鏡よ鏡(脚本)
〇空
?「・・・・・・・ぃ・・・・・」
え?
! !
後ろに引かれる感覚と共に体が傾く。
本当に一瞬がスローモーションのように感じられるものなのだと、真っ青な空を眺めながらフリージアは思った。
倒れる──!
無意識に体はバランスを取ろうとして、びくりとはねる。
〇黒
〇書斎
! !
体が芝生に打ち付けられるのを覚悟した。
・・・・・・が、気付いたらベッドに横たわっていた。
見上げているのは、青空ではなく、白い天井だ。
本棚を埋め尽くし、床にまで積み上げられた大量の漫画本。本が日焼けをしないように締め切られた遮光カーテン。
入学祝いに伯父さんから買ってもらった勉強机。お世辞にも綺麗とは言えない部屋。
ここは・・・・・・
私の部屋だ。それも実家の。
・・・・・・夢?でもなんで実家に?
ぎしっとベッドのスプリングの軋む音を立てながら重い体をなんとか起こし、真っ暗な部屋を出る。
どこに何を積んであるのか、自分には分かりやすい配置になっている。加えて今は、暗闇に目が慣れている状況だ。
大量の物に足をぶつけることなく入り口まで辿り着くのは、実に容易いことだった。
〇部屋の扉
う、眩しい・・・
暗闇に慣れた目に朝の光が刺さる。思わず身じろぐと、ぎしっと床板が鳴った。
2階に他の人の気配は感じられないが、いつものくせでなんとなく足音を消して歩く。
〇部屋の前
廊下
〇一階の廊下
階段
〇綺麗なダイニング
そして、リビング
何一つ、記憶と変わらない景色が広がっている。
母「あら、今日は早いのね」
母「先にご飯食べちゃったわよ」
母「残り物だけど食べたら?」
う、うん
一度かけたラップを外して、テーブルの上に皿が並べられる。
いつもの席に座り、母にも変わりはなさそうだとぼんやり考えながら胃に物を詰め込んで行く。
〇おしゃれなキッチン
ご馳走様・・・
母「一緒に洗うから、そこに置いて置きなさい」
ありがと
母「なんだか眠そうな顔してるわね。昨日も夜遅かったの?」
母「ほら、顔でも洗ってさっぱりしてらっしゃい」
分かった
〇白いバスルーム
?
きょろきょろ
すぅ・・・
???「えーー?!」
え?????
・・・これは誰?私?私がこれ?え?なんでこんな太って?え?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでな
〇白いバスルーム
・・・・・・
母「大きい声出してどうしたの?」
・・・・・・
母「ねぇ、どうしたの?」
鏡を見たまま動かない娘を心配してかお母さんが肩を掴み、揺さぶっているのは分かる。
しかし、あまりのことに現実を受け止められずにいた。
・・・んで・・・・・・私、フリージア・・・
母「そう・・・・・・」
母「あなたにはきちんと全てを話さなければいけないみたいね・・・」
・・・・・・話・・・?
母「そう、話」
母「ここじゃなんだから、ソファで座って話しましょう」