死亡確定令嬢 ~生存ルートを求めて~

逆境 燃

第一話『生存ルートを求めて』①(脚本)

死亡確定令嬢 ~生存ルートを求めて~

逆境 燃

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〇闇の要塞
  夜、監獄にて
  一人の少女が死刑執行の時を待っていた―

〇牢獄
執行人「時間だ。飲め」
レイリィース「・・・」
執行人「早くしろ。 それとも無理やり飲まされたいのか?」
レイリィース「・・・」
レイリィース「それ・・・ そのワイン、どこの何年物ですの?」
執行人「ああん?」
レイリィース「人生最後に飲むワインですもの。 それぐらい聞いても構わないでしょう?」
執行人「・・・チッ」
執行人「シャルノー・メトゥール。 93年物だ」
レイリィース「メトゥールの93・・・。 わたくし、赤はラノワールの83年がよろしいんですけど」
執行人「黙れ!この売国奴が!! 贅沢を言うんじゃない!!」
執行人「国王陛下を暗殺しようとした罪でこれから死ぬって時に何を言ってるんだ!」
執行人「本当ならギロチンで国民の見世物にするところを、陛下のご恩情で毒薬での自死になっているんだぞ!」
執行人「これ以上なにを高望む!?」
執行人「分かったらさっさと飲め!」
レイリィース「まったく」
レイリィース「うるさい方ですわねぇ」
レイリィース「ただ単に次はラノワールの83年物が飲みたいと、そう思っただけですのに」
執行人「そんな機会、貴様にはない!!」
レイリィース「はいはい」
レイリィース「それじゃ頂きますわ グラスをよこしなさいな」
執行人「フン!」

〇黒背景
レイリィース「またですわ」
レイリィース「またこの展開・・・」
レイリィース「身に覚えのない罪で貶められて 毒薬での自死を申し付けられる」
レイリィース「もうこれで5度目」
レイリィース「私はもう5回もこのワインをあおって死んでいる」
レイリィース「いわれのない罵声を聞きながら」
レイリィース「屈辱で身を焦がしながら」
レイリィース「誰かのほくそ笑む声を聞きながら」
レイリィース「何度も何度も死んでいる」
レイリィース「世の中って」
レイリィース「世の中ってほんとに」
レイリィース「ほんと~~に・・・」

〇牢獄
レイリィース「クソッたれですわぁああ!!」
執行人「うおッ!?」
レイリィース「こんちくしょおおお!!」
  ゴクゴクゴクゴクッ!
執行人「なぁッ!?」
レイリィース「うっ!」
レイリィース「ぐうぅっ!?」
レイリィース「ううううっ!?」
レイリィース「グハァッ!!」
執行人「し、死んだ・・・」
執行人「へ、へっ、売国奴の魔女め。 ビビらせやがって」

〇黒背景

〇立派な洋館

〇貴族の部屋
  ゴーン、ゴーン─
レイリィース「ハッ!?」
レイリィース「ま、また」
レイリィース「また、見慣れたこの部屋に戻ってきましたのね」
  コンコン
レイリィース「・・・お入りなさい」
セバスチャン「おはようございます、お嬢様」
セバスチャン「よく眠られましたでしょうか?」
セバスチャン「本日は、大事な大事な『お見合い』の日でございます」
セバスチャン「旦那様も奥方様も既に準備をしておりますので─」
レイリィース「静かに、爺や」
セバスチャン「お、お嬢様?」
レイリィース(段々と分かってまいりましたわ)
レイリィース(私のこの能力が)
レイリィース(神の祝福か、精霊の加護か、はたまた悪魔の悪戯か分かりませんが)
レイリィース(私には『死に戻り』の能力がある!)
レイリィース(死んだ後!今日この日に! 記憶を引き継いで戻ってくる能力が私にはある!)
レイリィース(・・・)
レイリィース(ふっ、さすがは私ですわね)
レイリィース(天に二物も三物も四物も与えられている)
レイリィース(自分と言う人間が末恐ろしいですわ)
セバスチャン「あ、あの、お嬢様?」
レイリィース「静かに!」
セバスチャン「は、はい」
レイリィース(こうやって目覚めるのも既に6度目)
レイリィース(時間はかかりましたが、私が死に至るまでの流れもだんだんと掴めてまいりましたわね)
レイリィース(まずは今日、この後王宮で行われる私のお見合い)
レイリィース(これが最大のポイントですわ!)

〇城の会議室
  お相手はクロムウェル第二王子。
  甘いマスクに渋い声。
  文武両道で才色兼備な素晴らしい殿方!
  貴族令嬢であれば、誰もが結婚を望む最高のお相手!
  かの方も御年16歳。
  結婚相手を決めるには遅いくらいですが、あの方ほどの器量の持ち主はそうはいませんからね。
  貴族同士でけん制しあって今の今まで決まらなかったのを、王子の鶴の一声が状況を一変させたのですわ!
クロムウェル「この俺の結婚相手だぁ?」
クロムウェル「フン、なりてー奴はみんな王宮に来な。 そんなもん一人一人とお見合いして決めればいいじゃねーか」
  お懐がお深すぎますわ!!
  この前代未聞の一言に光明を見出して、それまで諦めていた弱小貴族までもが殺到し、数十日にも及ぶお見合いが開かれ
  そして今日!最終日!
  ついにこの私の番がやってきた!
  過去の私はこのお見合いでクロムウェル様にこう告げる!
レイリィース「オーホッホッホッホ!この私こそが!」
レイリィース「レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード!」
レイリィース「ヴィランガード伯爵家の一人娘ですわぁ!」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「この俺を前にして、そのどでけぇ態度に、どでけぇ声・・・」
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース「当然お受けいたしますわぁ!」
  これがダメ!!
  これがそもそもの間違い!!
  このせいで私は死ぬことになる!!
  クロムウェル様の人気は国内でもナンバーワン!!
  王国のありとあらゆるご令嬢に好かれている至高の存在!!
  そんな人物と婚約者となったらどうなるか!?

〇黒背景
ご令嬢A「あんな人が結婚相手?」
ご令嬢B「伯爵家の令嬢ごときが・・・」
ご令嬢C「なんであの人なの・・・」
ご令嬢D「私の方がクロム様を・・・」
ご令嬢E「許せませんわ、こんなの!」
ご令嬢F「憎たらしい小娘め!」
  憎い。
  憎い憎い憎い。
  憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い──
  憎い!!
  絶対に
  許さない。

〇黒背景
レイリィース「そう」
レイリィース「今までのループで調査した結果分かりましたの」
レイリィース「私の死ぬ理由はまさに『これ』なのですわ!」
レイリィース「王子と結婚することへのご令嬢方の嫉妬心!」
レイリィース「その行き過ぎた嫉妬心が! 私を無実の罪で死罪にする!!」
レイリィース「国王陛下の暗殺だとか、ありもしない罪を総がかりででっち上げて!!」
レイリィース「私にあの毒入りワインを飲み干させる!!」
レイリィース「王子の婚約者となることが、私が死ぬ理由なのですわ!」

〇貴族の部屋
レイリィース「・・・」
レイリィース「ふっ・・・」
レイリィース「たった5度のループでここまで調べつくすなんて流石私ですわね」
レイリィース「長い王国の歴史を紐解いても、これほどの才女はいらっしゃらないでしょう」
セバスチャン「あ、あの、お嬢様?」
レイリィース「あら爺や。何かしら?」
セバスチャン「あら爺や、ではございません」
セバスチャン「すぐにご用意をお願いします。 今日は大切な日なのですから」
レイリィース「ええ、もちろんですわ」
レイリィース(ご令嬢方の嫉妬で死ぬと分かった以上、もう問題はございません)
レイリィース(婚約者にならなければいいのです!)
レイリィース(王子様に気に入られなければいいのですわ!)
レイリィース(過去のループのような自己紹介をしなければ、興味も持たれずモブ令嬢として婚約者候補から安全に消えれるはず!)
レイリィース(クロムウェル様は素敵なお方)
レイリィース(国内でも有数の超優良物件!)
レイリィース(でも!死ぬんじゃ意味ありませんわ!)
レイリィース(王子様と結婚できても死んだんじゃ何にもなりませんわ!)
レイリィース(まずは生きること!)
レイリィース(命大事に!命大事にですわ!)

〇城の会議室
  王宮内・応接室にて―ー
クロムウェル「・・・」
ママリィース「・・・」
パパリィース「・・・」
レイリィース「・・・」
パパリィース「こ、これ、レイリィース 自己紹介なさい。 王子様の御前なのだよ?」
ママリィース「そうですわ。失礼でしてよ。 レイリィース」
レイリィース「・・・」
レイリィース(お父様、お母様。申し訳ございません)
レイリィース(今日ばっかりは喋れませんの)
レイリィース(だって喋って自己紹介したら)

〇城の会議室
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ! お前、俺の婚約者になれよ!」

〇城の会議室
レイリィース(『これ』ですものね)
レイリィース(自己紹介なんて出来ませんわ)
レイリィース「・・・」
パパリィース「あああぁ・・・。 王子様、申し訳ございません!」
パパリィース「うちの娘はどうも、がらにもなく緊張してしまっているようで・・・」
ママリィース「ほほほっ、そ、そう! 大好きな王子様を前に声が出ないみたいなんですの!許してくださいまし!」
レイリィース「・・・」
レイリィース(いい調子ですわ)
レイリィース(このままお見合いがお流れになれば、私は生き残れる!)
レイリィース(このまま、このまま、お流れにさえなってくれれば!)
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「この俺を前にして 目をつぶって喋らねーだぁ?」
レイリィース(そう)
レイリィース(怒ってくださいまし、クロムウェル様)
レイリィース(怒ってお見合いを台無しに─)
クロムウェル「おもしれー女じゃねーか。気に入ったぜ!」
レイリィース(・・・)
レイリィース(ん?)
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース(んん?)
レイリィース(んんんん??)
レイリィース「あのクロムウェル様 今なんとおっしゃいまして?」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ って言ったんだよ」
クロムウェル「まさか断らねぇだろうな?」
レイリィース「おっ、おおおっ、おっ!」
クロムウェル「あん?」
レイリィース「お断りですわ、そんなの!!」
パパリィース「なな何を言ってるんだレイ!」
ママリィース「そ、そうですわよ、レイ! 光栄なことでしてよ!お受けなさいな!」
レイリィース「い、嫌ですわ! 絶対お断りですわ!」
クロムウェル「ほう。そんなに嫌なのか・・・」
レイリィース「そうですわ! 王子様には悪いですけど、今回の話は──」
クロムウェル「ますます気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者決定な!」
クロムウェル「文句はねーだろ?ヴィランガード伯爵!」
パパリィース「も、もちろん!」
パパリィース「どうぞ貰ってやってくださいませ!」
ママリィース「娘も心の底では喜んでおりますわ!」
レイリィース「な、なんで!?」
レイリィース「どおしてぇ!?」
レイリィース「どうしてこうなりますのぉ!?」

次のエピソード:第二話『おもしれーのはどっち?』

コメント

  • イケメン王子とですわ口調自信満々お姫様、凄く好きな組み合わせです!
    どう頑張っても婚約は成立してしまうということはそこからが勝負?続きが気になります!

  • やっぱりこうなった(笑)
    王子もルーパーじゃないかと密かに疑うほどです。きっと次回も俺の婚約者になれ、ですね。
    全体的に憎しみといいつつ明るい雰囲気のストーリーがいいですね。

  • 何やってもダメそうなルートに行っちゃいそう😂
    果たしてループを抜け出す方向に行けるのか…!?

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