観光資源怪獣マボー

山本律磨

観光資源怪獣マボー(脚本)

観光資源怪獣マボー

山本律磨

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〇神社の出店
リポーター「夏休み最初の日曜日。祠島はマボー様を一目見ようと多くの観光客で大賑わいです」
子ども「マボーさまー。鱗とか牙とかがーちょっとこわかったー」
女子高生「モフモフで超可愛かったです」
外国人観光客「マボーイズゴッド!マジデ!」
リポーター「マボー様参拝日は毎月第三日曜日。来週には第1回マボー祭りが開催される予定です」

〇島
???「ただいま祠島」
???「ボク、この島を絶対救ってみせる。だから見守っててね、お婆ちゃん」
タイラ「お帰り!よく帰ってきたね!みんな待ってたよ」
???「お久しぶりです・・・」
タイラ「おい、吉森」
ヨシモリ「おかえり。ヒカル」
ヒカル「やっほ」
タイラ「じゃ、案内頼むぞ」
ヒカル「やっと戻ってこれたよ」
ヨシモリ「・・・」
ヒカル「何て顔してんの!久しぶりの故郷なんだからしっかり案内してよね」
ヨシモリ「そうだな。改めて祠島役場観光資源課マボー係。藤原吉森です」
ヒカル「ミスマボー、望月ヒカルです!」

〇古びた神社
  『本日の参拝は終了致しました。またのおこしをお待ちしております』
  島民達が祭りの準備をし始める。
  『第1回マボー祭り』の幟が立つ。
  掲示板『マボー似顔絵コンテスト』に貼られた様々な絵。
  『マボー』『まぼーさま』『マボーさん』
  『まぼー』『マボー様』『MABOO』
ヨシモリ「みんなにはこう見えてるらしい」
ヒカル「らしい?吉森にはどう見えてるの?」
ヨシモリ「俺には見えないんだ。だから話合わせて見えてるフリしてるだけ」
ヒカル「一応担当でしょ?役場のマボー係」
ヨシモリ「世話するフリしてるだけ」
  『まぼうさま』
ヒカル「ねえ、結局マボーって何なの?」
ヨシモリ「それは・・・」
タイラ「勿論この町の貴重な観光資源だ」
ヒカル「神社の裏にある洞窟にでるんですよね?マボー様って」
ヒカル「確かボク達が子供の頃は陽炎様って神様だったと思うんですけど」
ヒカル「洞窟も、近づいちゃいけない場所だって・・・」

〇暗い洞窟
タイラ「ああ。去年その封印されてた洞窟が突然開いて、中から陽炎様じゃなくマボー様が発見されたんだ」

〇古びた神社
ヒカル「会長さんは見たことあるんですか?」
タイラ「ああ、生きた宝石だ。なあ」
ヨシモリ「は、はい」
  と、テレビカメラを手にした一群が現れる。
  『あなたが望月ヒカルさんですね?』
ヒカル「え?あ、はい・・・」
  『怪獣マボーの生贄になるのは本当ですか?』
  『そんな祭りがこの国で許されるとでも思っているのですか?』
タイラ「おい吉森!どうにかしろ!」
ヨシモリ「それはただの噂です。こちらはミスマボーコンテストの優勝者で祭りも一般公開致しますので」
  『ではなぜマボーをカメラで映してはいけないのですか?』
ヨシモリ「敷地内は神社の管轄でマボー様は秘仏とされており」
タイラ「ようはテレビで取り上げて貰わなくても、この島は充分観光客のお力で支えられてるって事だ」
タイラ「島の行事に口出すんじゃねえ!出てけ出てけ!」
  平の指示で青年団が取材陣を締め出す。
ヒカル「ほら吉森も。男なら守ってよ」
ヨシモリ「み、みなさーん。困りますー。出て行って下さーい」
ヒカル「もういい・・・」

〇テレビスタジオ
大御所俳優「俺は見に行ってないけど結局立体映像でしょ?」
アイドル「そんなことないです~。私はっきり見たもん。超可愛いんだから」
司会者「立体映像だとしても地方の町興しとしては凄い技術ですよ」
大御所俳優「あと生贄の噂って。どうなの?」
司会者「それも言責をもつ我々と違って単にネットの噂ですから」
御用学者「ただ問題は立体映像ではない場合。つまりもう一つの可能性です」
御用学者「洞窟内に何らかの幻覚ガスが発生しているものと仮定すれば、早急な学術調査が必要となってきます」
御用学者「マスコミはその観点からマボーという怪獣に注目していくべきかと」

〇古いアパートの一室
ヨシモリ「・・・」

〇墓石
ヒカル「月の娘さ神と会う。百とせ一たび神と会う。島の災い退ける。百とせ一たび退ける」
  『100年前の台風、あれお前んちのせいらしーな』
  『お前の婆ちゃんが生贄にならなかったからだろ』
  『望月の孫は呪われとる・・・あんな恰好しくさって』
  『出ていけ!島から出ていけ気色悪い!』
ヨシモリ「ヒカル・・・」
ヨシモリ「俺はあの時お前を守らなかった。幼馴染なのに」
ヨシモリ「逃げろ」
ヨシモリ「儀式なんてどうでもいい。わざわざ幻覚ガスの坩堝に入ってくことなんて・・・」
ヒカル「幻覚ガス・・・」
ヨシモリ「ああ、もうすぐ勝手に消えるみたいだ。だから」
ヒカル「でもみんな確証が欲しいんだよ。災いなんてないって」
ヒカル「きっとその確証が、生贄」
ヨシモリ「いいのかよそれで」
ヒカル「ずっと憧れてたんだ。月の娘に。だから誰に何を言われても平気だった」
ヒカル「吉森だけは優しかったし」
ヒカル「童歌の主人公になれるなんて最高じゃん!ちゃんと応援してよね、ミスマボーを!」
ヨシモリ「・・・」

〇古びた神社
タイラ「観光客も送ったな。マスコミも帰したな。よし、真のマボー祭りを始めるぞ」
  『月の娘さ神と会う。百とせ一たび神と会う』
  『島の災い退ける。百とせ一たび退ける』
  もういいヒカル!やめろ!
ヨシモリ「儀式なんて馬鹿げてる」
タイラ「マボーは島の大事な収入源。儀式は大事な文化。どっちも島を一つにする為に欠かせないものだ」
ヨシモリ「そして一丸になってヒカルを追い出した」
ヨシモリ「『呪われた子供』そう言ってヒカルの一家を・・・」
タイラ「だけど今は立派な『娘』になってるじゃないか。ははは」
ヨシモリ「最低だよ」
ヨシモリ「一緒に戻ろう。俺がお前を守ってやる」
ヒカル「ありがと。吉森」
ヒカル「超カッコいいよ」
ヨシモリ「ヒカル!」

〇暗い洞窟
  洞窟の奥へ向かうヒカル。そして・・・

〇暗い洞窟

〇暗い洞窟

〇岩穴の出口
ヒカル「これが・・・マボー」

〇岩穴の出口
ヒカル「そういうことか」

〇テレビスタジオ
  祠島の観光資源怪獣マボーが30日の夜、死亡しました。また同じ場所で関係者の『男性』が倒れているのが発見されました。

〇病室のベッド
ヨシモリ「マボーか。俺にも見えてたんだな」
ヨシモリ「ただ、幻なんかじゃなかった」
ヨシモリ「超カッコよかったぞ、晄(ヒカル)」
晄「カッコいいは・・・」
ヒカル「あんま嬉しくないっ!」

コメント

  • とても興味深い設定ですね。
    鋭い社会批判の姿勢がいつも素晴らしいです。
    そんな山本様に拙作を読んで頂いたのは、ありがたいです。

  • 本当にみんなにマボー様って見えていたのかな?と思いました。
    他の人が「見た」というのを聞いて、自分が見えないなんて変だ!みたいな感じで伝わっていったのかと。
    吉森さんのセリフでそう思ったんです。
    村での事件は隠されることが多いので、ヒカルさんが無事みたいで良かったです。

  • 旧弊な田舎の空気と、宗教行事の無理な観光化による雰囲気の変化が描かれていて、とても好きな舞台設定です。マボーとは、その答えがどんどん気になっていく展開を楽しませてもらいました。

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