第十一話 高校時代【後編】(脚本)
〇コンビニのレジ
足立 雄輔「商品五点で468円になります。 お支払は? バーコードですね」
足立 雄輔「ありがとうございました」
佐伯 栞里「様になってきたじゃない!」
足立 雄輔「もう何ヶ月もやってるんだ いい加減慣れたよ」
佐伯 栞里「だって最初が最初だから(笑)」
佐伯 栞里「客にキレてた頃が懐かしいわ」
足立 雄輔「ちょっと待て そこ、回想入れなくていいからな」
佐伯 栞里「そう? 面白いのに」
佐伯 栞里「今じゃ商品発注から清掃まで 何でも任せられるし。頼もしい限りね」
佐伯 栞里「よっ、バイトリーダー!」
足立 雄輔「うるせぇ! 補充でもやってろ!」
足立 雄輔(ここまで出来るようになったのも こいつのおかげなんだけど)
足立 雄輔(いじってくるから お礼言うタイミング無くなるんだよな)
足立 雄輔「そういや僕、今日は夜学の日なんだけど。 栞里は?」
佐伯 栞里「うん、私も。着替えて待ってて」
足立 雄輔「おっけー」
〇おしゃれな教室
???「つまり、ここからわかるように──」
夜間学校の教員「株主総会では過半数以上の参加が 決議に必要です」
足立 雄輔(よし、最初はさっぱりだったけど だんだんわかるようになってきたぞ)
足立 雄輔(この二年で法律、経済に関する 知識はかなりインプットされた)
足立 雄輔(最初ここへ通うって聞いたときは かなり渋ったけど来てよかったな)
〇空
足立 雄輔「夜間学校?」
〇土手
佐伯 栞里「そう。相手は大企業の社長よ。 戦うには力と知識が必要だもの」
足立 雄輔「でも学校も行ってるのにまた夜も学校? 僕勉強そんなに得意じゃないんだけど」
佐伯 栞里「私は別にいいのよ? あなたが二十歳になって野垂れ死んでも」
足立 雄輔「いや、それは困るよ」
佐伯 栞里「じゃあ、頑張るしかないわね」
足立 雄輔「叔父さんと戦うための力── 資金も貯めていかなきゃならないのに」
足立 雄輔「夜間学校の授業料も支払うのか」
佐伯 栞里「あ、そうそう。 夜間学校はテストで不合格になるとね」
佐伯 栞里「その授業は有料で受け直さなきゃ いけなくなるから」
佐伯 栞里「試験に落ちるほど お金が無くなっていくわよ」
足立 雄輔「何てこった」
〇おしゃれな教室
足立 雄輔(あれから二年か。良く続いてるよな)
〇コンビニのレジ
足立 雄輔(コンビニからスタートして)
〇センター街
足立 雄輔(街頭のビラ配り)
〇スーパーの店内
足立 雄輔(スーパーの店員に)
〇渋谷駅前
足立 雄輔(スクランブル交差点を通過する人の数を 数えるバイトなんかもやったなあ)
足立 雄輔(あれは大変だった)
足立 雄輔「栞里、いまの何人だった?」
佐伯 栞里「聞かないでよ。大きく数が違ったら 自信なくすじゃない」
足立 雄輔「だな。で、これあと何時間やるんだっけ?」
佐伯 栞里「二時間。もう嫌」
足立 雄輔「僕もだよ」
足立 雄輔(どんなに大変なバイトでも 常に隣には栞里がいた)
足立 雄輔(だから、僕は一度もバイトを 投げ出すことが無かったんだと思う)
〇教室
足立 雄輔(教科書借りたりしなくなったら 学校でしゃべる友達も増えてきた)
同級生1「────」
同級生2「────」
「────」
足立 雄輔(何もかも、栞里のおかげなんだ)
〇土手
足立 雄輔(こんなにずっと一緒にいる彼女に 特別な感情を抱かないなんて)
足立 雄輔(無理な話だ)
足立 雄輔(でも、僕は何一つ彼女に返せていない 感謝の気持ちもまだ伝えられてない)
足立 雄輔(そんな僕が彼女に告白だなんて 到底────)
佐伯 栞里「お疲れ様。ごめん、待った? 店長が離してくれなくて」
足立 雄輔「あ、いや。全然大丈夫。 店長に何か言われたの?」
佐伯 栞里「それがさー聞いてよ!」
佐伯 栞里「『高校卒業したら社員になってくれ』って 冗談じゃないわ!」
足立 雄輔「うーん、卒業してコンビニ就職は 普通に考えてちょっと厳しいな」
足立 雄輔「それに栞里は大学出た後、 キャビンアテンダントになるんだもんな」
佐伯 栞里「そうよ! だから私もそう言って断ったのよ!」
佐伯 栞里「そしたらあのオヤジなんて言ったと思う?」
足立 雄輔「え? なんだろ。給料倍出す、とか?」
佐伯 栞里「今度キャビンアテンダントの格好して 出勤して~っていうのよ!」
足立 雄輔「うわっ、キモっ」
佐伯 栞里「でしょーー! 腹立たつわ!」
足立 雄輔「災難だったね」
佐伯 栞里「卒業したら二度とあのコンビニ 使ってやらないんだから!」
足立 雄輔「あ、おい栞里!」
佐伯 栞里「ん? 何?」
足立 雄輔「何? じゃないだろ」
足立 雄輔「帰り待っててくれって言ったのは そっちだろ?」
佐伯 栞里「ん?」
佐伯 栞里「ああ、そうだった!」
佐伯 栞里「雄輔にこれ、あげようと思って」
足立 雄輔「こ、これって!?」
佐伯 栞里「一日過ぎちゃったけど、バレンタイン 雄輔には、普段お世話になってるからね」
足立 雄輔「あ・・・えっ・・・いや・・・」
足立 雄輔(落ち着け雄輔。 特別な意味なんてあるわけないだろ)
足立 雄輔(こんなことで自分の想いを伝えて 関係が崩れたらそれこそ最悪だ!)
足立 雄輔(また独りになるくらいなら 何も言わない方がマシだ!)
足立 雄輔「あ、ありがとう・・・」
佐伯 栞里「あっ! 勘違いしないでね! そういうんじゃないから!」
佐伯 栞里「バイトも夜学も付き合ってくれて ありがとうっていう、そういうやつ!」
佐伯 栞里「一ミリもそんなつもりじゃ 無いんだからね!」
足立 雄輔「ああ、そう・・・ いやまあ、くれるだけサンキューな」
足立 雄輔(良かった。やっぱりそうだよな)
佐伯 栞里「・・・言い過ぎたわ」
足立 雄輔「なにが?」
佐伯 栞里「一ミリくらいは気持ち、入ってる」
佐伯 栞里「じゃ、じゃあまた明日!」
足立 雄輔「待てよ、栞里!」
〇空
佐伯 栞里「なななによ。 明日も早いから急いでるだけよ」
足立 雄輔「待て・・・待ってくれ」
足立 雄輔「こんな後出しで、本当にずるいと思うけど」
足立 雄輔「僕も栞里が好きだ」
佐伯 栞里「えっ!」
足立 雄輔「ずっと言えなかった。この気持ちも 栞里に対する感謝の気持ちも」
足立 雄輔「僕を助けてくれてありがとう。 生き方を教えてくれてありがとう」
足立 雄輔「もし、栞里さえ良ければ、 僕と付き合って欲しい」
足立 雄輔「こんな・・・家族も何もない僕だけど」
足立 雄輔「僕と一緒に・・・生きて欲しい」
佐伯 栞里「雄輔」
佐伯 栞里「・・・うん。わかった」
足立 雄輔「えっ! 本当に!」
佐伯 栞里「本当だって! あんまりしつこいと殴るわよ!」
足立 雄輔「いやったああああ!」
佐伯 栞里「うるさーい!」
〇見晴らしのいい公園
足立 雄輔(そして、僕らは付き合うことになった)
〇遊園地の広場
足立 雄輔(彼女といれば どんな場所だって楽しかった)
〇アパレルショップ
足立 雄輔(親父とお袋がいなくなって 初めて心から笑えたんだ)
〇空
そして、あっという間に時は過ぎ
高校生三年生の冬になった
〇土手
足立 雄輔「寒っ。もう冬か・・・」
足立 雄輔「年明けたらもう卒業だなぁ」
足立 雄輔「栞里も都内の大学だし、 別に遠距離にはならないけど」
足立 雄輔「卒業する前にちゃんとけじめは つけたいよな・・・」
〇街の宝石店
足立 雄輔「・・・」
足立 雄輔(いや、待て待て)
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おぉ...思わず声が漏れました...
これは最後まで一気読みしてしまいそう...
まさかまさかの……。
この展開は予想していませんでした。
最後まで一気にみます!
わぁー!!!!😱
駿が「幸せにしてから突き落とす」に執着する理由を垣間見た気がしました。
ここに至る理由が気になります。栞里が両親を亡くした理由が絡んできたりするのかな。
あと、駿の父の事故の航空会社が現在の栞里の勤め先なのも、地味に怖いですね。