君色に染めて

ちぇのあ

無(脚本)

君色に染めて

ちぇのあ

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君色に染めて
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〇道場
  武芸に励み己を磨く場には到底合わぬ光景
  彼の者が憎しみを込めつがえる先に矢を回収する少女が居る
  並々成らぬ情念を抱く瞳の黒で視界は埋まる

〇柔道場
  流麗な髪を靡かせ登壇する少女に拍手を送る中異様な雰囲気を纏う男
真白 愛「皆様ようこそ!」
真白 愛「私が指南役の真白愛です」
真白 愛「早速ですが力を見る為、この弓矢で射て頂きます」
真白 愛「その後適正に応じてクラスを分け指導します」
兎黒 郷「・・・」
真白 愛「今日は名簿順です」
真白 愛「時折指導もしますが自然体で受けてくださいね」
  笑顔で挨拶と説明を終える彼女を群衆とは違う目で捉える

〇道場
  名簿順に射る者達
  甲斐甲斐しく世話を焼く彼女
  そして待ちわびた時が来る
兎黒 郷「やっと終わる」
  弓は撓り綺麗な弧を描き強い情念を込め放つ
  刹那にも満たぬ時
  振り向き様に可憐な瞳は射者を映し微笑む
  唇が僅かに動く
  ごめんね?
  矢筋が逸れ軌道は髪の間を薙ぐ
  避ける素振りすら無い
  警戒する彼に自然体に寄り優しく話し掛ける

〇稽古場(椅子無し)
真白 愛「姿勢は真っ直ぐに、頭上から糸で釣られる意識を持って」
真白 愛「手首が弦に当たるから持ち方はこう」
  手と手が触れる
  瞬間脳内に濁流の如く記憶が流れ込む
兎黒 郷「ぁ」
兎黒 郷「ぁあ」
兎黒 郷「ああああ・・・!!!」
兎黒 郷「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

〇葬儀場
  未だ割拠する戦乱を終戦へ導いた父が去る

〇立派な洋館
  その後夜雲家へ身を寄せる

〇豪華な部屋
  しかし遺族引当金は彼に使われず見下され空腹に飢え贅の限りを尽くす夜雲夢宙の姿を見ても耐え続けた

〇宇宙空間
  誰にも好かれぬ事を迎えた生誕日に知る

〇屋敷の書斎
  飲み薬は唯一賞賛され以降本草学医術と知識の蓄積に励む

〇装飾された生徒会室
  七歳
  群青葵の魔導教室に呼ばれる

〇装飾された生徒会室
  彼の笑顔は真白が現れると共に消えた

〇拷問部屋
  事ある度に比較され虐待は苛烈を増す

〇村に続くトンネル
  友は眩しい彼女へ行き二度と戻らない

〇村に続くトンネル
  魔王の死亡が全土に伝わる

〇城
  隣接国の均衡が崩れ各国に不穏な動きが見られる

〇森の中

〇鍛冶屋

〇怪しげな祭祀場

〇魔王城の部屋

〇噴水広場

〇山間の集落

〇森の中

〇立派な洋館
  世界の均衡を崩し大罪を背負い遺族引当金は廃止
  戦犯者の息子は夜雲家を追われる

〇けもの道
  八歳
  採集帰りの暗い夜奴隷商に攫われる

〇屋敷の牢屋
  生気の無い物達を見送る

〇闇の闘技場
  ある日対峙するは異形
  奴隷と魔物と合成した成れの果て、塗布した劇薬が効き止めを刺す

〇お化け屋敷
  同年飯に盛った遅行性の劇薬で依存した監視役を寝返らせ奴隷商の首級を得る
  直後監視役の胸を貫き囚われの奴隷を開放した際賞金首を質に売られた幼馴染を開放する為の資金が必要な奴隷に渡す

〇湖畔の自然公園
  九歳
  遺品漁りをする最中湖畔の傍らに佇む者を発見
  冒険者の証を入手し最寄りのギルドで改名手続きを済ませ功績を重ねる

〇武術の訓練場
  十歳
  記憶が曖昧な時期が多い
  魔法鍛錬

〇城の救護室
  薬学修得

〇西洋風の受付
  ギルドの昇格

〇市場
  資金繰りも順調
  まるで不幸な人生の反動の様
  時々強烈な視線を感じるが気のせいだ

〇市場
  十一歳
  露店で薬を売り

〇西洋風の受付
  ギルドで功績を重ね

〇王宮の入口
  魔導の国の試験を受け若年齢で採用される
  秘密裏に真白家が推薦状を魔導の国に送っていた事を彼は知らない

〇空
  十二歳
  名声は徐々に轟き世界樹の国まで届く

〇大樹の下
  十三歳
  世界樹の国の友好的な引抜を受け当初の魔法職は埋まり急遽弓術職に就く

〇稽古場(椅子無し)
  翌年現在
兎黒 郷「嘘だ・・・こんな事・・・あぁぁ・・・」
  力無く跪く彼を献身的に支える姿
  慈愛の瞳が極限まで白を彩る

〇ファンタジーの学園
  七歳の誕生日を迎えた

〇豪華なベッドルーム
  家系、器量、才能、容姿に恵まれ何不自由無く育った

〇合宿所の稽古場
  苦労や努力をしたことが無い

〇特別教室
  伸び代で誰かに負けた事も無い

〇特別教室
  次第に良い子をするのに飽きた

〇白
  周りの妬みを気にして加減するあたしが嫌いだ
  退屈していた
  平穏ながらもつまらない人間関係に疲れその穴を埋める刺激を求めていた

〇山の展望台
  そんな中気になる男の子が現れた
  教室を避けテラスに行くと座るのはどこか儚い笑顔をこちらへ向ける少年

〇特別教室
  すぐ目で追う様になる
  私と彼は対だ

〇華やかな広場
  一途で只直向きな愚直さ

〇道場
  誰より努力を惜しまない

〇結婚式場前の広場
  嘘を知らぬ聡明さ

〇山の展望台
  飾りじゃない本当の笑顔

〇豪華なベッドルーム
  私の考え方を変えてくれた
  遠慮せずに全力でぶつかる事の素晴らしさを教えてくれた
  精霊様の加護?
  心信深い父の徳?
  違う
  私が生まれた意味は全てこの出逢いと愛の為だと確信した

〇特別教室
  彼の目に留まりたくて彼の友の関心を引き付けても彼は落ち込むだけだ
  何で?

〇華やかな広場
  彼の好意は学ぶ喜びを教えた魔導士へ向いていた
  何故私に向かないの?

〇黒
  手に入れられない物は何も無かった
  何が歴戦の猛者だ
  許せない
  あの女が醜い
  憎い!!!!!!!!

〇特別教室
  程なくして魔導士は失踪した

〇クリスマス仕様の教室
  教室は離散し真白家の教室へ彼を招待した
  しかし突如彼は失踪する

〇山の展望台
  以来日夜問わず探した

〇王宮の広間
  八歳
  行方を眩ました客将の紅桜織が帰還する
  囚われた後彼に助けられたと言う
  債権の一環で抑えた質の紫雲寺鳴の開放を要求される
  彼の情報を聞き開放した

〇王宮の広間
  私が囚われて彼に救われたかった
  彼の寵愛を受けた客将も人質も憎くてたまらない
  しかし彼が成した御業を私が虚無に還すのは違う

〇大樹の下
  二人を罰する事を思い留まり彼の捜索に尽力した
  時は厳冬
  芳しい成果は上がらず希望と渇望を栄養にして育つべき果実はその実を蓄える事は無かった

〇豪華なベッドルーム
  九歳
  幸運にもギルドに彼が来訪したと知る
  食事も着替えも忘れ駆け出す

〇おしゃれな受付
  彼だ
  私だけの光
  希望
  憧れ
  私が支え続ける

〇市場
  店の繁盛を願い定期的に露店の品を購入させた

〇西洋風の受付
  依頼を探す時間に合わせ割の良い案件を下請けや個人を仲介し発注する

〇拷問部屋
  彼に必要以上に近寄る有象無象は例外無く排除した

〇山中の滝
  十歳
  積極的に彼に近づく為精進試験に必要な徒党員として彼に加わる
  感動の再会だが目は暗くまるで私を認識していない
  何があったのか知る必要がある
  彼の特異な体質はギルド証の魔法式に隠された鎖を紐解いて知る

〇屋敷の書斎
  家の秘蔵の魔導書を持ち出す

〇山中の滝
  他者の能力を一時模倣できる
  迷わず彼の固有能力を得る
  彼の全てを知り受け止め愛する為手の平を重ねる
  意識が共有され私の想いが伝わり彼の瞳に光が宿る
  私を認識してくれた
  驚く本来の優しい彼に微笑み頬を伝う涙を拭いてもらう
  本当は私が慰めてあげるべきだが受ける愛も幸せだ
  束の間の幸せを甘えつつ受け続ける

〇王宮の入口
  十一歳
  夜雲家との利権争いで得た資金を魔導の国に献上
  採用試験の便宜を図らせた
  真白家の手元に置き独占したいが彼の意思で私に振り向くのを只待つ

〇謁見の間
  もう我慢できない
  魔導理論で対立しつつある魔導の国との開戦阻止と外交正常化の礼にとある同盟国の全部門の最高職に就く

〇稽古場
  内に抱く強い情念は必ず私を射てくれると確信し弓術師範として彼が来るまで研鑽に励む
  彼が全てを想い出すその時の為に努力を惜しまず魔法では培えない身体も磨いて彼好みの女になる
  忌わしい魔導師が脳裏を過り感情の抑えが効かない
  生意気なお局を原型が無くなるまで的にして射た
  射抜いた矢筈に火矢を放り込む
  熱き想いを体現するかの如く焔が轟々と心地良い音色を奏でる

〇森の中の沼
  その後誰も来ない奥地に作った略式の転移陣に捨てた

〇女の子の一人部屋
  肝心な事に気付く
  筋肉質な女では彼に冷められてしまう

〇美容院
  急遽指圧療法と乳液で美容する

〇稽古場
  師範の修行から方向性を変える
  程良い胸筋
  出過ぎない程度の腹筋
  絶妙で理想的な大腿筋
  魔術で常に顔に圧力を負荷し小顔を維持
  同時に魔力の質と総量を上げる
  万全の状態で彼を迎えよう

〇道場
  翌年
  世界樹の国弓術道場
  彼の熱い視線に興奮と悦びが溢れる
  好奇と欲情を注ぐ忌まわしい害虫共は必ず後で消す
  仮初めの私が愛想良く話す
  漆黒の瞳が私の頬を仄かに染める
  今すぐこの想いを彼に伝えたい
  永遠に彼を愛したい
  それがもうすぐ叶う
  まるで幾年も幾千も耐え続けた流氷が大地へ還るのを待ち詫びる様だ
  あぁ今すぐこの場に居る邪魔者をこの精霊と神が愛したとされる世界樹の元に還し彼と結ばれて祝福と寵愛を受けたい
  極大の期待に身体が震える
  やっと彼を指導する時が来た
  私に似合わぬ努力が報われる
  精霊の加護により情念を込めた一矢を受け止める事は叶わなかった
  すぐに寄り添い崩れ落ちる彼の傍らでそっと目を閉じてあの時以来の束の間の安息と幸せを想い出していた

コメント

  • 兎黒の過酷で壮絶な半生のクロニクルと、ひたすら彼の存在を追い求めることだけに日々を費やす真白の執念の記録が別々に語られる演出が良かったです。黒と白の間で流された無数の血の赤に汚されて、結局最後まで二つの色は純粋に交わることなく悲劇的な終末を迎えてしまった。ラストの余韻が味わい深いです。

  • 彼の視点からの世界と彼女の視点からの世界が全く違って描かれていて同じ世界のはずなのに新しい視点で見ることができました。愛が深すぎるのも恐ろしいものだと思いました。

  • 何もかもがなかったこと、何もかもがあった子の恋の話…なのですが、ホラーを感じるような怖さでした笑
    憎しみが溢れ出すところから見る目が変わってしまいました!

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