真夏の人間日記「僕達は悪魔で機械な青春が死体!」

不安狗

12/死者(脚本)

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不安狗

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〇小さいコンビニ
星木ミウ「おつかれさま」
  「・・・・・・え、副、会長?」
  店の外で腕組みをして壁に寄りかかっていたのは、右目に眼帯を付けた生徒会副会長、
  つまり昨日のコンビニ強盗犯、ミウさんだった。
星木ミウ「副会長、って・・・・・・。コハク君だってそうでしょ?」
  「それはそうだけど・・・・・・何でここに・・・・・・」
  「だって、いなかったことになってたんじゃ・・・・・・」
星木ミウ「・・・・・・」
  「ていうか、ここにいるってことは・・・・・・」
  「まさか、またコンビニ強盗?」
  彼女は少したじろいだように見えたが、腕を組みなおして僕の横に立った。
星木ミウ「違う、けど・・・・・・」
星木ミウ「昨日はその、ごめん」
星木ミウ「コロンを何とかして誘き出したかったんだけど、他に方法が思いつかなかった」
  「えっ」
  彼女の口から、コロンの名前が出てくるとは思わなかった。まさか会ったことがあるのか?
星木ミウ「フェイズ1・・・・・・」
星木ミウ「空が赤くなる前に、終わらせなきゃと思って・・・・・・」
  自分自身に言い聞かせているかのように、彼女の声が段々小さくなっていく。
  「・・・・・・ミウさん、コロンのこと何か知って」
星木ミウ「避けて!」
  「え」

〇小さいコンビニ
  一瞬、何が起きたのかわからなかった。
  僕はミウさんに押し飛ばされて尻もちをついた。
  そしてミウさんは、コンビニの中から飛び出してきた山河店長に突き飛ばされ、駐車場の隅にうずくまっていた。
  いや、ミウさんを突き飛ばしたそれは、多分もう山河店長では無くなっていた。
  山河店長の姿をした、赤い空に照らされた、ゾンビ。
  「店、長・・・・・・?」
  それが、ミウさんの右足を踏みつける。
  彼女の悲鳴が、赤い空に響く。
  「ミウさん!」
星木ミウ「コハク君、逃げて・・・・・・」
  「え、いや・・・・・・」
星木ミウ「早く、久野さんのところに・・・・・・」
  その時なぜか、ゾンビが思い出したようにこちらを見た。
  音は立てていなかったはずなのに、目が合った気がした。
  掴んでいたミウさんの右腕を離し、僕を見ている。
  「・・・・・・あ」
  いや、違う? 僕じゃなくて、僕の、手元?
星木ミウ「その銃・・・・・・」
  ふと目を落とした先、コンビニの駐車場に、金の銃が転がっていた。
  手を伸ばせば届く距離。なぜそこにあるのかはわからない。
  辺りを見回すが、コロンの姿は見当たらなかった。
  「・・・・・・これで」
星木ミウ「いや、そうは、させない!」
  僕の方に向かってこようとしていたゾンビの足を、なぜかミウさんが掴み足止めした。
  ゾンビの標的は、再び彼女へと戻る。
  「・・・・・・」
  悪魔が使っていた金の銃。
  咄嗟にそれを拾った僕は、何も考えることなく立ち上がり、ミウさんに馬乗りになっていたゾンビに、銃口を向けた。
星木ミウ「コハク君・・・・・・」
  そして、そのこめかみを撃っていた。
  次に口の辺りを、その次に脳の辺りを、僕はその銃弾が無くなるまで、そのゾンビの頭部を撃ち続けていた。
  気づいた時には、ゾンビだったものは倒れ動かなくなっていた。
  「・・・・・・」
星木ミウ「最悪・・・・・・」
  少し気まずそうなミウさんが、倒れたゾンビの下から這い出てきた。
  我に返った僕は、慌てて駆け寄り手を貸す。
  「ミウさん、足、大丈夫ですか?!」
星木ミウ「大丈夫じゃない、けど・・・・・・ごめん。私、余計なことしかしてない」
  いつの間にか、コンビニの周囲にはまた別のゾンビが徘徊し始めていた。
  「いや、そんなことは・・・・・・」
星木ミウ「とにかく、久野さんに会って」
星木ミウ「フェイズ2、世界が戻れば、この傷も、あの人も元に戻るから」
  足をさすりながら、彼女は疲れた顔で店長の死体を見つめる。
  「・・・・・・」
星木ミウ「・・・・・・その銃、貸してくれる?」
  「え、はい」
  「でも、もう弾は残ってないと思うけど・・・・・・」
星木ミウ「うん・・・・・・」
星木ミウ「その銃は、私が空にしなきゃいけなかった」
  彼女は僕から受け取った弾の入っていない銃を、僕に構えた。
  「え?」
星木ミウ「コハク君、久野さんに、よろしくね」
  「いや・・・・・・後ろ!」
  彼女の背後に、いつの間にか別のゾンビが迫っていた。
  そして彼女が引き金を引く前に、振り返った彼女の右肩、しっかりと嚙みついた。
  「ミウさん!」
  僕は無我夢中で、ゾンビを殴り飛ばしていた。
  しかし僕のいる位置からでは、彼女の後ろのゾンビに手は届かないはずだった。
  でも、確かに手応えはあった。
星木ミウ「え・・・・・・」
  僕の右腕は、僕の身体から発射されて、ゾンビを殴り飛ばしていた。
  「・・・・・・」
  そしてその右腕は宙を飛び回り、周囲にいた残りのゾンビ全ての頭部を粉砕して僕の身体に戻ってきた。
  真っ白な、明らかに人間のものでは無いその腕。
  それはもう、いわゆるロケットパンチだった。
星木ミウ「これが、フェイズ3・・・・・・?」
  ミウさんが、右肩を押さえながら銃を拾って立ち上がった。
  「ミウさん、これって・・・・・・」
  気づくとまた、別のゾンビの群れが僕達の方に集まってきている。
星木ミウ「・・・・・・ごめん、後は任せて」
  「いや、でも、ミウさん、今、嚙まれて・・・・・・」
星木ミウ「大丈夫。私ももう、死んでるから」
  「え」
星木ミウ「・・・・・・コハク君だって、そうでしょ?」

〇病室
  今朝見た、病室で白い布をかけられている自分の姿が思い出される。
  僕は本当に、もう死んでるのか?

〇小さいコンビニ
  そして、ミウさんも・・・・・・?
  「・・・・・・」
  ミウさんが改めて、僕に銃口を向けた。

〇黒背景
  そして周囲が、真っ暗になった。
星木ミウ「・・・・・・コハク君」
星木ミウ「久野さんのこと、守ってあげてね」

〇一戸建ての庭先
  目を開けると、久野の家の前に僕は一人で立っていた。
  空は黒く、ミウさんも、大量のゾンビもいない。
  「・・・・・・」
  ミウさんのことも心配だが、今はまずオーナーのおつかいを済ませなければならない。
  僕はプラスチックの白い手で、
  オーナー、久野フミカの自宅の玄関のチャイムを押した。

次のエピソード:13/アンドロイド

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