ヴィーガンやってみました(脚本)
〇焼肉屋
景気が悪い世の中でも、一生懸命働いていると、運が良い日もある
この日、私は仕事の関係で焼肉を食べに行く事になった。しかも自己負担無しで
お店は和牛の専門店。部署の垣根を越えて、意見交換を交わす人事交流が今回の目的
私は正直人見知りな性格だが、この手の集まりには積極的に参加をしている
心の何処かで、異性との交流を求めているから
ただし今回は、和牛の魅力が完全に上回っていた
〇焼肉屋
お店に入ると驚いた。壁に貼ってあるお勧めメニューは、どれも普段とても食べれるような金額ではなかったから
お店の中では座席がすでに決まっていた。各テーブル4人ずつ。そこに部署があまり固まらないようにセッティングされている
もっさりとした男性社員二人と、対象的な若い女性社員が同じテーブルのメンバー
もっさりおじさん達は、若い女性社員に興味津々なようだ
まぁ、おじさん達が若い女性の気を引くため、高いお肉を沢山注文してくれるので、都合は良かったけど
〇水玉2
私は良いお肉を食べた事がなかったのかもしれない。初めて食べる、とろけるような柔らかさ
それでいてお肉の味は、しっかり口の中に残っている。馴染みのある風味も全然違っていた
同じ人間でも私のような庶民とテレビに出ている女優さんは全然違う。私が今食べている牛は、アイドル的な牛なのかもしれない
私は周りの会話にはほとんど参加せず、絶妙なタイミングで焼肉を焼く係になっていた
会話に夢中のおじさん達と、魔法を帯びた見えないシールドで、上手く交わす新人社員。彼らには、この肉を任せられない
私は自分のために丁寧にお肉を焼いて、食べる量を調整しながら、したたかに周りの人のお皿に焼けたお肉を配っていた
さも周りに気を配っているかのように。ほとんど誰かとの会話はなかったが、お肉達とはたくさん会話を楽しんだ
お肉を楽しんだつもりだった
〇綺麗なリビング
家に帰ってからも、お肉の味の余韻は続いていた。しばらくは
ただ何故か変な罪悪感が混じってきた
とっても美味しかった和牛。きっと優しく丁寧に育てられていたのであろう
和牛達は美味しい餌を食べ、澄んだ空気の中でのびのびと暮らしていたのだと思う
きっと牧場で働いている人とも、親子のような信頼関係だったのかもしれない
それなのに、ある日お肉屋さんに売られて行く。後はその牛にとって最悪な結末が。私の頭の中ではドナドナが流れていた
ゴメンね牛達。私達のせいで、あなた達の信頼していた飼い主は、あなた達の気持ちを裏切る事になってしまったのです
お肉と一緒に嗜んだアルコールが、あまりにも美味しかったお肉にストーリーを与えたのだが、何故かバッドエンドになっていた
〇綺麗なリビング
翌朝の私は、前夜の焼肉にとても満足していた。おそらく私は今後、あれだけの美味しい和牛をあれだけ沢山食べる事はないだろう
ダイエットの事もすっかり忘れていた昨夜の私。これからまた元の生活に戻るのだ
今夜は何を食べようか・・・そんな事を考えていたら、頭の中でドナドナが流れ始めた
お肉は・・・しばらく止めようかしら。だからと言って魚もちょっと
ふと、最近テレビで見た、とあるベジタリアンの外国人の事を思い出した
その人は、近年の地球温暖化に対して、自分達にできる事、身近な事から改善していけるようにと始めたのだとか
頭の中で流れていたドナドナ。何とか市場に着く前に止める事ができそうだ。今夜からベジタリアンに挑戦してみよう
〇教室
インターネットで調べてみると、ベジタリアンにはいくつかの種類があった
まずはヴィーガン。肉・魚介類に加え卵・乳製品なども一切食べません。蜂蜜などの動物由来のものも食べないそうです
ちなみに、食用以外の革製品などの動物使用もしないようです。ヴィーガンは最近よく耳にする言葉だ
フルータリアンは「果実常食者」。収穫しても、その植物自体の命に関わらないフルーツやナッツ類を食べています。かなり過酷だ
オボベジタリアンは肉・魚介類・乳製品は食べませんが、植物性食品と卵は食べています。卵を食べれるのはなんかお得だ
ラクトベジタリアンは植物性食品・乳製品を食べるので、牛乳やチーズはセーフ。肉・魚介類はもちろうだけど、卵も食べません
オボラクトベジタリアンは植物性食品・卵・乳製品は食べれます。肉・魚介類は食べないけど、だいぶ初心者向けな感じ
ぺスコ・ベジタリアンは植物性食品・卵・乳製品・魚介類まで食べれます。肉は食べません。今の私の気持ちとは違うかな
ポーヨー・ベジタリアンは植物性食品・卵・乳製品・魚介類・鶏肉までも食べれるのだ。鶏肉以外の肉が食べれない食材
セミ・ベジタリアンは植物性食品をベースに食べますが、場合によっては肉類も食べるなど、柔軟性のある食生活をしている人の事
ちなみに日本の精進料理は、オリエンタル・ベジタリアンとも言われている
肉・魚・卵等の動物性の食材の他、煩悩を刺激する五葷(ごくん)と呼ばれるニラ・ニンニク・ネギ等一部の野菜も食べないのだ
かなりしんどそう
〇スーパーの店内
そんな訳でこの日は残業を避けて退社。そのままスーパーに寄った
結局私はよく耳にしていたヴィーガンを選択。とりあえずはタンパク質の確保から
基本は豆、日本は割と恵まれている。豆腐、油揚げ、厚揚げ、がんもどきと日本特有な食材は色々ある。精進料理のおかげのようだ
他に乾物コーナーには「大豆ミート」なるお肉の代理品があったので、それも一応購入した
ちなみに最近仲直りした納豆は、卵黄無しで食べる事が不安なので、今回は避ける事にした
〇綺麗なリビング
自宅に戻って早速調理。とりあえず油揚げとスライスした玉葱をみじん切りにしたにんにくと生姜と一緒に炒める
味醂と醤油で味付け。豚肉の生姜焼きに似せてみた。なので千キャベツもトッピング味噌汁は粉末の昆布出汁で作ってみた
思いの外、御飯との相性はよく、体の中にスーッと流れてきた。食べ終わってみると
何か不思議な感覚になった
なんか善人にでもなったような気分にもなっていた。この生活をしばらく続けてみる事に決めた
〇綺麗なリビング
翌朝はいつもよりも早く目が覚めた。消化が良かったようで、お腹が空いて目が覚めたのだ
予定していた朝食はご飯と冷奴、昆布出汁の野菜スープ
とりあえず空腹は満たされた
今週の昼食は全ておにぎりと軽く塩揉みした野菜の予定。おにぎりの具は、梅干し、ねぎ味噌、椎茸の甘煮等で考えている
〇小さい会議室
いつも通りの仕事。でも、いつもよりも早くにお腹が空いた
やっとのランチタイム。後輩達もそれぞれお弁当を持参していた
おにぎりを食べていると、いつも以上に人のお弁当が気になる。というより、お肉の香りに凄く敏感になっていた
〇綺麗なリビング
仕事が終わり自宅に戻る。この日はスライスした厚揚げを焼いて、複数のキノコを和風あんかけに。それらを丼にしたもの
美味しいけれど、エネルギーが足りない。お腹は空腹ではないのに
唐揚げや焼肉がとても恋しくなっていた
〇小さい会議室
4日が過ぎる頃には、かなり深刻になってきた
いつものランチタイム、日に日に濃く感じるお肉の香り。口の中からヨダレがこぼれそうで心配になった
自宅にいる時もしんどかったが、職場での昼食時は美味しい香りが漂っている。飢餓状態となり、禁断症状でも出そうな感じになった
〇綺麗なリビング
結局ヴィーガン生活は5日で幕を閉じた
肉や魚の美味しさを知ってしまっている私には、かなり難しい食生活だった
ただ解禁後のお肉、私は初めてありがたみを感じて感謝をした
続けていくのは難しいが、時々取り入れる事にした。食材への感謝を忘れないために