鹿話だ』
  『だがその生存はいずれ帝都全体の知る所となるだろうな』
  『陸軍に限って言えば、既に把握しているだろうよ』
  『そこさね』
  『憲兵司令でも河原者でもないバロン義孝なる男は、皮肉にも司令の名を騙る河原者として官憲に追われる身になった』
  『あるいは河原者として潜伏する憲兵司令と誤解され、活動家どもに狙われる身にもなった』
  『それで今は息を潜めて復活の機会を伺っているって訳か』
  『それはどうだろうね』
  『ああ?』
ヒナ「さてと・・・帰るか」
  『帰れ!来栖川義孝は死んだのだ!』

〇西洋風の部屋
義孝「我はクルちゃん!リバーサイドクイーン、ことダリア様の扶養家族である!」
  つづく

次のエピソード:さまよえる青白い鈍刀(1)

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