怪異探偵薬師寺くん

西野みやこ

エピソード27(脚本)

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〇古い図書室
  俺と薬師寺は坂口さんの話に嫌な気配を感じながら聞き入る。
  話している最中、坂口さんはときどきなにかに怯えるように目をきょろきょろさせていた。
  薬師寺は目を細めて話を促す。
薬師寺廉太郎「続きを聞かせてくれるかい?」
坂口透「・・・はい」
  坂口さんは、再びゆっくりと話し始めた。

〇集落の入口
  朝になり、昨晩と同じく居間で朝食を取ってから川へ向かうことになった。
  女将さんが言っていたとおり、川は綺麗に澄んでいて水中の魚も見られるほどだ。
  陽光に輝く水面の底にはいくつもの白い石が沈んでいる。
  この中の一部に、翡翠が紛れているらしい。
  オレたちはそれぞれに石を拾って、集めた石の中から10個だけを選別した。
  鑑定に持っていけば、本物かどうか分かる。
  鑑定は旅行から戻ったときに持っていくことにした。
  本物の翡翠でもそうじゃなくても、いい旅の思い出になったと皆は笑顔を浮かべる。
  昨夜川に行くと言っていたからだろう。
  女将さんは人数分のおにぎりを握って、オレたちに持たせてくれていた。
  川辺でおにぎりを食べながら、哲平は皆に言う。
清水哲平「これ食べ終わったらさ、そろそろ山行ってみる?」
相馬加奈「そうだね。 昼間のうちに行っちゃいたいし」
  太陽はまだまだ高いが、山に登るのは時間がかかる。
  それもあり、オレたちは早めに登ってしまうことにした。

〇けもの道
  山の入り口に着くと、大きい木の幹と幹の間に太いロープが張られていた。
  錆びたプレートには「関係者以外立ち入り禁止」と書かれている。
鈴木梨香子「うわ〜、雰囲気ある・・・。 ねえ、やっぱりやめない?」
瀬見雄大「なに言ってんだよ。 ここまで来たんだし行こうぜ」
坂口透「早く入らないと村の人にバレるかもしれないし」
  辺りを見回して、誰もいないことを確認してからロープをかいくぐり山の中に入った。
  太陽の光が木々に遮られ、昼間だというのに暗い印象だ。
清水哲平「やっべーな、やっぱ雰囲気あるわ〜」
坂口透「だな、ってかめっちゃ涼しいな山って」
  そんなことを言いながら1時間ほど歩く。
  しかし特になにかが起きることはなく、オレたちのテンションはすっかり下がってしまっていた。
相馬加奈「うわ、また虫に刺された。 スプレー持ってくればよかった〜」
清水哲平「にしても、なんもねえな。 ただの山じゃん」
坂口透「まあ、とりあえず山頂まで行ってみようぜ。 そんなに高くはなさそうだし」
  そう言いながら、山頂を目指して再び1時間ほど歩いた。

〇山間の集落
  すると、少し開けた場所に出る。
  山頂に着いたらしく、村の全体が見渡せる眺めに歓声の声があがった。
瀬見雄大「おお〜ってか、ここが山頂か。 結局なんもなかったな」
鈴木梨香子「まあ結構良い眺めだし、登った甲斐(かい)はあったんじゃない?」
  梨香子はそう言って、スマホのカメラを起動させる。
相馬加奈「ねえ皆で写真撮ろうよ! 梨香子自撮り棒持ってたよね?」
鈴木梨香子「うん、あるよ〜。 私のスマホでいいよね?」
清水哲平「これでなんか写ってたりしたら面白いのにな」
鈴木梨香子「やめてよ〜」
  そう言いながら、梨香子が持つスマホのカメラで山頂の眺めを背景に皆で写真を撮った。
  おそるおそる、撮った写真を皆で見る。
清水哲平「———わっ!!!」
  哲平の突然の大声に、オレたちは声をあげてビビった。
清水哲平「な〜んちゃって」
  成功したとばかりに笑う哲平の頭を、加奈がぺしっと叩く。
鈴木梨香子「脅かさないでよ〜・・・」
  そう言った梨香子の手元に収まるスマホの画面にはなにも変なものは写っていなかった。
瀬見雄大「ま、なんも写ってねえわな」
坂口透「そのへんにしとけって。 梨香子が怖がるだろ」
清水哲平「はいよ〜」
  他にめぼしいものもないので、オレたちは山を下りることにする。
  しかしそのとき、加奈が興奮気味に皆を呼んだ。
相馬加奈「ねえ、こっちにも道があるみたいだよ」
  加奈が指さす方を見ると、登ってきた方向とは逆に道が伸びていた。
  脇へと少し下りていける道のようだ。
鈴木梨香子「もう帰ろうよ〜・・・」
相馬加奈「でもすぐそこまでしか続いてないみたいだし、ちょっとだけ行ってみようよ」

〇けもの道
  先頭を行く加奈に続きオレたちは道を下りる。
  道はすぐ行き止まりになり、そこには洞窟があった。
  入口にはしめ縄が張られているのを見て、加奈と哲平はにやりと顔を見合わせる。
清水哲平「ビンゴ! やっとそれっぽいの出てきたな!」
相馬加奈「どうする〜?」
清水哲平「そんなん決まってんだろ」
瀬見雄大「だよな」
鈴木梨香子「ええ〜・・・」
  梨香子が絶望的な声を出した。
  怖いものが苦手な梨香子にとっては、恐ろしくて仕方ないだろう。
  ・・・いや、オレが見てもこの洞窟は様子がおかしいように見えた。
坂口透「・・・なあ、さすがにここはやめとかねえか?」
坂口透「なんか、普通じゃないっていうか・・・」
清水哲平「なんだよ、お前までビビってんのかよ」
坂口透「そんなんじゃねえよ。 なんていうかさあ・・・」
鈴木梨香子「私も入りたくない・・・」
  オレと梨香子が渋ると、残りの3人は肩をすくめる。
瀬見雄大「じゃあお前らはそこで待ってろよ」
  雄大の言葉に頷(うなず)き、オレたちは洞窟の中に入っていく3人の背中を見送る。
  オレと梨香子は「大丈夫かな・・・」と言いながら3人が帰ってくるのを待った。
  腕時計に視線を向け、3分ほど経った頃だ。
  キャアアア!!
「!?」
  洞窟の奥から悲鳴が聞こえてきた。
  オレは梨香子と顔を見合わせる。
  この声は、加奈の声だ。
坂口透「・・・なにか、あったのかな。 オレ、中の様子見てくるよ」
鈴木梨香子「わ、私も行く!」

〇暗い洞窟
  オレと梨香子はスマホのライトを点けて、洞窟に入った。
  よっぽど怖いのか、梨香子はオレの腕をしっかりと抱き寄せている。
  真っ暗な道をしばらく歩いていると、物陰から突然なにかが飛びだしてくる。
清水哲平「わーーーーー!!!」
坂口透「うわああああ!!!!」

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