第二十五話『間奏曲Ⅸ』(脚本)
〇病院の廊下
何でこんなことに。
少し仮眠を取ったところで、留守番電話に入っているメッセージに気づいた冴子は。血相を変えて、病院に駆けこんだのだった。
奥田冴子「珠理奈ちゃん!」
長谷川珠理奈「お、おばさん・・・・・・!」
病院で待っていたのは、晴翔の母親をずっと慰めていた珠理奈だった。
奥田冴子「は、晴翔君が・・・・・・車に撥ねられたって聞いて・・・・・・!」
信じたくない。何かの誤報であってほしい。そんな気持ちを滲ませて冴子は叫ぶ。しかし。
長谷川珠理奈「・・・・・・うん。あ、頭と胸を強く打ったって。い、意識がないって・・・・・・」
長谷川珠理奈「あ、ハンドル操作を間違えた車が突っ込んできて、それで、は、晴翔、跳ね飛ばされたって・・・・・・」
嗚咽を漏らしながら、珠理奈が言う。
長谷川珠理奈「今、まだ手術してて。どうしよう、どうしようおばさん。晴翔が死んじゃったらどうしよう、どうしよう・・・・・・」
奥田冴子「そ、そんな・・・・・・」
つい、ほんの数時間前まで自分は晴翔と話していた。あんなに元気だったのに、一体何故。
奥田冴子(どうしてよ!晴翔君は・・・・・・何も悪いことなんかしてないじゃない!どうして、神様はこんな残酷なことするの!?)
お願いだから、どうか。
あの子まで自分から奪わないで。
祈るような気持ちで、冴子は両手を握りしめるしかなかったのだった。
〇モヤモヤ
第二十五話
『間奏曲Ⅸ』
〇オフィスビル前の道
世界は、理不尽に満ちている。
詳細を聴いたところ、どうやら晴翔は彩名と話していたところに(目撃者によると、何やら晴翔が彩名に絡まれていたらしい?)、
ハンドルを切りそこなった車が突っ込んできたということだという。
運転手は軽傷。傍にいた彩名に関しては無傷。
それなのに、何でよりにもよって晴翔だけがあんな酷い怪我をしなければいけなかったのか。
『よくわかんないけど、瀬田さんがおばさんを殺人犯呼ばわりしてパニクってる!』
『家に行くかもしれないけど絶対ドア開けないで!』
そんなメッセージが、晴翔から奏音の携帯に届いていた。
冴子のメールアドレスは知らなかったが、冴子がまだ奏音の携帯を解約していないことを知っていたからそっちに送ったのだろう。
奥田冴子(どうしてよ。晴翔君じゃなくて、瀬田彩名がぐちゃぐちゃになればよかったんじゃない!なんで、なんであの子が・・・・・・!)
病院を出てからも、ずっと怒りが収まらなかった。晴翔は何も悪くない。
生きている価値がなかったのは間違いなく彩名の方なのに、神様は何をやっているのだろう。
否、そもそも。奏音を殺した時点で、この世界に神様なんてものはいないのかもしれないが。
奥田冴子「そうよ、神様なんかいない。何で、あんな優しい子達が・・・・・・っ!」
思わず冴子が呟いた、まさにその時だった。
「そうですね、神様なんてものはいないのかもしれません。悪魔と呼ばれるものがいるのは、残念ながら事実であるようですが」
奥田冴子「!」
誰だ、と思って振り返った先。一瞬、冴子はあの商人が立っているのかと思ったのだった。
おかしな話だ、スーツっぽい服だというだけで、顔立ちも背丈も何もかも違うというのに。
奥田冴子「だ、誰・・・・・・?」
あちこち撥ねた黒髪に緑目。高校生くらい?にも見える童顔の青年。
彼はにっこりとほほ笑むと、胸元のポケットから冴子に一冊の黒い手帳を見せてきた。警察手帳だ。
雨宮縁「申し遅れました。僕は、警視庁捜査一課の、雨宮縁と言います」
雨宮縁「・・・・・・捜査一課の中でも、ちょっと特殊な係に所属してまして。・・・・・・あ、これまだ非公開だったかな?」
奥田冴子「・・・・・・刑事さん?刑事さんが、私に何か」
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晴翔くん、これは魔法の鏡の影響!?
そして、それを”見える”人が登場って!?
驚きの急展開で、ますます目が離せなくなりますね!