エピソード1(脚本)
〇ダイニング
市橋カヨ「天音さん」
市橋カヨ「男の子はいつ産んでくれるのかしら?」
市橋天音「お義母さん 子どもは授かりものですから」
市橋コウ「天音、母さんは 期待してくれているんだよ」
市橋コウ「だから早く僕と子作りをしよう」
市橋天音「あなた、自分の子どもを 可愛がらないじゃない」
市橋コウ「それは海美が女の子だからさ」
市橋コウ「僕が海美に厳しいのは 母さんの期待を裏切った君への罰だよ」
市橋海美「・・・」
市橋天音「海美、起きてきたの」
市橋海美「・・・マ、マ・・・」
市橋天音「熱で扁桃腺が腫れているのね 無理に喋らなくていいわ」
市橋天音「卵がゆを作ってあげる 栄養を付けて早く治しましょう」
〇和室
市橋カヨ「あの嫁 後継ぎを産む気がないのね」
市橋コウ「新婚の頃は僕を愛してくれたのに 海美が生まれてからは」
市橋カヨ「お母さんに任せておきなさい 良い方法があるわ」
〇ダイニング
市橋天音「海美! 海美!」
市橋コウ「どうしたの天音?」
市橋天音「海美がいないんです!」
市橋天音「買い物でほんの少し目を離した隙に」
市橋天音「まだ熱が下がっていないのに」
市橋コウ「海美の居場所なら知っているよ」
市橋天音「どこです!?」
市橋コウ「教えてあげない 教えたら母さんに怒られるもの」
市橋コウ「海美がいると君は 次の子どもを作ろうとしないだろ?」
市橋コウ「海美はいない方がいいんだよ」
市橋コウ「今は海美も母さんもいないし 二人きりだよ」
市橋コウ「新婚の気分に戻って子どもを作ろう」
市橋天音「いやぁ!」
〇警察署の入口
美濃警部「それで逃げてきたってわけか ひでえ義実家だな」
市橋天音「刑事さん 海美を探してください!」
美濃警部「悪いが 今のところ家族間のもめ事扱いだ」
美濃警部「俺ら警察は民事不介入 そういうので動けないんだよ」
市橋天音「そんな」
久城巡査「失礼いたします」
久城巡査「今、民事不介入って言いました?」
美濃警部「またお前か久城」
美濃警部「このお嬢、すぐ民事介入したがるんだよ お蔭で苦情が殺到だ」
久城巡査「クビも覚悟の上ですわ!」
久城巡査「痛い人を叩く快楽に 優るものはありませんもの」
美濃警部「お前が一番痛いんだよ!」
〇ダイニング
久城巡査「コウ様 海美様はどこへ?」
久城巡査「お子様を捨てたのなら 遺棄罪に問われる可能性があります」
市橋コウ「捨ててなんかいないよ」
市橋コウ「海美が車酔いしたから 降ろしただけさ」
市橋コウ「それで勝手に迷子になったんだ 僕は悪くない」
久城巡査「どこに降ろしたのですか?」
市橋コウ「教えられないよ 母さんとの約束だもの」
久城巡査「何故そんな約束を?」
市橋コウ「それも教えられない 母さんに怒られるもの」
〇住宅街
市橋天音「それでは結局何も」
久城巡査「いえ 手掛かりは得られました」
久城巡査「“車酔い”とおっしゃられましたから」
市橋天音「つまり自動車で 海美を連れて行ったということですか!」
〇駐車車両
久城巡査「これが市橋家の車ですね」
久城巡査「あったドラレコ!」
久城巡査「海美様の居場所が分かりますわ!」
〇山並み
市橋天音「海美!」
市橋海美「ママ」
市橋天音「ああ こんなに震えて」
市橋天音「寒かったでしょう さっき雨が降ったから」
市橋海美「海美、悪い子だから パパとおばあちゃんに捨てられて」
市橋海美「でもママは優しいから ここで動かずにいれば絶対助けにきて」
市橋海美「くれ、るって・・・」
市橋天音「海美!」
久城巡査「凄い熱ですわ! 病院に急ぎましょう!」
〇病院の廊下
市橋コウ「天音、海美を見つけてきたのかい?」
市橋カヨ「せっかく捨てたのに 余計なことしないで!」
市橋天音「やっぱりお義母さんの 指示だったんですね」
市橋カヨ「退院させなさい 入院費がもったいないわ」
市橋天音「今は絶対安静です!」
市橋天音「少し救助が遅かったら 死んでいたんですよ」
市橋カヨ「コウちゃん また捨ててきなさい」
市橋コウ「はい 母さん!」
市橋天音「許せない!」
市橋天音「例え殺人犯となろうとも 海美を守る!」
久城巡査「失礼いたします」
市橋カヨ「警察!? 何で!?」
久城巡査「事件捜査です ご協力を」
市橋カヨ「天音よ 天音がやったの!」
市橋カヨ「私の孫を山に捨てたの!」
市橋カヨ「グスッ 孫が可哀想、天音を逮捕して」
市橋天音「お義母さん」
市橋天音「事件の詳細は話していないのに 何故そんなに詳しいんですか?」
久城巡査「ほぼ自白ですわ」
市橋カヨ「わ、私は賢いからよ! 何でも分かるの!」
久城巡査「残念ですがドライブレコーダーに 記録が残っています」
市橋カヨ「どらいぶれこおだあ? 何それ?」
久城巡査「海美様を山道で 下車させた場面の録画ですわ」
市橋カヨ「さては盗撮みたいなものね!」
市橋カヨ「天音、あなたの仕業ね! 卑怯だわ!」
久城巡査「・・・」
市橋カヨ「勘違いしないで! 海美が車酔いしたから降ろしてあげただけ」
市橋カヨ「迷子になる海美が悪いの!」
市橋カヨ「要は天音の教育がなっていないから こうなったの! 天音を逮捕しなさい!」
久城巡査「清々しまでにクソトメですわね」
市橋カヨ「何か言った?」
〇病院の廊下
久城巡査「民事介入いたします!」
久城巡査「先程、天音様の教育がなっていないと おっしゃられていましたが」
久城巡査「教育がなっていないのは カヨ様の方では?」
市橋カヨ「海美を教育したのは天音よ!」
市橋カヨ「跡取りになれない女に 興味はないもの!」
久城巡査「私が言っているのは息子様 コウ様の教育のことです」
久城巡査「生まれたとき 人は親が絶対の存在」
久城巡査「成長につれ独自の価値観を作り 大人になってゆくのです」
久城巡査「しかして! コウ様はその限りではない」
久城巡査「体が大きくなっても お母さまルールに従っていますわ!」
久城巡査「命ぜられれば 自分の子さえ捨てるほどに」
市橋カヨ「だーかーら!」
市橋カヨ「あれは海美が迷子になっただけ!」
市橋カヨ「私たちは無罪よ 無罪!」
市橋カヨ「確かに、今のままなら無罪になる可能性は ありますわ」
市橋コウ「ね、天音?」
市橋コウ「母さんは頭がいいだろ? 警察にだって負けないんだ」
市橋コウ「だから僕らは母さんの言うことを 黙って聞いていればいいのさ」
市橋天音「あなたって人は」
市橋カヨ「また口答えする気なの 嫁の分際で?」
市橋カヨ「こんな嫁いらないわ コウちゃん離婚しなさい!」
市橋コウ「天音のことは好きだけど 母さんが気に食わないなら仕方がないね」
市橋天音「離婚! 望むところです」
市橋カヨ「強がっちゃって! 子持ち女が独りで生きていけるもんですか」
市橋カヨ「コウちゃん 新しいお嫁さんを探してきてあげるわ」
市橋コウ「母さんに任せるよ」
久城巡査「カヨ様」
市橋カヨ「何よ?」
久城巡査「何故そこまで 自信をお持ちなのでしょうか?」
久城巡査「今は子持ち独身女性で 立派に生きている女性が沢山います」
久城巡査「そんなことさえご存じない?」
市橋カヨ「この私を 馬鹿にしているの?」
久城巡査「現在の世の中は日進月歩 常に情報や価値観を更新する努力が必須」
久城巡査「それを怠れば 周囲から浮いて馬鹿にされてしまいます」
市橋カヨ「し、しているわよ 努力」
久城巡査「本当ですか?」
久城巡査「ドライブレコーダーさえ ご存じなかったようですが?」
市橋カヨ「新しいものはどうでもいいの!」
市橋カヨ「私は常識を知っているから 天音と違って!」
久城巡査「百歩譲ってカヨ様に常識がおありでも それは昔の常識」
久城巡査「今の世では通じません」
市橋カヨ「うぎぎ 生意気な小娘ね!」
市橋カヨ「何が楽しいのよ? 人の誇りを傷つけて」
久城巡査「誇り? ご冗談を?」
久城巡査「カヨ様は女性でありながら 女性を蔑視していたではありませんか?」
市橋カヨ「くっ」
久城巡査「カヨ様はお若い! まだまだ充分な時間があります」
久城巡査「過去を他人に押し付けるのではなく ご自分が現在を受け入れる努力をしては?」
久城巡査「それが虚栄ではなく 真の誇りを手に入れる道かと考えます」
市橋カヨ「コウちゃん助けて 母さんいじめられているの!」
市橋カヨ「酷いでしょ ね?」
市橋コウ「母さん」
市橋コウ「婦警さんの言う通りだよ」
市橋カヨ「コウちゃん?」
市橋コウ「婦警さん 海美の遺棄は母さんが指示したんだ」
市橋コウ「僕は仕方なく車を運転しただけ 僕は悪くない」
市橋コウ「逮捕するなら母さんだけだ」
久城巡査「天音さんあなたの旦那様 マザコンかと思いましたが」
久城巡査「周囲で最も強い人に 依存する性質のようですね」
久城巡査「そして相手が弱ったら あっさり依存相手を変える」
市橋天音「気づかなかった 私が今まで弱気だったから」
久城巡査「ならガッツリ言って差し上げて?」
市橋天音「はい!」
市橋天音「お義母さん コウさん」
市橋天音「あなたたちは子どもを 育ててはいけない人間です」
市橋天音「親としての資質を余りに欠いています」
市橋天音「だからコウさんを 自立した人格に育てられなかった」
市橋天音「海美を人間として 見ることができなかった」
市橋天音「そんな人たちと 一緒に海美を育てることはできません」
市橋天音「離婚します!」
市橋コウ「待って天音! 僕の話、聞いてなかった!?」
市橋コウ「僕は悪くないんだよ! 悪いのは母さんで!」
市橋カヨ「母さんを見捨てるの!?」
市橋コウ「母さんはもうどうでもいいよ 思ってたより弱いし」
市橋カヨ「コウちゃん!?」
市橋コウ「これからは天音の言うことを聞く! 海美も可愛がるから!」
市橋コウ「愛しているんだ 見捨てられたくない」
市橋天音「コウさん」
市橋天音「離婚で~す♪」
〇警察署の入口
久城巡査「海美様元気になったんですね 良かった!」
久城巡査「天野さんも新生活お健やかに」
久城巡査「ではご機嫌よう」
久城巡査「あ、ミノさん」
美濃警部「一条コウが自白したぞ あっさりとな」
久城巡査「彼はその場にいる一番強い人に 従う性質ですから」
久城巡査「取り調べ室では当然 ミノさんが最強です!」
美濃警部「主犯の母親は何を聞いても泣くばかりだ」
美濃警部「誰かさんがぶっ壊しちまったからな!」
久城巡査「やった~♪」
久城巡査「やっぱり痛い奴を ボコボコにする気分は最高ですね!」
美濃警部「お前が一番痛いんだよ!」
救いようのない母息子ですね・・。人の言葉に影響されて、ころころ自分の考えを変える人間、私はこの世で一番憎むべき相手だと思っています。海美ちゃんの人生の再出発頑張ってほしいです!
民事介入したがる婦警さん、いいですね。
これから数々の事件?に首を突っ込んでいくのでしょうか?楽しみです😊