ロスト陰陽師-HARUKO-

シュウ

第5話 商売敵、現る!②(脚本)

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〇木の上
ハルコ「どこやねん、ここ」
リカ「木の上です」
ハルコ「なんで、こんなところで双眼鏡片手に 一軒家を見張っているのかって訊いてるの」
リカ「依頼内容を聞いてなかったのでしょうか?」
ハルコ「乙女の不満を汲み取って~!」
タダシ「おうハルコ! どうだい進捗は?」
ハルコ「師匠!」
ハルコ「お腹が空きました!」
タダシ「もっと意味のあることを頼む」
リカ「パンならありますよ」
ハルコ「わーい!」
ハルコ「ちょっと今はそれじゃない」
ハルコ「あんぱんとかない?」
リカ「ワガママですね」
リカ「フィナンシェですよ?」
ハルコ「うわ~、悪意ある解釈された~!」
タダシ「俺の差し入れは気に入ってもらえたかい?」
ハルコ「もぐもぐもぐもぐ」
ハルコ「ふぁい、おうぃふぃうぇふ (はい、おいしいです)」
タダシ「喜んでもらえて嬉しいぜ」
タダシ「早めのディナーだ」
タダシ「もう金がねぇ」
ハルコ「もぐもぐ・・・ごっくん」
ハルコ「・・・しょっぺぇ」
リカ「味覚異常ですよ」
ハルコ「泣いてんじゃい」
ハルコ「ん?」

〇綺麗な一戸建て
ハルコ「いってーな、クソ!」
リカ「何故『陰陽五行』を使わないのですか?」
リカ「着地など造作もないことだと思うのですが」
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ(インヨウゴギョウ?)
リカ「ご存じありませんか?」
リカ「以前説明しましたが」
ハルコ「あー、あれね! 魔法的な!」
リカ「違います」
リカ「そのような陳腐で低俗なフィクションでは ありません」
ハルコ(魔法に親でも殺されたの?)
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ(なら仕方ない、か)
ハルコ「ご冥福をお祈りいたします」
リカ「誰の?」
リカ「茶番はさておき、出てきますよ?」
ハルコ「え? 誰が?」
リカ「ターゲットです」
ゴロウ「行ってきます」
リカ「追いかけましょう」
ハルコ「イエッサー!」
ゴロウ「ん? 誰かいます?」
ハルコ(マズい! ごまかさないと!)
ゴロウ「何だ、ニワトリか」
ハルコ「ふぅ」
リカ「行きましょう」

〇繁華な通り
ゴロウ「きょろきょろ」
ハルコ「怪しい」
リカ「どなたか探しておられるようですね」
ハルコ「やっぱり浮気?」
ハルコ「奥さんの予想的中っすなぁ」
タダシ「焦りなさんな」
タダシ「クロならじきに尻尾を出す」
タダシ「探偵なら辛抱強く待つこった」
ハルコ「はい!」
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ(探偵?)
リカ「ターゲットが立ち止まりました」
リカ「女性と会話しているようです」
ハルコ「もうそりゃクロっしょー!」
ハルコ「取り押さえてやりますよー!」
ハルコ「このアタシのインヨウギョギョ──」
リカ「・・・・・・」
リカ「さて、もう少し近づきましょうか」
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ「つれぇよ、師匠」
ハルコ「ツッコんでもくれねぇ」
タダシ「悔し涙は漢の証さ」
ハルコ「女子だわ」

〇繁華な通り
ミツ「いらっしゃいませ〜!」
ゴロウ「実は最近、体調が優れないようでして」
ゴロウ「内科でも異常は見られないとのことでした」
ゴロウ「精神科を受けようと思うのですが──」
ゴロウ「その前に1度霊障(れいしょう)がないか 見ていただきたいのです」
ミツ「うーん、うちはそういうお店では ありませんが──」
ミツ「ちょっとやってみま~す!」
ハルコ(そんな軽いノリで!?)
ハルコ(これが売れる占い師のやり方か!)

〇繁華な通り
ミツ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ミツ「このおじさんにぃぃぃぃぃぃ!!」
ミツ「悪いものはついてますかぁぁぁぁぁぁん!?」

〇繁華な通り
ミツ「ズバリ、お化けは関係ないそうです~」
ゴロウ「そうですか! ありがとうございます!」

〇実家の居間
ハルコ「──ってな感じでシロだったよ!」
タダシ「・・・・・・」
タダシ「リカ、お前さんはどう思う?」
リカ「質問の意味がわかりません」
タダシ「ターゲットが怪しいかと訊いているのさ」
タダシ「【鬼】だと思うか?」
リカ「質問の意味がわかりません」
タダシ「お前は陰陽師じゃねぇ」
タダシ「【鬼】に見えるかどうかは訊いてねぇよ」
タダシ「【鬼】に支配されるような心理状態に 見えるかどうかを訊いてるんだ」
リカ「質問の意味がわかりません」
タダシ「え、何? 壊れた?」
ハルコ「セクハラだ~!」
タダシ「質問しただけで!?」
ハルコ「どーせ『壊れた』ってのも暗喩的なヤツ なんでしょ? やらし~!」
タダシ「お、おいおい!」
タダシ「そういう意味じゃねぇって・・・!」
ハルコ(ウブかよ)
リカ「ターゲットの心理状態はひどく 落ち込んでいますが、安定しています」
リカ「【鬼】になる要素は少ないと思われます」
タダシ「そうか」
タダシ「ハルコはどう思う?」
ハルコ「質問の意味がわかりませ~ん!」
タダシ「ならいい! よし、寝よう!」
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ「やぁ〜 しわすのぉ〜 オンナ〜は〜♪」

〇おしゃれなリビングダイニング
タダシ「──以上、2週間調査いたしました結果 旦那さんの浮気はございませんでした」
タダシ「上司、部下からの信頼も篤く とても優れた人格者であると有名です」
タダシ「とても良い旦那さんをお持ちに なりましたな」
タダシ「いやはや羨ましい」
ミホ「そんなはずありません!」
ミホ「現に主人は私のことを殴りました!」
ミホ「腕にアザだって残ってるんです!」
ミホ「子供にまで手を上げたんですよ!?」
ミホ「浮気相手がいて、私たちに愛想を 尽かしたからに決まってます!」
タダシ「以前にも申し上げましたが」
タダシ「警察にご相談されてはいかがでしょうか」
タダシ「暴力沙汰となれば、早急に動いて──」
ミホ「警察沙汰は御免です!」
ミホ「どうせ証拠がなきゃ動いて くれないんですから!」
ミホ「それに私は・・・主人を愛しています」
ミホ「昔のあの人に戻ってさえくれれば・・・」
タダシ「何か旦那さんに変わったことは ないでしょうか?」
タダシ「ストレスが溜まるような何かがあった」
タダシ「あるいはしてしまったということは?」
ミホ「ありません」
ミホ「私もヒカルもいつもどおり接していた だけです」
ミホ「そもそもあの人は仕事が忙しくて 夜遅くにしか帰ってきませんから」
タダシ「『ヒカル』というのは息子さんですかな?」
ミホ「はい」
ミホ「ほら、そこにいます」
ヒカル「・・・こんにちは」
タダシ「こんにちは」
タダシ「今日はお父さんが疲れてるみたいだから お母さんから事情を聞きに来たんだ」
タダシ「最近、お父さんのことで変わったこととか あるかい?」
ヒカル「・・・・・・」
ヒカル「・・・ない、です」
ミホ「『ありません』、でしょう?」
ヒカル「ありません」
ミホ「すみません」
ミホ「ヒカルは中学受験を控えているので 少し疲れているみたいなんです」
タダシ「中学受験ですか」
タダシ「ご立派な息子さんだ」
タダシ「さぞ優秀なことでしょう」
ミホ「いえ、学校では優秀だと言われますが 塾の子と比べるとどうしても・・・」
ミホ「話が脱線しましたね」
ミホ「ご調査ありがとうございます」
ミホ「引き続きお願いできますか?」
タダシ「ええ、謹んでお受けいたします」
タダシ(こりゃ、クロかもしれねぇな)

〇オフィスのフロア
ハルコ「えへへ~、失礼しますぅ~」
ヒロノブ「新しい掃除の子か、ずいぶん若いね~」
ハルコ「片親なので働かなきゃならないんです~!」
ヒロノブ「それはそれは」
ヒロノブ「若いのにずいぶんしっかりしたお嬢さんだ」
ヒロノブ「とは言え、仕事は仕事だ」
ヒロノブ「しっかりやってくれたまえ!」
ハルコ「は〜い! ありがとうございますぅ~!」
ハルコ(何やってんだろ、アタシ・・・)
リカ「ハルコ、ターゲットは会議中のようです」
ハルコ「ほげッ!?」
ヒロノブ「どうかしたかい?」
ヒロノブ「えーっと、そっちの子は?」
ハルコ「あはは、すみません、ちょっと便所〜!」
ヒロノブ「おお、ジャマしてすまなかったね」
ヒロノブ「お仕事ご苦労さま」

〇女子トイレ
ハルコ「なんでリカだけOL風なの!?!」
ハルコ「アタシは師匠から掃除のおばちゃんの服 渡されたっていうのに」
リカ「私はOL風の衣装を渡されただけです」
リカ「他意はありません」
リカ「それに清掃業者がオフィスにずっと いるのは不自然でしょう?」
ハルコ「た、確かに・・・!」
ハルコ「いや、知らない社員が紛れ込んでるほうが おかしいでしょ!」
リカ「大丈夫です、オフィス広いから」
ハルコ「あれ~バカな子なの~?」
ハルコ「あ、そうだ!」
ハルコ「だったら、アタシと変わってよ!」
リカ「ハルコは髪が派手だからバレますよ?」
ハルコ「誰が誰に言うとんじゃい!」
ハルコ「・・・まぁいいや」
ハルコ「社長さんに顔覚えられちゃったし」
ハルコ「アタシは男子トイレを監視するよ」
リカ「あの人は社長ではありませんよ?」
ハルコ「えっ!?」
リカ「通りすがりのおじさんです」
ハルコ「この会社こわ~い!」

〇オフィスのフロア
ゴロウ「・・・ふぅ、疲れた」
ゴロウ(他の人はもうみんな帰ってしまったな)
ハルコ「お茶でもどうぞ」
ゴロウ「ああ、ありがとうございます」
ゴロウ(この子、『シフト』というものを理解していないのかな?)
リカ「携帯電話が鳴っていますよ?」
ゴロウ「ああ、ありがとうございます」
ゴロウ(この人・・・誰だ?)
ゴロウ「・・・・・・」
ゴロウ「・・・帰らないとな」
ハルコ「帰っちゃった」
リカ「どうやらクライアントからのようです」
ハルコ「内容見えた?」
リカ「そんな、はしたない真似はしません」
ハルコ「アタシが悪いの~?」
リカ「ですが、反応を見る限り、ポジティブな 内容ではなかったようですね」
ハルコ「せやね」
ハルコ「・・・・・・」
ハルコ「とりま帰ろっか」
リカ「ええ」
ハルコ「あれ? 鍵が・・・」
ハルコ「わぁぁぁあああ! 逃げるよ、リカー!」
リカ「ええ」

〇繁華な通り
ニュースキャスター「先ほど○○株式会社へと不法侵入し 窓ガラスを割って逃亡したとして──」
ニュースキャスター「芳田広伸(よしだひろのぶ)容疑者が 逮捕されました」

〇実家の居間
ハルコ「ありがとう、社長・・・」
リカ「尊い犠牲でしたね」
ハルコ「よし、ご飯にしよ~!」
リカ「サイコパス」
タダシ「おふたりとも、ご苦労さん」
タダシ「明日は俺のほうを手伝ってくれ」
リカ「わかりました」
ハルコ「わっかりましたー!」
ハルコ「そう言えば、師匠」
ハルコ「何でアタシは作業着なの?」
ハルコ「リカはパンツスタイルなのに」
タダシ「適材適所ってやつだ」
タダシ「さすがに知らねぇ奴が2人も混じってたら 怪しまれるだろ?」
ハルコ「そうだけど」
ハルコ「何でアタシがOLじゃダメだったんですか?」
タダシ「だってリカのほうが可愛いじゃねぇか」
ハルコ「ぶん殴るぞ、クソジジイ」

〇綺麗な一戸建て
  数日後
ミホ「主人のこと、何かわかりましたか?」
ミホ「えーっと・・・」
ハルコ「『賀茂塾』所員のアベノハルコです」
リカ「リカです」
ミホ「お若いのに苦労されてるんですね」
ハルコ「いえいえ! 金のためですから!」
ミホ「・・・・・・」
リカ「ハルコ、金を稼ぐ理由を訊いているのですよ」
ハルコ「ああ、そっか」
ハルコ「ししょ・・・所長の生活費を稼ぐためです」
ミホ「・・・・・・」
ハルコ(泣かせてもうた)
ミホ「報酬は弾みます」
ハルコ(ラッキー!)
リカ「結論から申し上げますと──」
リカ「ターゲットに不審な点は見受けられませんでした」
ミホ「そんなはずない!」
ミホ「ちゃんと調べたんですか!?」
ミホ「あの人は変わりました!」
ミホ「絶対何かあったはずです!」
リカ「確かにあの人は変わりました」
リカ「心を病み、家に帰ることに 浮かない表情を浮かべるまでに」
リカ「貴方が追い込んだのでしょう?」
リカ「暴言、暴力で」
ミホ「何言ってるんですか!?」
ミホ「暴力振るわれたのは私ですよ!?」
ミホ「ヒカルだって被害をこうむっているのに!」
リカ「その子から聞いたのです」
ミホ「えっ──!?」

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