暗き街の星(脚本)
〇綺麗な港町
暗黒街プルガトリオ。
売春、窃盗、殺人。あらゆる犯罪の温床。
この街を支配する父の子供として、私達は生まれた。
〇貴族の応接間
優しい子だった
腐敗した街には似合わない
優しい子・・・・・・
その街を支配する父の元に
どうしてこんな子が生まれたのか・・・・・・
フリオ「僕はいつか この街にはびこる悪を消し去りたい」
ベガ「その手段として お父様の後を継ぐつもり?」
フリオ「うん、その為には組織の力も必要だ」
ベガ「だったら、その優しさを貫く為に 優しさは捨てなさい」
しかし、この街をより良くしようと誓ったフリオはもういない。
〇教会の中
フリオの結婚式
フリオとその妻になる女性は、永遠の愛を誓い、新たな門出を迎えるところだった。
二人は永遠の愛を誓ったが、その矢先
その約束は唐突に終わりを向かえた。
〇荒廃した教会
それは突然だった。
突然の爆発が教会を襲い
私達はそれに巻き込まれた。
ベガ(なにが 起きたの・・・・・・)
私は意識朦朧とする中
瓦礫の散乱する地面に倒れていた。
煙の中から一人の男が現れる。
ソイツはこの暗黒街で義賊と称される男。
エンハンブレ「我が名はエンハンブレ」
エンハンブレ「悪逆非道をなすシプノリアよ」
エンハンブレ「貴様にこの街の民意を示す」
エンハンブレ「民意は 貴様の死だ!!」
うかつにも護衛を付けなかった父の元に、侵入者が駆け寄る。
男は剣を抜き、父に向けて突き出した。
フリオ「父さん、危ない!!」
父を突き飛ばし無防備になったフリオの胸を剣が貫ぬく!!
まだ間に合う。
私の力を使えば・・・・・・
フリオの傷を治してあげられる。
私は這いつくばりながら、フリオの元へと近づく。
遠い、遠い、遠い・・・・・・
早く助けないといけないのに・・・・・・
なのに床を這う私は、一向にフリオの元に近づけない。
フリオの体が力なく床に崩れ落ちる。
見開いた目から、少しずつ光が消えていく。
〇荒廃した教会
フリオ「姉さん・・・・・・」
ベガ「フリオ・・・・・・」
フリオ「僕の願いを・・・・・・ 叶えて・・・・・・」
私は懸命に這いつくばり、フリオに近づくと彼の手を握る。
フリオが後を託すかのようにわずかに、私の手を握る。
そして私の手を握る力を失いながら、瞳の光が消え去った。
〇貴族の応接間
シプリアノ「まったく、バカな死に方をしたものだ」
シプリアノ「私の唯一の後継者だったというのに・・・・・・」
ベガ「わたくしが後を継ぎます」
シプリアノ「フン・・・・・・ 女の身でか?」
ベガ「えぇ フリオはわたくしに夢を託しましたから」
シプリアノ「ほう・・・・・・ 夢とはなんだ?」
ベガ「お父様の後を継ぎ 組織の長になることです」
違う・・・・・・
フリオの夢は
この街に輝く希望の星になることだった
シプリアノ「ならば証明して見せろ」
ベガ「えぇ、必ず」
シプリアノ「先ずはお前に娼館を任せよう」
シプリアノ「好きにして見せろ だが力を示せ、その場所でな!!」
〇ファンタジーの学園
高級娼館アマリリス
〇貴族の部屋
ベガ(フリオ・リベラ・オリウエラ、享年25歳)
ベガ(人生も 描いていた夢はこれからだった)
ベガ(しかし全てが道半ばで終わった)
ベガ「あの子が語った夢を 夢のままで終わらせてたまるものか!!」
私はワインの入っていたグラスを
憎しみとやりきれなさで、強く握りすぎた
ノックの後、間髪いれず扉が開いた
そこにはイレネが立っている
私の手元に視線を向けると
普段の天真爛漫さが影を潜め
私の身を案じた悲し気な表情を浮かべる。
イレネ「ベガ・・・・・・ その手、血が出てるじゃない!!」
ベガ「心配することはない。すぐに治る」
ベガ「癒しの守護のエレメンティアよ 汝の護を我に!!」
イレネ「お願いだから心配させないでよ」
イレネ「いくら簡単に治せるからと言っても ベガが傷つくのは嫌だよ」
ベガ「気を付けるよ」
ベガ「それで、なにしにここへ?」
ベガ「要件があったのだろ?」
イレネ「あぁ、えっと・・・・・・」
イレネ「ドミナ・メンデス家のお貴族様が遊びにやって来ました」
ベガ「なにか問題が?」
イレネ「対応できるのは 私とブリセイダの二人しかいないんです」
ベガ「お前達二人で問題ないだろ?」
イレネ「それが・・・・・・」
イレネ「今日は三人目の方がいらっしゃいまして」
ベガ「噂の三男か・・・・・・」
イレネ「えぇ、その三男の方です」
ベガ「冷徹で非道な男と聞いている」
ベガ「分かった・・・・・・ 代わりに権力の弱い人間に、お帰り頂くとするよ」
ベガ「恨まれるにしても、力を持つ者に恨まれるべきではないからな」
ベガ「まずは挨拶に向かおう」
ベガ「誰をあてがうべきか、この目で判断しよう」
〇洋館の階段
ベガ「ロレンシオ様、エフライン様」
ベガ「ようこそ、アマリリスへ」
ベガ「御贔屓にしていただき 至極嬉しく思います」
ロレンシオ「気取った挨拶は必要ない ただ遊びに来ただけだ」
ロレンシオ「満足させてくれれば、それで良い」
エフライン「今日はアルテアを連れてきたんだ」
エフライン「享楽に生きることの楽しみを知らない男だからね」
エフライン「君達から教えてやって欲しい」
アルテア「迷惑な話だ・・・・・・」
イレネ「元気でして、エフライン様?」
エフライン「エフラインで良いよ、イレネ」
エフライン「僕も君が元気そうでホッとしている」
イレネ「お気遣い頂きありがとうございます エフライン」
アルテア「随分と親しいようだな」
エフライン「あぁ、懇意にさせてもらっているよ」
アルテア「高級娼館とは言え 貴族と違って下賤な民には変わりはない」
アルテア「身分の違いを考えたらどうだ?」
イレネ「・・・・・・申し訳ありません」
エフライン「アルテア、言葉が過ぎる!!」
アルテア「ふん。それで、俺にはどんな女をあてがってくれるんだい?」
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わあああ😆
好きな! タイプ!
ダークファンタジー、一気に世界観に引き込まれました!
また読ませていただきます!
キャラクター同士の丁寧な会話のやり取りに思わず引き込まれてしまいました🙌
他の方の作品とは少し違う切り口の展開で面白かったです🤗
憎しみと愛をテーマにしたストーリーのステレオタイプっぽくない話でした。
個人的にとても好きな感じの始まり方です。程良くファンタジーも混ざってますし、直接伝えていないのに伝わっているキャラ同士の会話が素敵です。ベガカッコ良い!
キャラクター紹介も順次公開してくれると嬉しいです。
続きも楽しみにしてます。