第三話『変わる』(脚本)
〇城の廊下
王宮内、お見合いの日ー
パパリィース「いたかい、ママ!?」
ママリィース「いいえ、パパ! 見つかりませんわぁ!」
パパリィース「まったくレイリィースの奴! いったいどこに行ったんだ!?」
ママリィース「向こうを探しましょう!」
パパリィース「うん!」
〇養護施設の庭
レイリィース「私は~かごの中のとり~・・・♪」
レイリィース「お空も飛べずに鳴いて~いる~・・・♪」
レイリィース「・・・」
レイリィース「私の・・・」
レイリィース「私の魅力凄すぎぃ・・・」
レイリィース(ダメですわ・・・)
レイリィース(どれだけあがいても、ダメダメですわ・・・)
レイリィース(どこに逃げても どんな策をろうしても)
レイリィース(結局、王子様が私の前に現れてこう告げてくる)
〇黒背景
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
〇養護施設の庭
レイリィース「はぁ・・・」
レイリィース「私はもう逃れられないのですね」
レイリィース「この『許連死飲』の流れから・・・」
レイリィース「何度繰り返しても、何度繰り返しても・・・」
レイリィース「運命からは逃れられませんのね・・・」
レイリィース「この世界は地獄・・・」
レイリィース「まさしく生き地獄ですわ」
レイリィース「神様、私が何をしたって言うのですか」
レイリィース「このいたいけで美しいレイリィースが一体何を・・・」
ザッザッザッザッ!
「ほう、この俺とのお見合いから逃げ出してどこかに隠れてる奴がいると聞いてはいたが・・・」
レイリィース(また来た・・・)
「おもしれー女じゃねーか、気に入ったぜ!」
クロムウェル「ああん?」
レイリィース「お前、俺の婚約者になれよ?」
レイリィース「でございますか?」
クロムウェル「・・・」
レイリィース「王子様、あなたは素晴らしいお方ですわ」
レイリィース「眉目秀麗で」
レイリィース「文武両道で」
レイリィース「博学多才で」
レイリィース「剛毅果断」
レイリィース「まさしく国を背負って立つべきお方」
レイリィース「文句のつけようのない王子様ですわ」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「てめぇ何が言いたいんだ?」
レイリィース「分かりませんの?」
レイリィース「これからこの私が」
レイリィース「そんなあなたに文句をつけると言ってるのですわ!!」
クロムウェル「ああ?」
レイリィース「クロムウェル王子!」
レイリィース「はっきり言ってあなた最低ですわ!!」
クロムウェル「なんだと?」
レイリィース「最低だって言ったんですわ、この女たらし!!」
レイリィース「あなた、人の気持ちとか考えたことありまして!?」
レイリィース「こんな大規模なお見合い開いてどうなるか考えもしなかったんですの!?」
レイリィース「ご令嬢方の気持ちを少しは想像してごらんなさい!」
〇城の会議室
憧れの王子様とお見合いして、真正面から会話して!
〇城の会議室
もしかしたら、自分が婚約者に選ばれるかもしれないと胸を高ぶらせた方々のことを!
〇黒背景
そして自分が選ばれずに絶望する方々のことを!!
〇養護施設の庭
レイリィース「あなた、ちょっとでも想像したことがございまして!?」
レイリィース「そんな彼女たちの気持ちが少しでも分かりまして!?」
レイリィース「あなたのことを想い、夜寝る前にその顔を思い浮かべ!!」
レイリィース「思わず頬を赤らめてしまう方々のことが、少しでもあなたに分かりまして!?」
レイリィース「分からないでしょうね!」
レイリィース「分からないからこんなバカな催しを開くんですの!!」
レイリィース「分からないから国中のご令嬢が集まるお見合いなんて企画してしまいますの!!」
レイリィース「分からないからおもしれー女とか言って結婚相手を選ぶんですの!!」
レイリィース「分からないから!分からないから!!」
レイリィース「分からないから・・・!!」
レイリィース「分からないから・・・こんな、こんな・・・」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「おい」
レイリィース「触らないでくださいまし!」
クロムウェル「・・・」
レイリィース「失礼いたしますわ」
レイリィース「ごきげんよう」
クロムウェル「・・・」
近衛兵「あぁ、王子。 ここにいらっしゃいましたか」
近衛兵「何をされていたのです? 何やら大きな声が聞こえましたが・・・」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「女に怒られてた」
近衛兵「じょ、女性に?あなたが?嘘でしょう?」
クロムウェル「ほんとだ」
クロムウェル「メチャクチャに罵倒された」
近衛兵「えぇ・・・」
近衛兵「あ~、それはその・・・」
近衛兵「なんと言うか・・・」
近衛兵「ど、どんな・・・女性だったんですか?」
クロムウェル「おもしれー女・・・」
クロムウェル「いや」
クロムウェル「ぶっとんだ女だ。ぶっちぎりでな」
近衛兵「はぁ?」
〇闇の要塞
〇牢獄
執行人「時間だ。飲め」
レイリィース(・・・)
レイリィース(またこれですわ・・・)
レイリィース(『婚約者にならないように逃げる』ってのはダメですわね)
レイリィース(いい加減、そうなるのは確定事項として、その後どうするかを考えるべきかしら)
レイリィース(婚約者になってから捕まるまでは10日間)
レイリィース(その間に逃げる?)
レイリィース(・・・)
レイリィース(ダメですわね。 指名手配されて一生ネズミのように逃げ回るなんて流石にごめんですわ)
レイリィース(結局、暗殺未遂犯として告発されること自体をどうにかしないと・・・)
レイリィース(となるとご令嬢方の説得を―)
レイリィース(たったの10日間で私を憎む十数人以上のご令嬢方を説得?)
レイリィース(ムリムリムリのカタツムリですわ・・・)
レイリィース(となるとー)
執行人「早くしろ。 それとも無理やり飲まされたいのか?」
レイリィース「あー、はいはい。 分かりました、分かりましたわ」
レイリィース「杯をくださいな」
執行人「フン!」
レイリィース(まぁ考える時間は山ほどありますわ)
レイリィース(次のループか 思いつかなければその次にでもゆっくり考えて)
レイリィース(なんなら、ほんとにクーデターでも起こしま)
レイリィース「・・・」
レイリィース「ん?」
レイリィース「んんんん?」
レイリィース「こ、この香り・・・」
レイリィース「そんな・・・ま、まさか!?」
執行人「何をしている。速く飲め!」
レイリィース「お、お待ちくださいな!」
レイリィース「こ、このワイン! このワインの銘柄は何ですの!? どこの何年物ですの!?」
執行人「ああん?」
レイリィース「人生最後に飲むワインですもの! それぐらい聞いても構わないでしょう!?」
執行人「・・・チッ」
執行人「シャルノー・ラノワール。 83年物だ」
レイリィース「ラノワールの83・・・」
レイリィース「私の」
レイリィース「私の好きな・・・」
レイリィース「なんで・・・」
執行人「おら! もういいだろう?さっさと飲め!」
レイリィース「おま、お待ちになって!」
レイリィース「な、なんでラノワールなんですの!?」
レイリィース「前はメトゥールだったはず!?」
レイリィース「なんで今回に限って!?」
執行人「前だぁ?」
執行人「何を言ってるか知らんが、それは第二王子が直々に選ばれた物だ」
レイリィース「お、王子様が!?なんで!?」
執行人「知るか!」
執行人「そら!いい加減に飲め!」
レイリィース「ちょ、おまっ!」
レイリィース「お待ちに!お待ちになって! も、もう少し情報を!」
執行人「もう死ぬんだから必要ないだろ! そら!口開けろオラァ!」
レイリィース「おや、おやめになっ!?」
ゴブゴホゴクゴボッゴクッ!
レイリィース「ゴホッ!ゴホゴホッ!」
レイリィース「うっ!」
レイリィース「ぐうぅっ!?」
レイリィース「ううううっ!?」
レイリィース「グハァッ!!」
執行人「・・・」
執行人「死んだか」
レイリィース「死ねませんわぁ!!」
執行人「うわああおおお!!」
執行人「おまっ、ななななんで!? 量が少なかったか!?」
レイリィース「は、早く言いなさい!!」
レイリィース「な、なんで王子様がワインを選んだのか!」
執行人「し、知らねぇよ!」
レイリィース「そんな答えが聞きたくて生き残ってるわけじゃありませんわぁああ!!」
執行人「ヒィイイッ!」
レイリィース「うっ!!」
レイリィース「ゴハァッ!!」
執行人「・・・」
執行人「今度こそ死んだか・・・?」
レイリィース「ド根性おおおおお!!」
執行人「ぎゃわああああ!!」
レイリィース「いい、いいいから吐きなさい!」
レイリィース「さもなきゃ一生死にませんわよ!!」
執行人「え、えええええっと」
執行人「確か、なんだっけ・・・」
レイリィース「フゥー!フゥー!」
執行人「そ、そうだ!」
執行人「確か『一時でもこの俺の婚約者だった女だからな』 とか言ってたって聞いた気が・・・」
レイリィース「婚約者?」
執行人「あ、あああ! 聞いた話だと、そう言ってたそうだ!」
レイリィース「なるほど・・・」
レイリィース「ありがとうございました」
レイリィース「ご面倒おかけいたしましたわね」
執行人「い、いえ・・・お気になさらず・・・」
レイリィース「それでは・・・」
レイリィース「ゴバァッ!!」
執行人「・・・」
執行人「流石に死、死んだよな?」
カタッ
執行人「ひひいいいいい!!」
ネズミ「キィッ!」
執行人「クソッ!! ビビらせんじゃねぇ!!」
〇黒背景
〇立派な洋館
〇貴族の部屋
ゴー
レイリィース「ハッ!?」
レイリィース「も、戻りましたのね!」
レイリィース「よ、よし!」
レイリィース「さっそく状況を整理いたしますわよ!」
レイリィース(もう何ループ目か、正確には覚えておりませんが)
レイリィース(十数回も繰り返されてきたこの絶望的な繰り返しの中でやっと!)
レイリィース(未来が・・・)
レイリィース(未来が変わりましたわ!!)
コンコン。
レイリィース(死ぬ時、いつも同じ銘柄だったワインが初めて変化した!!)
レイリィース(私の好きなワインに!)
レイリィース(シャルノー・メトゥールからシャルノー・ラノワールに変化した!)
レイリィース(しかも、それを選んだのが王子様!!)
レイリィース(『一時でもこの俺の婚約者だった女だからな』 と言う言葉と共に自分自身で選ばれた!)
レイリィース(つまりこのループを解消するカギは・・・)
レイリィース「クロムウェル様にあるんですわぁ!!」
セバスチャン「あ、あの、お嬢様?」
レイリィース「静かに!」
セバスチャン「は、はぁ」
レイリィース(何故、王子様が急にワインを選んだのか・・・)
レイリィース(理由は前のループでの私の行動にあるはず・・・!)
レイリィース(前のループで私がしたことと言えば・・・)
〇養護施設の庭
レイリィース「そんなあなたに文句をつけるって言ってるのですわ!!」
レイリィース「はっきり言ってあなた最低ですわ!!」
レイリィース「最低だって言ったんですわ、この女たらし!!」
レイリィース「触らないでくださいまし!」
〇貴族の部屋
レイリィース「・・・」
レイリィース「・・・」
レイリィース「王子様ってドMですの?」
レイリィース「いや・・・流石にそれは・・・」
レイリィース「でも・・・」
レイリィース「・・・」
レイリィース「試してみますか・・・」
三回目生き返った時、やっぱりって大笑いしました🤣
王子様はそんなに彼女を気に入ってるなら最期まで信じてあげてほしかった。
これから変わっていくのだろうと期待しています。
ループをみるのが癖になってきました。読んでて楽しいです。少しずつ解けているのか解けてないのか変わっていく謎。次も楽しみです。
これ読んだ後は妙にワインが飲みたくなりますね。