秘密社

扉虫

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〇教室
学生A「また『秘密社』に惚気話しちゃってさ なんか止められないんだよな~」

〇教室
拓也「秘密社に? またご自慢の彼女のことか お前も幸せ者だなー」

〇教室
  今では世界中でありふれた会話
  数年前、世界は超情報化社会を迎え、今では
  ネット上での書き込みやSNSなどが厳重に監視されている
  こんな息が詰まる現代で
  世界中の人々は代わりに
  「秘密社」に秘密を暴露するようになった

〇教室
学生A「拓也だって京子がいるじゃん もうコクっちゃえよ」
  思わず目を反らす。確かに京子とは幼なじみで、気になっちゃいるけど・・
拓也「俺から告白なんて、柄じゃねーよ なんて言えばいいかわからん」
学生A「京子、ずっと・・大好きだったよ」
拓也「そんなの死んでも言えねーよ」
学生A「死んでもって、んな大げさな・・」
  こんなとき、自分の性格が半ば嫌になる
  
  こいつみたいに秘密をぺらぺら
  話せればどれだけ楽か・・
学生A「いいからしちゃえよ!金曜までに、こっちで色々セッティングしてやるからさ」
拓也「金曜?!急すぎるだろ、無茶苦茶じゃねえか!」
学生A「まーまー、とっておきの告白スポットがあるからさー、期待しとけって!」

〇階段の踊り場
  旧校舎四階 人通りは皆無
  
  二人の生徒の影が夕日に伸ばされ
  踊り場から階下へと差している

〇階段の踊り場
  結局あいつに流されて、
  こんななし崩しに告白か・・
  ・・まぁ、やるしかない
拓也「わ、悪いな。呼び出したりして」
京子「ううん。・・えっと、話って何かな?」
拓也「あぁ、、あー、えっと」
  ふぅ・・
  ずっと隠してた、本当の気持ち・・
  言え・・言っちまえ!
拓也「き、今日はイイテンキデスネ」
京子「え?もう夕焼けだけど」
  最悪の沈黙。
  くそ・・そもそも告白とか秘密とか、軽々しく言えるかよ・・
京子「・・拓也が言わないなら、言うよ?」
京子「付き合おうよ、私たち」
  ・・・え?
京子「告白のために呼び出したんでしょ? わかるよ~幼なじみだもん」
京子「でも拓也から言ってほしかったなぁ~」
  ・・・とりあえず、両想いってことだよな?
京子「でも、皆には秘密だよ?・・照れちゃうし・・」
  言うと、京子の顔が夕日に増して赤くなった
  京子の赤面に思わず見とれる
  
  いつもはお喋りなのに、こういうときには弱いのか・・ギャップ萌えってやつかな
  この表情が見れるなら、秘密は墓場まで持っていこう
拓也「うん。じゃあ秘密の付き合いってことで、 これからよろしくな」
京子「うん!ありがとう」
京子「じゃあ」
  『秘密社』に報告しとくね
拓也「・・・・・え?」

  『秘密社』

〇階段の踊り場
拓也「え、二人の秘密じゃないの・・?」
  聞くと、京子の笑顔がとんと失せる
京子「え? 秘密は秘密社に報告って 当たり前のことじゃん 一学期の情報の授業でもそう教わったでしょ?」
  おかしい
  俺は今年、情報の授業をとっていない
  京子だってそうだ
京子「それに、秘密は守るより 暴露するほうが快感じゃん!」
京子「わかってくれるよね?」
  ・・・おかしい
拓也「そんなの、おかしいだろ! 秘密を暴露して、快感なんて・・ どうかしてるぞ!!」
拓也「それに、秘密社に報告って、  秘密社って・・」
  ・・あれ?
  秘密社?
  秘 密 社 っ て 
  な ん だ っ け ?
京子「あー。きみ・・ 洗脳とけかかってるねー・・」
拓也「・・洗脳?」
京子「そうだよ、まー教えても良いかな 世界の秘密」
  京子は妙に生き生きして語りだす
京子「ちょっと昔、誰もが秘密を暴露したがってた。 でも秘密なんてすぐ拡散されちゃうし 黙ってるしかなかった。 こんなの辛いよね」
京子「だから、世界中の人間が、一つの会社に 秘密を暴露するように洗脳した。 これが私たち秘密社」
京子「あっ、秘密社は口が堅いから そこは信用して大丈夫だよ?」
京子「私たちは秘密の暴露と個人情報の保護を 両立させたの。ここ最近は犯罪もめっきり 減ったらしいし これって幸せなことだよね?」
  ・・・そんなのって
拓也「違う!! 大切な人と、二人だけで共有する、 そこに意味があるんだよ!!」
拓也「誰かに知られたら、 それはもう秘密じゃない!!  暴露して快感なんて、間違ってる!!」
  沈黙の中、拓也の叫びが吹き抜けに反響する
京子「・・・・そっか」
京子「拓也くん」
  京子が、こっちへ一歩近づいた。
  京子の顔が・・・やけに近い
拓也「ちょっ、京子!?」
  芳香が鼻をかすめる。京子が、にやりと笑った・・ような気がする。まさか・・これって
拓也「えっ、えっと、そういうことは、まだ早いっていうか、心の準備が・・」
  京子の両手が、俺の両肩に置かれた。
  京子・・
  でも、京子なら。
  
  覚悟を決めて、目を閉じる
京子「きみはさ、言ったよね。 誰かに知られたら、それは秘密じゃないって」
京子「でも、きみは世界の秘密を知っちゃったよね」
京子「なら、忘れなきゃ駄目だよね」
  ドン!
  両肩を押されて、世界が反転する
  京子に押し倒されたのか・・?
  違う
  階段から、落ちてる

〇階段の踊り場
京子「残念だなぁ、拓也君、素敵なカップルになれると思ってたんだけど」
京子「暴露する快感が分からないなんて、変人だなぁ・・」
京子「殺しちゃったことも 秘密社に報告しなきゃ」
  後頭部が熱い・・視界が揺らめく
  京子がかすんでいく
  言わなきゃ
  京子が見えるうちに・・言え、俺
  「京子、ずっと・・大好きだったよ」
  死んでも言えないって思ってたのに
  
  殺されてから言うなんて・・
  馬鹿げてるな、俺・・
  
  でも、悪い気はしない
  そっか
  「これが、秘密を暴露する快感かな」

コメント

  • 秘密は皆んなに秘密にしてるから秘密。秘密はみんなで共有する。秘密結社に報告すれば秘密になる。奥の深いストーリーでした。

  • 秘密を秘密としてずっと持っておくのは時にしんどく、誰かにしってもらいたいくなりますよね。ドキドキしながら読み進めさせて頂きました。楽しかったです。

  • 秘密は秘密のままだから尊いと思っていましたが、たしかに、誰にも言わずに黙っているのがつらこともあります。秘密を共有することでしか繋がっていられない人間関係のほうが、もしかしたらいびつなのかもしれません。反対に、非道を誰かにしゃべってしまうと、すっごくスッキリする感覚はよくわかります。現代社会ではもしかしたら、誰かに教育されたりしなくても、みんなこっそり吐露する場所をもっているのかもしれません。

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