4. 暗転する平穏(脚本)
〇西洋風の受付
セラシオ・フォルビア様――私の命を助け、行き場のない私を新天地へと導き、そしてその後も何かと気にかけてくれる優しい人。
しかも、超絶好みな顔立ちで・・・・・・こんなの、好きにならないほうがおかしいんじゃないかと思う。
アリア「私は元気ですよ。もう仕事にはだいぶ慣れましたし、みなさんも良くしてくださいます」
セラシオ「それは良かった! もし何かあれば遠慮なく言ってくれよ。この町なら俺、わりと顔が利くほうだと思うから」
見習い冒険者「あっ、セラシオ様じゃないですか! ちょっとご相談したいことがあるんですけど、今お時間ありますか?」
セラシオ「おう、分かったよ! じゃあ「リーリア」、またな!」
アリア「はい、またいつでもいらしてくださいね・・・・・・!」
リーリアとは、私の今の名だ。こんな遠隔地にまで追放令嬢アリアの名が伝わるとは思えないけれど、念の為に自分で偽名をつけた。
ちなみに、容姿はそのままにしていても他人の目には元の私とは全く違った印象に見えているらしい。
おそらくこれは、セレーナ夫人が放った〈フォルムチェンジ〉の魔法が私に作用しているせいであるのだと思う。
アリア「・・・・・・皆に頼られていて、さすがはセラシオ様だわ」
セラシオ様はギルド内でもトップクラスの実力を持つ冒険者で、皆に一目置かれる存在だ。
加えてこの町の出身でもあるため、ギルド所属の数々の冒険者たちの中でも一番人気だといっても過言ではない。
町の領主のお嬢様でさえ、彼に熱い視線を送っているのだとか。
・・・・・・正直なところ、何も持たない今の私にとっての彼は、手に届かない高みにいる存在だ。
それくらいは分かっているし、国を追われた女などに関わって彼に迷惑がかかるのも嫌。だから、この気持ちを告げるつもりはない。
アリア「でも、想うのは自由よね? 心の中で想うことだけは、どうか許して・・・・・・」
私は燃えたぎるような思いを胸に秘め、今日も笑顔でギルドの受付に立っている。
〇ヨーロッパの街並み
アリア「ふう、今日のお仕事は終わり。さあ、お家に帰りましょう」
セラシオ「おっ、今帰り? 夜道を女性一人で歩かせたくはないから、もし良かったら同行するよ」
アリア「そんな、ご迷惑ではありませんか? でも、もしもよろしいのならば・・・・・・お願いします」
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