矢庭二哀咽

Hallo Leyla

第1話(脚本)

矢庭二哀咽

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〇教室
  俺は、何の特徴もない人間だ
  勉強も運動も人並み以下
  かといって容姿が優れているわけでも
  外向的なわけでもない
  それに、聞いての通り消極的だ
  俺はこのまま数少ない友達とつるんで
  家庭を持つどころか恋人すらできずに
  何の変哲もない人生だったと
  この大した価値のない命に幕を下ろすのだろう
「おーい!矢作ー!」
  教室の出入口の方から俺を呼ぶ声が聞こえた
  出入口の方を向くとそこには
  俺を呼んだクラスメイトの丹羽と
  隣のクラスの神部さんが立っていた
  神部さんはファンクラブがあるほど人気のある人だ
  まあ、無個性な俺にとっては関係のない話だけれど
丹羽「神部さんが、お前に用があるってよ」
「神部さんが?」
  視線を神部さんに移すと
  神部さんは控えめに頷いた
  断ることでもないか、と思い
  俺は重い腰を上げた
  ・・・・・・
  思えば、ここで断っておけば
  俺はこのイカれた幕引きから
  逃れられたのかもしれない

〇学校の屋上
  着いてきてほしいと言われ、俺は神部さんの後ろを歩いた
  着いた先は屋上で
  神部さんはその中央あたりで立ち止まった
  屋上の風にあおられ、長い髪が揺れる
  神部さんはこちらを振り返り
  たった一言で、俺の動きを止めた
神部「好きなんです、矢作くんのこと」
  ・・・・・・?
  一瞬、思考が止まった
  悪い夢か、あるいは何かの罰ゲームか
  必死にこの状況に理由をつけようとした
  夢・・・・・・
  にしては、俺の脈はさっきから焦りで早くなっているし
  罰ゲーム・・・・・・
  だとしたら、目の前の神部さんの頬が染まっていることに説明がつかない
  もし、もしも神部さんが本気なら
  罰ゲームか、なんて聞いたら失礼だ
  だが、俺は神部さんと話したことがない
  そして、俺の容姿は特段優れているわけではない
  どうやっても、神部さんが本心でこんなことを言っているとは考えられないんだ
  ・・・・・・
  どれだけの時間が経っただろうか
  本来なら数秒くらいなのだろうが
  俺にとっては、数時間くらいに感じた
  何かに縫い付けられていたかのように動かなかった俺の口は
  やっと音を発した
「悪い」
  たった3文字の無愛想な言葉だ
「俺は神部さんのこと、好きでも、嫌いでもないんだ」
  本人の手前こう言ったが
  俺は正直、神部さんのことが苦手だ
  話したこともない相手にこんなことを言うのは失礼だろうが
  なんとなく
  ただ、なんとなく
  怖いんだ
  神部さんに好意を寄せている人が大勢いることが怖い
  それもあるが、それ以上に
  神部さん自身がどこか
  不気味だ
神部「矢作くんは、好きな人がいるんですか?」
  先程までの悲しげな顔はどこへやら
  YESと答えれば殺すとでも言いたげな目は
  ぶれることなく俺をとらえていた
「誰かに恋愛感情を抱いたことは無い」
  紛れもない本心で
  かつ相手を刺激しない返答ができたと思っていた
  だがそれは、俺の勘違いだったようだ
  神部さんはどこか不気味な笑みを浮かべて
  こちらに目もくれずに走り去った

〇教室
  あれから数時間後
  神部さんに何を言われたのかと聞いてくる人はいたが
  神部さんもあの後周囲に何も言わなかったのか
  何も無かったと返せば、それ以上聞いてくる人はいなかった
  ふと教室の窓から外を見ると
  前庭に救急車が止まっているのが見えた
  誰かが倒れたのか
  どこか他人事のように思っていた
梶原「おい矢作!!」
  俺の友人の一人である梶原が、息を切らしながらそう叫んだ
「梶原、そんなに慌ててどうしたんだ」
  神部さんを振ったことがバレたのか
  そんなもんだと思っていた
  だが事態は、そんな生やさしいものじゃなかった
梶原「お前の妹が、階段で突き落とされて意識不明だと!!」

次のエピソード:第2話

コメント

  • あまりの急展開に背筋が凍りました。
    彼女の不気味な笑みは思い込み...?あるいは本心?

  • 内向的で消極的、それは恋愛に関しても、そんな主人公の平凡で穏やかな日常を描く作品かと思いきや、ラストで物語が動き始めましたね。主人公の日常はどうなるのか気になります。

  • 最後のシーンから、冒頭主人公が語っていた何の変哲もない人生を・・という言葉が重くのしかかったきました。人生、一瞬先はは闇ということでしょうか。

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