エピソード(脚本)
〇古い洋館
東京の奥多摩と神奈川の都県境にある教会
この教会は養護施設を兼ね
カザミという少女が住んでいた
〇教室の外
カザミは東京の夜間高校の昼学級に通い
〇渡り廊下
学校が終わった後は──
〇教会の中
修道女見習いとして教会で働いていた──
仕事は教会の掃除
〇古いアパートの居間
養護施設の子供の世話などだった
〇広い玄関
七瀬「こんにちはー」
カザミ「七瀬、いらっしゃい」
七瀬「外観は洋風なのに中は和風なんだね」
カザミ「そう古い建物なの」
カザミ「でもいいの?料理の手伝いなんて」
七瀬「いいよ、おもしろそう」
カザミ「じゃあ、お願い」
〇安アパートの台所
これを切っていけばいいんだね?
そう お願いね
あっ! ダメだよ七瀬
どこかダメだった?
20人分作る時は大きく切らないと
そうなんだ!
〇古いアパートの居間
もな「お腹減ったー!」
虎児「もうお腹ぺこぺこ」
拓也「お腹減ったー!」
禎夫「俺も腹減ったな」
ねえ、カザミ大丈夫なの?
ふふ、カレーだから楽しみにして
いつもより早くお腹が空いているのよ
カザミ「みんな、今日は友達に手伝ってもらったの」
七瀬「どうぞ、上手く作れていたらいいけれど」
「わーい! いただきまーす!」
虎児「美味しい!」
佳奈「いつもの鶏肉に豚肉も入っている!」
もな「美味しーい!」
禎夫「美味い」
カザミ「今日は七瀬が豚肉を切ってくれたの だから鶏と豚カレーよ」
拓也「美味しいよ!七瀬さんありがとー!」
もな「七瀬さんって美少女だね!また来てね!」
〇古い洋館
カザミ「なんでカレーが美味しいから 七瀬が美少女なのよー もー!」
虎児「はは!お姉ちゃん! 妬かない!妬かない!」
カザミ「なんでわたしが妬くのよー!」
佳奈「美少女の七瀬さん! また来てくださいさいね!」
カザミ「ちょっともー 佳奈まで。。」
拓也「ははは! あははは!」
足利冬児「・・・。」
神父「おや、足利さん?」
神父「どうされました?」
足利冬児「いや、会社の帰りにたまたま・・です」
神父「こんな街のはずれに?」
足利冬児「・・・。」
足利冬児「神父さん カザミさんは修道女になるのですか?」
神父「それは神の御心によりです」
足利冬児「あの子はまだ若い もっと広い世界を知るべきです」
神父「それも神の御心に」
神父「ただ、あの子は子供の面倒見がいい」
神父「こういうものは天性ですね」
足利冬児「面倒見がいいから、修道女とは・・ 発想が狭い人間の考えかと」
神父「養護施設で働く若い女性には制限があります」
神父「小さな男の子の面倒はいいですが 思春期の男の子の世話はできません」
神父「でも、彼女はここで育ち姉のような絆で 年長の男の子の世話もできるのです」
足利冬児「それも彼女の人生の犠牲があってではないでしょうか?」
神父「わかりません しかし彼女にあった人生の選択である場合も・・」
足利冬児「・・・。」
〇古い洋館
〇教室の外
〇教室
七瀬「カザミおはよう」
カザミ「おはよー 昨日はありがとね」
七瀬「いいよ、楽しかった 子供たちみんな可愛いかった」
カザミ「でもあの子たちあんまりだよ 普段世話してるわたしに対してひどいよ」
七瀬「カザミ、怒らない怒らない」
カザミ「わかった」
七瀬「でもカザミもほんと修道女してたよね 堂々としてた」
カザミ「そう、ありがとう」
七瀬「でもカザミも変なところ凝ってるよね ピンクのかつらにピンクのカラコンって」
カザミ「いーじゃん、別に、気分変えたいのー」
七瀬「わかったわかったよ」
七瀬「でもカザミってさ ずっと修道女で生きていくって訳?」
カザミ「うーん、そこはまだ自分でもわかってないの」
〇教室の外
〇教会の中
カザミ「〜🎵」
足利冬児「こんにちは」
カザミ「足利さん こんにちは」
カザミ「いつもご支援感謝しています」
カザミ「あと学校の制服もありがとうございます」
足利冬児「それは良かった 君の通う学校は服装は自由だからかえって迷惑かと思っていた」
カザミ「いえ、毎日私服だと服が足りなくなるので」
カザミ「それに学校を中退した子が多くて みんな思い思いの制服を着てますよ」
足利冬児「そうか、迷惑じゃないみたいで良かった」
カザミ「あ、でも・・」
足利冬児「なにか?」
カザミ「あの制服って有名私立の制服ですよね? なぜそこの制服かなって?」
カザミ「そこがわからなくて」
足利冬児「それは悪かった あの制服はね、私の母校の制服でね」
足利冬児「他の制服が思い浮かばなかった」
カザミ「そうだったのですね 実はとても気に入っています」
「ふざけんな! クソ野郎! このクソが!」
〇古い洋館
イリエ「なんでこんな汚ない所に住まなきゃいけねーんだよ! あーー!」
介添人「イリエわかっているはずだ」
介添人「ここしか君を引き取ってくれるところがないことを」
イリエ「ふざけんな! こんな所絶対嫌だ!」
介添人「イリエ、君が起こした問題もある」
介添人「そこもわかってくれ」
イリエ「嫌だああーー!」
カザミ「こんにちは」
イリエ「誰だお前!?️」
カザミ「ここでみんなの世話をしているカザミです」
カザミ「ここの生まれでもあるの」
イリエ「だからなんだよ! こんなとこわたしは住まねーぞ! 絶対!」
カザミ「事情はあると思うけど わたしはイリエさんを歓迎します」
イリエ「嫌だ・・」
イリエ「嫌だーー!️!️」
イリエ「親が悪いんだよーー! 親のせいでわたしはこんなところに!️!️」
イリエ「親が悪いんだーーー!️!️」
イリエ「・・・。」
カザミ「イリエさん、わたしも親を恨んでいます」
カザミ「最近は忘れる事も多くなりましたけれど」
カザミ「でも、親を恨む事と自分が幸せになる事は 違う事だと思いませんか・・?」
〇大樹の下
足利冬児「・・・。」
〇学校の屋上
そんな事言うなんて思わなかった・・
〇学校の屋上
〇大樹の下
足利冬児「あの時、わたしはまだ子供だったんだ・・」
神父「足利さん、あの子が親を許すのにはまだ時間が必要なようですね」
神父「あの子にも影があるようです」
〇古い洋館
〇大樹の下
足利冬児「私はもうあの子と会わない方がいいのでしょうか・・」
神父「足利さん、時間が必要といってもそれは明日かもしれません」
神父「シスター、足利さんに支援のお礼を」
〇古い洋館
カザミ「はい!」
〇古い洋館
カザミ「足利さんに神様の祝福を」
カザミ「足利さんに・・」
カザミ「大きな幸せが訪れますように・・」
ありがとう・・
〇大樹の下
足利冬児「・・シスター」
足利冬児「ありがとう・・ございます」
〇古い洋館
〇大樹の下
〇学校の屋上
〇古い洋館
カザミ「あなたにも幸福が訪れますように」
カザミ「誰もが幸せになれますように」
カザミ「世界中の──」
カザミ「すべての戦争が終わりますように」
七瀬のお手伝いや足利氏との関係、イリエちゃんの施設入所と、カザミを中心に様々な人間模様が繰り広げられて読み応えがありました。ピンクのカツラとカラコンは、普通の女の子から神に仕える身に変身する一種の儀式みたいなものなんですかね。年頃の女の子らしくピンクのところがかわいらしい。
施設を舞台とするとても温かなヒューマンドラマですね。ただ、その奥には様々な感情が秘められているようにも思えました。カザミさんの事情が垣間見えましたが、他の子たちにもそういったものがあるのでしょうね。みんなが温かな愛情の中で幸せに育ってもらいたいと願いたくなります。
カザミのやさしさは修道女として理想的すぎますね…