アカルイ食卓

アンノクルミ

母の日(脚本)

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〇ダイニング
  憎いほど人を愛したことがある者だけが
  私に石を投げなさい。

〇おしゃれなリビングダイニング
岡部明日香「お義母さん、もう少しお口開けられますか?」
岡部節子「んんんっ!嫌じゃ!」
岡部勇作「そんなに無理して食わせなくていいだろ。 母さん嫌がってるじゃないか」
岡部明日香「でも・・・」
岡部勇作「それに俺は疲れてるんだ。 早く帰ってきた日くらい 静かにメシ食わせてくれよ」
岡部明日香「でも・・・」
岡部真里奈「クッソ、またガチャ外れたし」
岡部遼平「姉貴、まだそのゲームに課金してんの?」
岡部真里奈「うっさいなぁ!」
岡部遼平「痛ってぇ!殴るとかマジありえねぇ」
岡部真里奈「ちょっと何すんのよ!叩き落とすことないじゃない!このバカ!」
岡部勇作「おい明日香・・・!」
岡部明日香「は、はい・・・っ」
岡部明日香「こら、真里奈も遼平もやめなさい」
岡部節子「あーぬるい!」
岡部明日香「お義母さん、ごめんなさい お味噌汁温め直しますね」
岡部勇作「まったく、落ち着いて食事もできない」
岡部明日香「・・・」
岡部遼平「ねぇ、今日って母の日なんだね テレビでやってるよ」

〇テレビスタジオ
タレントA「今日は母の日だけど、愛莉ちゃんなんかエピソードある?」
アイドル「日頃の感謝を込めて毎年カーネーションを贈っています」
タレントA「へぇ!それはきっとお母さん嬉しいだろうね!」
タレントB「プレゼントもいいけど、アタシだったら”話”を聞いてほしいわね」
タレントA「おや夫人、”話”ですか?」
タレントB「そう。うちの夫も息子も、普段はアタシの話なんかちーっとも聞いてくれないの だからね・・・」
タレントB「”お母さん、最近なんかあった?”」
タレントB「って、言ってほしいの それだけで嬉しいものよ」
アイドル「なるほど! さっそく帰ったらお母さんに言ってみます!」
タレントA「僕も今夜、田舎の母に電話するよ 長電話覚悟でね」

〇おしゃれなリビングダイニング
岡部真里奈「なにこれ そんなんで嬉しいわけ?」
岡部遼平「ねぇ姉貴、母さんに言ってみなよ」
岡部真里奈「イヤよ、あんたが言いなさいよ」
岡部遼平「あーあ、姉貴に殴られたとこ痛てぇなー」
岡部真里奈「しょうがないわね」
岡部明日香「お味噌汁、少し熱いから気をつけてくださいね」
岡部真里奈「ねぇ、お母さん」
岡部明日香「なぁに?」
岡部真里奈「最近なんかあった?」
岡部明日香「あら、急にどうしたの?」
岡部真里奈「その・・・なんとなく知りたくなって」
岡部遼平「くくっ」
岡部真里奈「なんか変わったことないの?」
岡部明日香「うーん・・・変わったこと・・・ そうねぇ」
岡部勇作「フンっ いつも家にいるだから、変わったことなんか無い決まってるだろ」
岡部明日香「あっ、 1つあったわ」
岡部真里奈「どんなこと?」
岡部明日香「最近、母さんね・・・」

〇黒
岡部明日香「人を殺したの」

〇おしゃれなリビングダイニング
岡部勇作「・・・・・・」
岡部真里奈「・・・は?」
岡部遼平「へぇ、母さん冗談とか言うんだ」
岡部明日香「あら、冗談なんかじゃないわ 本当よ」
岡部明日香「先週の金曜日・・・ ほら、雨だったから塾まで車で遼平を送ってあげたでしょう?」
岡部遼平「う、うん・・・」
岡部明日香「その後、 人を殺したの」
岡部勇作「明日香よさないか!悪趣味なジョークだぞ!」
岡部明日香「あら、あなたも信じてないのね 本当に殺したのに」
岡部真里奈「やば、お母さんどうしちゃったの・・・?」
岡部明日香「どうもしてないわよ ただ、ずっと憎かった人を殺したのだけ」
岡部明日香「お母さんね、その人のこと ずっと、ずーっと前から殺そうと思ってたの」
岡部真里奈「意味わかんない・・・ もうからかうのやめてよ」
岡部明日香「いやねぇ、最近なんかあった?って真里奈が聞くから答えたんじゃない」
岡部勇作「やめないか!明日香!」
岡部遼平「本当に殺したって証拠は?」
岡部勇作「おい!遼平!」
岡部明日香「証拠ねぇ・・・」
岡部明日香「あっ、ちょっと待ってて」
岡部真里奈「ねぇ・・・お母さん気が変になっちゃったんじゃないの?」
岡部明日香「お待たせ こんなのでいいかしら?」
岡部真里奈「ひぃっ!!!」
岡部遼平「ゆ、指輪・・・?」
岡部明日香「なかなか抜けなくて指ごと切っちゃったから、内側に肉片が少し残ってるの」
岡部真里奈「いやぁあ!!」
岡部勇作「明日香・・・お、お前・・・本当に・・・こ、ころし・・・」
岡部明日香「あら、やっと信じてくれた?」
岡部勇作「い、一体・・・どこの誰を・・・!」
岡部明日香「だからさっきから言ってるじゃない ずっと憎くて憎くて仕方がなかった人よ」
岡部明日香「そして・・・」
岡部明日香「誰よりも私を愛してくれた人」
岡部勇作「・・・お、男か? お前に限ってそんなふしだらなこと・・・!」
岡部遼平「待って この指輪って、女物だよね?」
岡部明日香「よく気づいたわね 遼平もお味噌汁温め直す?」
岡部真里奈「もうイヤ・・・わけわかんないよ・・・」
岡部明日香「あら、真里奈 お野菜残しちゃダメじゃない」
岡部遼平「母さんが浮気? それも女の人と・・・?」
岡部勇作「おい!明日香!」
岡部明日香「あなた、ご飯のおかわりは?」
岡部勇作「いいかげんにしろ! 今日のお前おかしいぞ!!」
岡部明日香「・・・」
岡部明日香「私はずっと おかしかったわよ」

〇警察署の入口
  5月14日(日)23:59
  岡部明日香、自首
  知人女性を殺害後、
  山中に遺体を埋めたと供述

〇山の中
  翌朝、警察が山中で中年女性の遺体を発見。
  5月15日(月)
  岡部明日香を殺人及び遺体遺棄の疑いで逮捕。

〇おしゃれなリビングダイニング
  ピンポーン
  ピンポーン
  「岡部さーん
  ニュースワンデイです
  ちょっとお話よろしいでしょうか?」
岡部遼平「またマスコミがきてるよ」
岡部勇作「お前たちしばらく学校は休みなさい」
岡部真里奈「うう・・・う・・・ 私たちこの先どうなっちゃうの・・・」

〇テレビスタジオ
女性アナウンサー「速報です」
女性アナウンサー「昨日、山中で見つかった遺体は 11年前から行方不明になっていた女優の」
女性アナウンサー「三島杏奈さんであることが分かりました」

〇黒

〇おしゃれなリビングダイニング
岡部遼平(なんだ・・・? この人どこかで会っている気がする・・・)
岡部真里奈(あれ・・・? この人ってあの時の・・・)
岡部勇作(こ、この女・・・!)

次のエピソード:秘密

コメント

  • 立ち絵のチョイスがいいですね。こう、淡々と実際に言ってきそうな感じがしました。
    しかし、男ではなく、女とは。何があったんでしょう。
    肉洗っておかないあたりも狂気を感じました。

  • 日常の食卓に放り込まれた母親の”非日常”な言葉、ただただ驚きました。そして普段と変わらない様子に静かなる狂気が。とにかく続きが気になる第一話ですね!

  • 母の日という特別な日に、たまたま母親を想ってかのようにした質問が、こういう結果を生むとは。とても斬新な展開でした! 日頃あまり怒りとかを面に出さない人ほど、とてつもない怒りが内にたまっているもんですよね。続きが楽しみです!

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