黄金の蟻

ジョニー石倉

エピソード5(脚本)

黄金の蟻

ジョニー石倉

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〇たこ焼き屋の厨房
「おい、まだかよー」
中杉銀太「すみません。少々お待ちを」
中杉銀太「おう! やっぱ敏郎じゃないとダメだな。 俺じゃ遅くて。見ろ、この行列を」
  店の前には長蛇の列が出来ている。
中杉銀太「こりゃあ、恵比寿じゃなくて、ここの隣に店出した方がいいんじゃ——」
円城寺敏郎「店長! 俺いかなきゃ」
中杉銀太「あ? 何言ってんだ?」
円城寺敏郎「今マネージャーから電話あって。 演者の乗ってる新幹線が止まって来れなくなったから、代役で来れないかって」
中杉銀太「馬鹿なこと言ってんじゃねえ!」
中杉銀太「ほれ、手が空いてるなら手伝え。 客が待ってるぞ」
円城寺敏郎「台詞(セリフ)付きなんです!」
中杉銀太「うるせえ! そんなこと知ったことか! 今はこっちの仕事入ってんだ」
中杉銀太「社会人ならそんな当たり前のことわかんだろ」
円城寺敏郎「社会人じゃないっす」
中杉銀太「あ?」
円城寺敏郎「さっき店長言ったじゃないっすか。 俺はまだ社会人じゃないって」
中杉銀太「そんなこと言ったか?」
円城寺敏郎「言いました」
中杉銀太「まあ、そんなことはどうでもいい。 それよりも早く手伝え。客待たせんな」
円城寺敏郎「俺、行きますんで」
中杉銀太「なんだと? お前がいなくなったら、ここどうするんだよ」
円城寺敏郎「店長がいるじゃないっすか」
中杉銀太「馬鹿野郎。俺はこの後、恵比寿の新店——」
円城寺敏郎「俺にめぐってきたチャンスなんです! これ逃したら、一生後悔すると思うんです」
中杉銀太「・・・・・・」
中杉銀太「もう一度だけ言うぞ。手伝え」
円城寺敏郎「嫌です。行きます」
中杉銀太「行ったらクビだぞ」
円城寺敏郎「・・・クビで構いません」
中杉銀太「なっ」
円城寺敏郎「俺・・・」
円城寺敏郎「俺、たこ焼き焼くために東京来たんじゃないんです!」
中杉銀太「てめえ・・・」
円城寺敏郎「今までお世話になりました!」
中杉銀太「おい、コラ!」

〇電車の中

〇空

〇駅の出入口
円城寺敏郎「ん? 雨?」

〇高層ビルの出入口
  激しい雨が降り続く。
  撮影スタッフは機材の片付けを始めており、
  祐子もそれを手伝っている。
円城寺敏郎「はぁ・・・はぁ・・・」
円城寺敏郎「おはようございます!」
丸山祐子「おはよう。悪いね。急に呼び出しちゃって」
円城寺敏郎「いえいえ、こちらこそ呼んでくれて感謝っす」
円城寺敏郎「で? どんな役っすか? 俺の役」
丸山祐子「その・・・」
丸山祐子「・・・ごめん! 円城寺」
  顔の前で手を合わせる祐子。
円城寺敏郎「どうかしたんすか?」
丸山祐子「今日バラシになっちゃった。 せっかく来てくれたのに、申し訳ない」
円城寺敏郎「なんでですか?」
丸山祐子「雨、止みそうにもないから。 撮影は明日に延期だって」
円城寺敏郎「えっ、そうなんすか。 ちょっと待ってくださいね」
円城寺敏郎「明日のスケジュール確認するんで」
丸山祐子「その件なんだけど・・・」
円城寺敏郎「?」
丸山祐子「明日の撮影には今日来れなかった佐伯が出るの」
円城寺敏郎「いやいやいや。 いくらなんでもそれはないでしょう」

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