ナンギなお悩み相談センター

桜川 定久

1件目 「友達」(脚本)

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〇オフィスのフロア
  ここは『ナンギなお悩み相談センター』
  全国の皆さんが日々抱える
  難儀な悩み事を相談出来るよう
  設けられた場所だ
  お年寄りから子供まで幅広く受け付けており
  年中無休で対応可能
  出来て間もない施設だが
  その対応の迅速さと信頼性から
  世間では大人気なのだ
  プルルルル、プルルルル・・・・・・
  早速着信が入ったようだ
  今回はどんな内容だろう
「お電話ありがとうございます こちら『ナンギなお悩み相談センター』でございます」
「あ、もしもし 少し訊きたいんですけど・・・・」
  聞こえてきたのは若い男性の声だった
「はい、どういったご用件でしょう」
「「友達」って・・・・ 一体なんでしょう」
  ・・・・・・・・・・・・
  しばしの沈黙を経て私は答える
「個々人によって解釈は異なると思いますが、 概ね距離感の近い人・親しい人という意味合いが強いかと思われます」
「でも、関係性によって違う言い方になるじゃないですか」
「関係性、ですか?」
「例えば、職場で仲良くなった人を「同僚」って呼んだりするじゃないですか」
「あれって友達には入らないんですかね」
「あー・・・・・・」
  たしかに、会社で知り合った人間を「友達」と呼ぶ人は少なそうだ
「僕にも居るんです、プライベートで飲みに行ったりするような仲の人が」
「でもその人のことを第三者に説明する場合、「友達」ではなく「同僚」って言いませんか?」
「それは 友達同士で居る時よりも会社仲間同士で居る時間の方が長いから じゃないでしょうか」
「実質的には友達であっても その人との関係を一言で表す時は、やっぱり「同僚」とか「仕事仲間」になる気が――――」
「そうなると、学生時代に知り合った友達も 「◯学生の時に知り合った同級生」っていう説明をしなくてはいけなくなりませんか?」
「た、たしかに・・・・・・」
  この論理で行くと、少しでも共通項があればそれに属した知り合いとして定義されてしまう
「もっと・・・・」
「もっと、大きな枠組みなのかもしれません」
「・・・・・・というと?」
「「友達」という大きな枠が存在していて」
「その中に 「学生時代に知り合った人」 「社会人時代に知り合った人」 みたいな小グループがあるみたいな」
「なるほど・・・・」
「「親族」や「恩師」も同じようにカテゴライズ出来そうですし 案外そういう認識なのかもしれません」
「たしかに、正解かもしれませんね」
「なら、少し角度を変えて質問してもいいですか?」
「はい、お願いします」
「今度は関係性ではなく、距離感についてなんですが」
「具体的に何をしたら「友達」と呼んで良いのでしょうか」
「それは・・・・」
「プライベートな付き合いが発生しているのなら、そう呼んで良い気がします」
「僕もその認識だったんですけど それだと「ご近所さん」にも適用されませんか?」
「な、なるほど・・・・・・」
「休日の昼間とかに、たまたま顔を会わせて その流れで小話をすることってあるじゃないですか」
「あれって互いにプライベートな時間ではあっても、「友達」と呼び合う関係には至らないと思うんですよね」
「互いに意図したわけではないから とかはどうでしょう」
「恣意的にその状況にしたのか 偶然そういう流れになったのか そこの違いは結構大きいような気がするんです」
  男性はうんうんと相槌を打ち
  続いてこう言った
「昔、僕がまだ小さかった頃 よく近所の人に遊んでもらったりしてたことがあったんですよ」
「親の帰りが遅くなったときとか おじいさんと二人で公園へ行ってキャッチボールをしたり」
「さっき話していた条件から考えるのなら あの時お世話になっていたおじいさんも 「友達」認定されることになりますよね」
「仲は良かったんですが、年齢はだいぶ離れていますし 顔だってもう全く覚えていないんです」
「この場合でも「友達」に該当するんでしょうか」
  うーん、勿論年齢層が違えば価値観や考え方は大きく変わる
  とはいえ、親密な関係を気付くことは可不可能ではないし、これまでの条件にも当てはまっている
「私は「友達」だと思います」
「判断が難しいところではありますが 互いに親密な関係を築き あなたの中に思い出として残っているわけですし」
「そこに年齢や性別は関係無いのではないでしょうか」
  私の言葉を聞き、男性はうむむと小さく唸る
「年齢や、性別・・・・」
「少し話は変わってしまうのかもしれませんが」
「「男女の友情」って存在するんですかね?」
「互いが恣意的に、且つプライベートな時間の中で過ごしていたとして、 結局どちらかは下心を抱えていたりするじゃないですか」
  これはよく聞く話だ
  どちらかというと恋愛話の際に用いれる議題ではあるが
「状況や恋愛観によって変わる点が多いので、断定はできませんが」
「成立する場合もあると 私は考えています」
「例えばどんな場合ですか?」
「例えば互いに違う国の人間であるとか 両者のどちらか、もしくは両方が既婚者であるとか」
「なるほど・・・・?」
「後者は、倫理的問題から 恋愛的な関係は成立しづらい」
「よって純粋な友情が生まれる場合がある」
「前者に関しては何故でしょう なんとなく理解はできるんですが、理由が分からなくて」
「それは言葉や通念が違えば、互いの認識の擦り合わせに時間が掛かるからです」
「友達関係であれば、そのズレを知ることで楽しんだり出来ると思うのですが」
「私達が求めるパートナーというのは 共感してくれる相手や、安心できる相手のことを指すと思うんです」
「そこが難しいとなると、やはり恋愛的な関係に発展することはあまり無いのかなと」
  ふむふむ、と呟く男性の声が聞こえる
「反例は多いですが、その論理で行くのなら道理は通っているような気がしますね」
「その反例が生まれる理由が、恋愛観なのだと思います」
「じゃあつまり、これまでの条件を纏めるなら」
「世代や性別は関係無く 恣意的にプライベートな付き合いがある 距離感が近い・親しい人を「友達」と呼び」
「その内訳に 「学生時代の同級生」や 「会社の同僚」というような小グループが存在する」
「という感じですかね」
「はい、それが私の回答になります」
「ただ、結局は個人の価値観によって成り立つものなので あくまで私個人の見解にはなります」
「いえ、それでも答えて頂けただけありがたいです」
「なんだか少しだけスッキリしました ありがとうございます」
「いえ、こちらこそお時間頂きありがとうございました」
「また何かございましたら、お気軽にお電話下さい」
「はい、ありがとうございます それでは失礼します」
  ガチャリという音と共に通信が途絶する
  私はきちんと答えられていたのだろうか
  思うがままに話してしまっていたように思うけれど
「「友達」か・・・・・・」
  この問いに対する模範解答なんて存在しないのだろうけど
  一度考えてみることは大切な気がする
  私の友達に訊いたら、なんて答えるかな

コメント

  • 昨今なにかと話題の 対話型AI "ChatGPT" なら何て答えるのかなあ。この相談員さんのように相手の意図するところを汲み取った繊細かつ明瞭な回答はできないんじゃないかな。相談者も答えが欲しいというより、誰かと一緒にモヤモヤを言語化して整理してみたいという感じでしたね。

  • こういう定義に悩むものってありますよねー!明確な基準がないのにも関わらず、不思議とみんなで共通認識ができている「友達」という言葉って。。。そして、それをお悩み相談センターに訪ねてきた人の素性が気になりますね。

  • とても興味深いお話でした。友達の概念って、本当に人それぞれだと思うし、それでいいんだと思います。個人的には、【腹を割って自分の内面をもさらけ出せる人】という定義です。当然、年齢を重ねてもその数は少なく、結局夫が一番の友達だと思えます。

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