真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

14/嘘か夢か(脚本)

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不安狗

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〇飾りの多い玄関
コロン「・・・・・・お兄様、気がつきましたか?」
コロン「ああ、いえ、そうですね。正確には、電源がつきました、か」
  七月十日、夜の二時前。
  僕は何者かに電源をつけられ起動した。
  「侵入者を発見。通報を開始します」
コロン「・・・・・・もう自分のことも、私のことも、完全に忘れているようですね」
コロン「腕以外はそんなにアンドロイドらしさは見られないですが・・・・・・」
コロン「さて、そんなことより壊れた機械は、叩いて直すとしましょう」
  僕の頭部パーツを、侵入者が裏拳でスパーンと殴り飛ばした。
  「情報送信システム、破損。迎撃モードに移行します」
  僕は右腕を構え、侵入者に向けて発射した。
  しかし侵入者はそれをひらりとかわし、僕の右腕は玄関の壁にめり込んだ。
コロン「腕の断面は、ちゃんと機械ですね」
コロン「その辺りは、先輩に配慮されているということですか・・・・・・」
コロン「本物の人間の断面、お兄様は見たことありますもんね?」

〇シックな玄関
  その瞬間、僕の自宅の玄関で、二人の死体とそれを食べている一人のゾンビの映像がフラッシュバックされる。
  死体は僕の両親で、それを頬張っているのが、久野。

〇飾りの多い玄関
  「いや、僕の、自宅・・・・・・?」
  「それに、僕の、両親・・・・・・?」
  アンドロイドに家なんて無い。アンドロイドに親なんていない。
  じゃあ、このメモリーは・・・・・・?
コロン「思い出しましたか?」
コロン「それが、あなたが叶えたかった世界。あなたの居場所。そして・・・・・・」

〇飾りの多い玄関
  その時、玄関の明かりが点いた。
コクノ「・・・・・・違う。ここがお兄ちゃんの家」
コクノ「お兄ちゃんの、帰る所」
  淡々とした口調に似合わない幼い声が、二階へと続く階段から聞こえてきた。
  振り返ると、パタパタとスリッパで音を立てながら、コクノが暗い階段を降りてきていた。
コロン「出たな堕天使・・・・・・」
  目の前の侵入者、いや、コロンが、心底嫌そうな顔をしている。
  「・・・・・・コロン、コクノさんのこと、知ってるのか?」
コロン「ええまあ・・・・・・。そういえば先輩、私のこと思い出してくれたようですね」
コロン「自分が何なのかも、思い出しましたか?」
  「え、ああ、そういえば」
  「僕は確か・・・・・・」
  「バイトの帰りにミウさんに会って、それで・・・・・・」
  階段を降り切ったコクノが、横に立って僕を見上げた。
コクノ「大丈夫だよお兄ちゃん。ここが、お姉ちゃんのアンドロイドであるお兄ちゃんの居場所」
コクノ「そしてお姉ちゃんと私が、お兄ちゃんの大切な家族よ?」
  だんだん、意識が朦朧としてくる。
  僕の記憶が、思い出そうとすればするほど消えていく。
  「僕は・・・・・・」
コクノ「・・・・・・」
コロン「・・・・・・ああ、ったく。これが、あなたが欲した夢の世界ですか」
  侵入者が、僕に背を向けた。
  「ゆ、夢・・・・・・?」
  そして、見覚えのあるコートを翻し振り返る。
コロン「そう、夢です」
コロン「何も心配はありません、お兄様。あなたはこの夢から、必ず覚める」
コロン「夢の世界が夢の世界でないことに、必ず気づく時が来ます」
コロン「その時にまた改めて、私はあなたの力を借りに来ます」
コロン「あなたの力は、私に必要ですから」
  「それって、どういう・・・・・・」
コロン「ただまあ、役にのまれ過ぎないように」
コロン「我に返った時恥ずかしくなりますよ?」
  「役・・・・・・?」
  するとしびれを切らしたコクノが、むっとしたまま僕とコロンの間に入って腰に手を当てた。
コクノ「もう! 帰るなら早く帰って!」
コクノ「現実と嘘に縛られた小悪魔のくせに。あんまり私のお兄ちゃんを、困らせないで!」
  コクノが頬を膨らませると、玄関の扉の鍵が開く音がして、玄関の扉が勝手に開いた。
  それを見た侵入者は、コクノと目を合わせることなく吐き捨てた。
コロン「はいはい、お邪魔しましたね。後はお任せしますよ、過去と夢の亡者さん」
  そして侵入者は、スタスタと足早に去って行った。
  「あなたはこの夢から必ず覚める。夢の世界が夢の世界でないことに、必ず気づく」
  ほんの少しのエラーを、僕のメモリーに残したまま。
  「・・・・・・」
コクノ「それじゃあおやすみ、コハクお兄ちゃん」

〇黒背景
  コクノの一言で、僕はシャットダウンした。
  ここは、アンドロイドが存在する世界。
  僕がアンドロイドである世界。
  虎丸コハクという人間が、存在しない世界。

次のエピソード:15/新たな我が家

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