幸せは家族のかたちをしていない

白星ナガレ

Ep.2 協力者(脚本)

幸せは家族のかたちをしていない

白星ナガレ

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〇黒背景
  ”明日から、
   新家族適合法が施行されます”
  そのニュースを見たとき、笑った
  こんなのうちには関係ない、って

〇飾りの多い玄関
早苗「なにかの間違いです! 帰ってください!」
スーツの男「いえ、合ってます 土岐さんのお宅って仰りましたよね?」
早苗「でも、うちが家族ガチャなんて──」
「どうした?」
早苗「和樹!」
早苗「この人が変なことを──」
スーツの男「土岐 和樹さんですね」
スーツの男「新家族適合法はご存知ですね?」
和樹「え・・・ 家族ガチャのことですか?」
スーツの男「ええ、その通り・・・ 家族ガチャとはよく言ったものです」
スーツの男「”合わない”家族を再構成し ”適合”させる施策・・・」
スーツの男「対象者からしたらランダムで 家族を割り振られる気分ですからね」
スーツの男「ガチャと呼ばれるのも納得です」
スーツの男「土岐さん宅の三名は対象になりました ので、お迎えに参りましたよ」
早苗「うちが対象なんて・・・」
早苗「そんなわけないじゃない! だって──」
早苗「家族の誰かが希望しなきゃ 対象にはならないんだから!」
スーツの男「・・・ええ、本当に、その通り」
スーツの男「まさに希望が出されたんです」
早苗「だ、誰から・・・」
スーツの男「それは──」
和樹「僕だよ」
早苗「・・・え? なんて・・・言ったの?」
和樹「・・・僕が希望を出した」
早苗「──なんで・・・」
早苗「・・・なんで・・・」
スーツの男「・・・それでは、時間がないのでね 一緒に来ていただきますよ」
スーツの男「まずは早苗さん、あちらの車へ──」
早苗「嫌! こんなのおかしい!」
早苗「なんでよ和樹! なんで家族ガチャなんか──!」
風夏「お母さん・・・?」
早苗「風夏! そうよ私、風夏に謝りたくて──」
スーツの男「早苗さん! 早くしてください!」
スーツの男「ちょっと失礼しますよ!」
早苗「やめて! 触らないで!」
和樹「早苗・・・」
早苗「嫌! 和樹、風夏! 私・・・私たちは──!」
「・・・」

〇おしゃれなリビング
早苗(和樹、風夏・・・)
早苗「私たちは、家族じゃないの・・・?」
「私たちは、家族だよ!」
芽衣香「でしょ? ママ!」
早苗「・・・私たちは家族じゃない」
早苗「こんなの、家族なんて認めない」
早苗「こんなの、ちっとも幸せじゃない」
芽衣香「へぇ~! やっぱり、家族は幸せであるべき?」
早苗「家族こそが、家族だけが、 私の幸せだったの」
芽衣香「ふーん、でもさ」
芽衣香「その家族の誰かが望んだから ママの元家族はバラバラになったんでしょ」
芽衣香「その誰かは── 幸せじゃなかったんだね」
芽衣香「幸せだと思ってたのはママだけ──」
芽衣香「だったりして?」
早苗「そんなわけない・・・ みんな幸せだったもの」
早苗「きっと何かの間違いよ・・・」
芽衣香「誰が望んだか、ママは知ってるの?」
早苗「・・・」
芽衣香「ね~また無視?」
芽衣香「・・・あ、でも、ママは 前も娘がいたんだっけ」
芽衣香「じゃ、その娘が希望したのかぁ」
早苗「・・・どうしてそうなるのよ」
芽衣香「え~? だってそれはさ、家族ガチャが 誰のためにあるのかって話じゃん」
芽衣香「そんなの、 一番は子どものためだし」
芽衣香「親ガチャって言葉、流行ったよね~」
芽衣香「あと、毒親、とかね」
芽衣香「ママはどうだった?」
芽衣香「自分がどんな親だったと思う?」
早苗「・・・」
早苗(風夏・・・)
早苗「・・・少なくとも、あなたなんかに 心配されるような親じゃなかったわ」
芽衣香「へぇ、そうなんだ!」
芽衣香「じゃあ今度も、新しい娘のために 素敵なママになってね🖤」
芽衣香「私たち、幸せな家族になろうね!」
早苗「お断りよ」
芽衣香「はいはい、ママったら照れ屋さん🖤 じゃ、私出かけるからまたね~」
早苗(家族ガチャ・・・)
早苗(そんなわけのわからないことで──)
早苗(私の家族を奪うなんて・・・!)

〇黒
  私は、絶対に取り戻す──
  私の家族を、私の幸せを、
  私の選んだ、私だけの幸せを──
  奪われたままなんて、絶対に許さない

〇ゆるやかな坂道
早苗(・・・和樹、家族ガチャを希望したなんて 言ってたけど、そんなはずないわ)
早苗(本当のことを確かめなきゃ・・・)
早苗「私たちは、幸せだもんね? 和樹、風夏・・・」
早苗(・・・まずは風夏・・・)
早苗(風夏を見つけて、 一緒に和樹のところに行こう・・・!)
早苗(学校も職場も変えて、前の家族とは 接触禁止なんて言われたけど──)
早苗(風夏にはあれを持たせたもの・・・ すぐ見つけられるわ)
早苗(そうそう、このアプリで・・・)
早苗「待っててね、風夏、今──」
「お、ストーキング行為?」
早苗「あ、あなた・・・」
正宗「いーねぇ~ 相変わらず家族愛を感じるよ」
正宗「それ、知ってるぜ」
正宗「追跡アプリだろ 家族に”お守り”でも持たせた?」
早苗「・・・どうして知ってるのよ 大体、なんでここに・・・」
正宗「あ~バッグの底、見てみ」
早苗「バッグ?」
早苗「なによ、これ・・・」
正宗「いやいや、知ってるっしょ? あんたも同じの持たせてんだろ、家族に」
正宗「お守り型のGPS・・・ スマホの画面、その追跡用アプリじゃん」
早苗「なんであなたがこれを私に──」
正宗「そんなに怒るなって! 同じことしただけじゃん!」
正宗「俺もサチコと同じ気持ちなんだよ」
早苗「はぁ?」
正宗「家族が大好き! 家族が大切! だから手放したくない!」
正宗「てことで、サチコの居場所も 知りたくなっちゃってんの」
早苗「・・・頭おかしいんじゃない?」
早苗「私たちは家族でもなんでもないの ただ集められただけの他人」
早苗「互いを選んだわけでもなく ただ偶然そうなっただけよ」
正宗「そう思うんなら思えばいい ただ俺はサチコのこと大切にするぜ」
正宗「せっかく家族になったんだし」
正宗「それに俺、好きなんだよね~」
正宗「必死な奴」
正宗「応援したくなっちゃうじゃん? てことで──」
正宗「俺、協力することにしたから」
早苗「・・・協力? 私に?」
正宗「そ! なんでも言えよ~」
早苗「・・・意味がわからない なんであなたが私に協力なんか・・・」
正宗「いやいや、今言ったじゃん」
正宗「俺は、あんたみたいな 必死な奴が好きなの」
正宗「だから、協力する」
早苗「信じられるわけないでしょ 会ったばかりの他人なんか」
正宗「そう来ると思った!」
正宗「じゃ、こーしよう」
正宗「俺が協力する代わりに あんたは俺の言うこと一つ聞いて」
正宗「もちろん、後払いでいいよ あんたが家族を取り戻してからで」
正宗「こういう理由があればどう? 少しは信用できるっしょ?」
早苗「私に何のメリットがあるのよ」
正宗「だーかーら、協力するって 言ってるじゃん!」
正宗「俺はなかなか優秀だぜ~?」
正宗「はい、これ」
早苗「・・・なによ」
正宗「あんたが追跡してたお守り」
早苗「えっ── なんで、それがここに・・・」
早苗「風夏に持たせたはずよ・・・」
正宗「さっき、女の子がゴミ箱に捨ててた」
正宗「やっぱりあれが風夏ちゃんね」
正宗「俺なら、今の風夏ちゃんの学校も 一緒にいた友達もわかるけど?」
早苗「・・・」
早苗「・・・わかった 協力してもらうわ」
正宗「そう来なくっちゃ~」
早苗(何が目的か知らないけど・・・ 使えるって言うなら利用させてもらうわ)
早苗「とりあえず一つ聞いてくれる?」
正宗「はいはい、なんなりと?」
早苗「私の名前はサチコじゃなくてサナエ」
正宗「なーんだ、そんなのわかってるよ サナエね、サナエ! りょーかい!」

コメント

  • 一話のラストが衝撃的で続けて読ませていただきました!
    家族ガチャ……実際にこんな制度があったら怖いですね。
    自分は幸せだと思っていても家族からしたらそうじゃない。合うもの同士で構成されれば良いですが、ガチャなんてうまくいかないですよね。特に早苗は家族にだいぶ愛着があるみたいですし。そして正宗もヤバそうなやつですね。早苗、どうなっちゃうのでしょうか……😱

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