第二話『おもしれーのはどっち?』(脚本)
〇黒背景
憎い。
憎い憎い憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い──
憎い!!
絶対に
許さない。
〇貴族の部屋
近衛兵「レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード!!」
近衛兵「貴様! クロムウェル様の婚約者でありながら、外国と通じて国王陛下の暗殺を企てたな!」
レイリィース「し、してませんわ! 何かの誤解ですわ!!」
近衛兵「嘘をつくな!証拠は既に挙がっている!」
近衛兵「お前の筆跡の密書も、暗殺用の毒薬も、スパイと密会した目撃証言もあるんだぞ!」
近衛兵「逃げられると思うな!」
レイリィース「周到な計画過ぎて若干引きますわ!?」
近衛兵「自画自賛か貴様ぁ!」
近衛兵「捕らえろ!」
レイリィース「ち、違いますわ!」
レイリィース「私を殺そうとするご令嬢方のガチ―― ムギュウ!」
近衛兵「連行しろ!」
〇法廷
裁判長「――以上の証拠により! 被告人が国王暗殺を目論んだことは明らかである!」
裁判官「異議なし!」
検察官「異議なし!」
弁護人「異議ナーシ!」
レイリィース「異議あり!異議あり! 異議、大ありですわ!」
レイリィース「陰謀が! 私を取りまく陰謀がありましてよぉ!」
レイリィース「だいたい弁護人まで異議なしとか どう考えてもおかし―」
裁判長「被告人の異議は認めない!」
裁判長「判決は有罪!」
裁判長「国家反逆罪により死刑に処す!」
裁判長「監獄に連れていけ!」
レイリィース「あんまりですわああ!!」
〇闇の要塞
〇牢獄
執行人「時間だ。飲め」
レイリィース「・・・」
執行人「早くしろ。 それとも無理やー」
レイリィース「どうしてこうなりますのおお!!」
ゴクゴクゴクゴクッ!
執行人「なぁッ!?」
レイリィース「うっ!」
レイリィース「ぐうぅっ!?」
レイリィース「グハァッ!!」
執行人「し、死んだ・・・」
執行人「へ、へっ、売国奴の魔女め。 ビビらせやがって」
〇黒背景
〇立派な洋館
〇貴族の部屋
ゴーン、ゴー
レイリィース「ハッ!?」
レイリィース「も、戻ってまいりましたのね」
レイリィース「またあの日に・・・」
コンコン
レイリィース「・・・お、お入りなさい」
セバスチャン「おはようございます、お嬢様」
セバスチャン「よく眠られましたでしょうか?」
セバスチャン「本日は、大事な大事な『お見合い』の―」
レイリィース「静かに、爺や!」
セバスチャン「あ、は、はい」
レイリィース(・・・)
レイリィース(ま、まさか黙ってるだけでも婚約者になれるなんて・・・)
レイリィース(自己紹介しただけで婚約者になれた時も思いましたが・・・)
レイリィース(・・・)
レイリィース(私の魅力ってば凄すぎますわね!)
レイリィース(怖い、怖いですわ!)
レイリィース(王子様を一瞬で魅了してしまう自分という人間が恐ろし過ぎますわ!)
レイリィース(間違いなく王国一番の貴族令嬢ですわぁ!)
レイリィース(でも・・・)
レイリィース「今回はそれじゃダメなんですわぁ・・・」
セバスチャン「お、お嬢様?」
レイリィース「静かに!」
セバスチャン「は、はぁ・・・」
レイリィース(喋ってもダメ、黙ってもダメとなると残る選択肢は一つ!)
レイリィース(お見合いに行かないことですわ!)
レイリィース(でも仮病のような手段はダメ!)
レイリィース(予定がズレるだけですからね!)
レイリィース(となれば私が今すべきことは)
レイリィース(・・・)
レイリィース「爺や」
セバスチャン「はい。なんでしょう?」
レイリィース「私、家出しますわ」
セバスチャン「はぁ、家出を・・・」
セバスチャン「・・・」
セバスチャン「ん?今なんと?」
レイリィース「家出すると言いましたの」
レイリィース「追ってこないでくださいましね」
セバスチャン「・・・」
セバスチャン「はぁ!? お、お嬢様、いったい何を言って!?」
レイリィース「それじゃ、爺や」
レイリィース「おさらばですわ!」
セバスチャン「ちょまぁ!!」
セバスチャン「おおま、お待ちください! お嬢様ぁ!!」
〇結婚式場の階段
レイリィース(ごめんなさい、お父様、お母様、爺や)
レイリィース(これしかないんですの)
レイリィース(私の満ち溢れる魅力のせいで、王子様に出会った瞬間、私は婚約者になってしまう)
レイリィース(なら、もう意地でも出会わないしかございませんわ!)
レイリィース(地の果てまでだって、王子様が別の婚約者を指名するまで逃げきって見せますわ!)
レイリィース「とりあえず! まずは資金と着替えの調達ですわねぇ!」
〇外国の田舎町
五日後。
農家「いや~、今日はいい天気だべなぁ」
レイリィース「ほんとですわぁ。 いいお天気でお野菜さんも嬉しそうですわぁ」
農家「おめさんも働き者だぁ」
農家「突然手伝わせてくれって言われた時はびっくりしたがぁ」
農家「よう手伝ってくれて助ってるわぁ」
農家「うちの孫にも見習ってほしいだよぉ」
レイリィース「オーホッホッホッ! 褒めても何も出ませんことよ?」
レイリィース(完璧・・・)
レイリィース(完璧ですわ・・・)
レイリィース(今の私は誰がどう見ても どこにでもいる農家の美人過ぎるお姉さんですわ)
レイリィース(これなら追手も私だと気づかないはず!)
レイリィース(そしてこのままあと十数日でもやり過ごせば)
レイリィース(周りに急かされて、王子様も婚約者を選ばざるをえない!)
レイリィース(そうなれば私は生き残れる!)
レイリィース(未来に一歩踏み出せる!)
レイリィース(完璧な計画ですわ!!)
レイリィース「オーホッホッホッホ!」
「おっと、旨そうな野菜がなってるじゃねーか」
レイリィース「あらぁ、見る目があるお方ですわね」
レイリィース「ここのお野菜はマヒキタおじ様が丹精込めて作り―」
レイリィース「げぇ!?」
「ほう」
「この俺に向かっていきなり『げぇ!?』だと・・・」
レイリィース「あ、ああなた様は!? いいいや、まさか!?」
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース「ク、クロムウェル様!?」
レイリィース「な、なぜ!?どうしてぇ!?」
レイリィース「どうしてこんな片田舎に!?」
クロムウェル「この俺とのお見合いから逃げ出したおもしれー女がいると聞いてな」
クロムウェル「少し探させてもらったぞ」
レイリィース「ああ、ああああ!?」
クロムウェル「あん?」
レイリィース「あんまりですわぁ!?」
〇黒背景
「―絶対に許さない」
〇貴族の部屋
近衛兵「―連行しろ!」
〇法廷
裁判長「ー死刑に処す!」
〇牢獄
執行人「時間だ。飲め」
レイリィース「どうしてこうなりますのおおおおお!!」
ゴクゴクゴクゴクッ!
レイリィース「グハァッ!!」
〇黒背景
〇立派な洋館
〇貴族の部屋
ゴーン
レイリィース「ハッ!?」
レイリィース「も、戻ってきましたのね・・・!」
コンコン
レイリィース「ち、近場はダメですわ」
レイリィース「もっと、もっと遠くに逃げないと!」
セバスチャン「失礼いたします」
セバスチャン「お嬢様、ご機嫌―」
セバスチャン「・・・」
セバスチャン「お嬢様?」
〇雪洞
レイリィース「オーホッホッホッホ!」
レイリィース「国境際の雪山まで逃げてきましたわ!」
レイリィース「こーんな所に来ようとする王族がおりまして?」
レイリィース「いーえ、おりませーん!」
レイリィース「王子が来ようとしても部下の方々が全力で止めてくださいまーす!」
レイリィース「完璧!」
レイリィース「完璧な避難場所ですわぁ!」
レイリィース「あとはここでしばらくキャンプでもしてればそれで問題なしですわ!」
レイリィース「さーて、本日は川の罠にかかった魚を煮込んじゃいますわよぉ!」
レイリィース「貴重なエネルギー源! 貴重なエネルギー源ですわぁ!」
レイリィース「食事が終わったら木を乾かしてぇ!」
レイリィース「新しい罠もしかけてぇ!」
レイリィース「あーもう! やることがてんこ盛りですわぁ!」
レイリィース「もっと人手が欲しいですわねぇ!」
兵士A「失礼します!木材を集めてまいりました!」
レイリィース「あら、ありがとう。いい枝ですわね」
レイリィース「そちらにまとめておいていただけます?」
兵士A「了解!」
兵士B「失礼します! 自分、食料の調達に行ってまいります!」
レイリィース「あっ、助かりますわぁ!」
レイリィース「東の斜面は雪が緩んでるから お気をつけてぇ!」
兵士B「了解!」
レイリィース「・・・」
レイリィース「ん?」
レイリィース「んんん?」
「ほう、この俺とのお見合いから逃げ出して雪山に籠ってる奴がいるとは聞いていたが・・・」
レイリィース「こ、この声!?そ、そんな!?まさか!?」
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース「う、嘘でございましょうおお!?」
レイリィース「な、なんで!? なんでここにクロムウェル王子が!?」
レイリィース「どうして!?一体どうやって!?」
クロムウェル「歩兵隊の抜き打ち特訓の予定があってな」
クロムウェル「その目的地をわざわざここにしたんだよ」
クロムウェル「おもしれー女に会えると思ってな!」
レイリィース「おもしれーのは あなたの脳みそですわぁ!?」
レイリィース「はっ!?」
レイリィース(し、しまった! つい思ってもいることを言ってしまいましたわ!?)
レイリィース(い、いや、でもこれは逆にチャンス!)
レイリィース(これで王子様から嫌われれば―)
クロムウェル「この俺に対しておもしれー脳みそだと?」
クロムウェル「おいおい、てめぇ・・・」
クロムウェル「ますますおもしれー女じゃねーか!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者決定な!」
レイリィース「あなたのおもしれーには限度がございませんの!?」
〇黒背景
―絶許
〇貴族の部屋
近衛兵「―連行」
〇法廷
裁判長「―死刑」
〇牢獄
執行人「―飲め」
レイリィース「ほんとにおもしれー男ですわぁああ!!」
ゴクゴクゴクゴクッ!
〇黒背景
〇海
レイリィース「オーホッホッホッホ!」
レイリィース「流石のクロムウェル様も海上の船までは追ってこれませんわ!」
レイリィース「とりあえず外国に脱出して、名所めぐりとしゃれ込みますわよぉ!」
レイリィース「婚約者が決まるまでリゾートツアーを満喫ですわぁ!」
レイリィース「まずは砂漠の国アムル―」
「お、おい!あの船、こっちに向かってくるぞ!」
「待て!錨おろせぇ!」
「あの旗!王族の船だ!」
「気をつけろ!ぶつけんなよぉ!」
レイリィース「あら?なんの騒ぎ―」
「ほう、この俺とのお見合いを放り出して、一人で諸国漫遊だぁ?」
レイリィース「うえぇ!? う、嘘でございましょう!?」
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース「あ、ありえませんわああああ!!」
〇黒背景
―許
〇貴族の部屋
近衛兵「―連」
〇法廷
裁判長「―死」
〇牢獄
執行人「―飲」
レイリィース「諦めませんわよぉおおおお!!!!」
〇黒背景
〇ピラミッド
まだ!
〇ファンタジーの学園
まだまだ!!
〇闇の闘技場
まだまだまだ!!
〇劇場の舞台
まだまだまだまだまだまだ!!
〇黒背景
レイリィース「ま、負けませんことよぉおおお!!!!」
〇黒背景
どこまで追いかけてくるんだ笑
おもしれかったです。
最高です。期待通りの周回が見れました。毎回牢屋の衣装が変わるのも楽しいです。
そして意外と姫のサバイバル能力が高い。
さて、次どうなるのか。ループ回避のポイントは…。楽しみにしてます。