16.このママではいられない。その6(脚本)
〇城の客室
聖女「ふふふ、アル! ようやく会えたのね!」
シタラ「だから、アルじゃないですって!」
隊員「せ、聖女様! ここには立ち入らないよう、隊長が──」
聖女「なに、誰なのあなた?」
聖女「私はようやく息子に会えたのよ!? 親子の再会を邪魔するなんて──」
聖女「・・・息子?」
シタラ「あの・・・」
聖女「そうよ、アルは息子なの! どうして女の子がアルなんて・・・」
シタラ「わかってもらえたなら、 とりあえず離してもらえますか?」
聖女「ごめんなさいね・・・ 私、歳のせいかどうも記憶が・・・」
シタラ「いえ、いいんですけど・・・」
シタラ「それより、アルを探してるんですか?」
聖女「・・・そうよ! あなたがさっき言ってたんじゃない!」
聖女「あなた、アルのこと知ってるの!?」
シタラ「ええっと・・・ あなたの言うアルかはわかりませんけど」
ソウガ「──ああ、きみの知るアルじゃないよ」
シタラ(ソウガさん・・・!)
隊員「も、申し訳ありません。隊長! 私では、聖女様を止められず・・・」
ソウガ「構わん。私が説得しよう その後は任せたぞ」
ソウガ「聖女様、中庭で子供たちがお待ちです どうかお相手をお願いします」
聖女「あなたは・・・誰だったかしら? お世話してくれる人よね?」
ソウガ「・・・ソウガですよ」
聖女「ええ? そんなはずないわ! だってソウガはまだ子供だもの!」
ソウガ「・・・」
ソウガ「ええ、名前だけ同じなんです」
ソウガ「その子が言うアルも、 恐らく名前が同じなだけですよ」
シタラ「え? ちょっと待って──」
シタラ「むぐ!?」
ソウガ「さあ、中庭へ参りましょう 子供たちが寂しがります」
聖女「うーん・・・そう、そうね・・・」
聖女「なら、その子も一緒にどうかしら? 見ない顔だし、新しい子でしょ?」
ソウガ「彼女は今日来たばかりで、 疲れていますから」
聖女「そうなの・・・ なら、また今度にしようかしら・・・」
ソウガ「そうしてあげてください」
シタラ「──ぷはっ!」
ソウガ「すまないね 苦しくなかったかい?」
シタラ「死ぬかと思いましたよ・・・!」
シタラ「それより、あの人が探してるのって──」
ソウガ「違うよ」
シタラ「・・・」
ソウガ「”アル”は聖女様のご子息の名前だ」
ソウガ「きみの呼ぶ”アル”はあだ名だろう? だから、違う」
シタラ「・・・なら、なんで止めたんですか?」
ソウガ「聖女様には不安定な部分があってね あまり混乱して欲しくないんだ」
シタラ「でも、ずっと探してるんでしょう? 確認するぐらい・・・」
ソウガ「これ以上、この件で話すことはないよ」
シタラ(・・・あの態度、やっぱりアルが?)
シタラ(それにあの人──)
〇黒背景
〇城の客室
シタラ(なんだろう・・・見たことがある?)
シタラ(だとしたら、どこで? ここ最近じゃない、もっと前──)
〇レトロ
そろそろ、あの人が来るかも・・・
えっと・・・鏡、どこにやったっけ?
〇城の客室
シタラ「・・・」
シタラ(──大人の、私?)
シタラ(え? どういうこと? 私は、なにを思い出したの?)
シタラ(というか・・・なんで、 今 思い出したのが自分だって・・・?)
シタラ(そ、それに──)
〇黒背景
〇城の客室
シタラ(聖女様って呼ばれてるあの人と、 さっき思い出した大人の私)
シタラ(似てるなんてものじゃなくて、 そのまま年を取ったような・・・)
〇モヤモヤ
シタラ(私は、大人だった頃があって、 でも、今は子供になってて・・・)
シタラ(それなら思い出した記憶は、 全部 大人の私のことだから・・・)
シタラ(あれ? なら、私はシタラでもない?)
シタラ「私は・・・私は誰なの・・・?」
「そりゃ、俺のママだろ」
〇城の客室
シタラ「・・・アル?」
アルバス「悪いな、シタラママ 来るのが遅くなっちまった」
シタラ「えっと、どこから入ったの? ドアは開けてないよね?」
アルバス「上だよ、上! 天井から!」
シタラ「そ、そうなんだ・・・」
アルバス「大丈夫か、ママ? なんかぼーっとしてたしよ」
シタラ「・・・うん、大丈夫」
シタラ(私が何者なのか、まだわからない)
シタラ(でも今は、アルの言葉に甘えて、 ママということにしておこう)
シタラ「ありがとね、アル」
アルバス「いいんだよ、 ママを助けるのは当たり前だ」
〇城の客室
アルバス「それじゃ、こんな所からは さっさと出ちまおうぜ!」
シタラ「──あ、ち、ちょっと待って!」
シタラ(言うべき、かな・・・? まだ決まったわけじゃないし・・・)
アルバス「ママ?」
シタラ(でも、もしそうなら──)
シタラ「アルに、会ってほしい人がいるの ここで聖女様って呼ばれてる人」
アルバス「お、それならちょうどいいな! 元々、俺も会うつもりだったんだよ」
シタラ「そうなの?」
アルバス「せっかくだし、シタラママのことを 直接 頼もうと思ってな」
アルバス「聖”女”なんだし、俺のママだろ? きっと話せばわかると思うんだよな!」
シタラ「・・・そうだね、頼んでみようか」
シタラ(それに、私もまだあの人と 話したいことがある)
シタラ(きっと、なにかわかるはず・・・!)
〇要塞の廊下
アルバス「──さて、聖女ママはどこだ?」
シタラ「えっと・・・確か、 ソウガさんは中庭って言ってた!」
隊員「──ま、マザコン・マントコート!?」
アルバス「今回はこっそり行くぜ、ママ」
アルバス「見つかったら、 聖女ママと会えなくなるかもしれん」
シタラ「今 派手にやってた気がするけど・・・」
「・・・」
隊員「た、隊長・・・侵入者です・・・!」
〇華やかな裏庭
少年「聖女様、見て見て!」
聖女「はいはい、なにを作ったの?」
ソウガ「・・・」
ソウガ「──わかった。手は出さず監視に留めろ」
ソウガ「マントコートは、ここで討つぞ」