第1話「白木サチ」(脚本)
〇黒
「──あなたは誰?」
「──あなたは誰のために生きてるの?」
「──あなたは誰の人生を生きてるの?」
わたしは──
〇黒
第1話「白木サチ」
〇ファンシーな部屋
高山アキラ「サチ?」
白木サチ「・・・おはよう、アキラさん」
高山アキラ「うなされてたよ。変な夢でもみた?」
白木サチ「最近よく見るの・・・でも大丈夫。 それよりまたウチに泊まっちゃたね」
高山アキラ「だって、マリコといるよりサチといる方が楽しんだもん」
白木サチ「それは嬉しいけど、奥さんに怪しまれるんじゃ・・・」
高山アキラ「大丈夫だよ、マリコには出張って言ってあるから」
高山アキラ「うわ、噂をすればマリコだ・・・ちょっとごめん」
白木サチ「・・・」
〇部屋の扉
高山アキラ「・・・なに?」
マリコの声「もしもし、アキラ?」
〇おしゃれなリビングダイニング
高山マリコ「おはよう。ちゃんと起きれた?」
アキラの声「うん、何の用?」
高山マリコ「今日は家に帰ってくるんだよね?」
アキラの声「うん」
高山マリコ「アキラの好きなカレー作って待ってるね。出張がんばってね!」
アキラの声「急いでるから切るね」
高山マリコ「・・・」
〇ファンシーな部屋
アキラが部屋に戻ると、サチが自分の鞄を探っていた──
高山アキラ「何やってるの?」
白木サチ「勝手に触ってごめんなさい。私のスマホが見つからなくて・・・」
高山アキラ「ベッドの上にあるじゃん」
白木サチ「本当だ・・・わたし寝ぼけてるのかな・・・あはは・・・」
高山アキラ「・・・」
ピンポーン
高山アキラ「・・・誰だろう?」
白木サチ「・・・奥さんだったりして」
高山アキラ「冗談やめろよ・・・」
白木サチ「出てくれない?」
高山アキラ「わかった・・・」
〇マンションの共用廊下
五味警部「朝早くにすみません。 私こういうものでして」
高山アキラ「け、警察!?」
五味警部「ちょっとお聞きしたいことがありまして」
高山アキラ「・・・マリコがあなたを呼んだんですか?」
五味警部「心あたりがあるようですね?」
高山アキラ「・・・サチと不倫してることは認めます。でもいきなり逮捕しにくるなんて」
五味警部「サチ? 不倫?」
白木サチ「どうしたの?」
五味警部「警視庁の五味です。 あなたが不倫相手のサチさん?」
あなたは──!!
白木サチ「そうですけど」
五味警部「私の顔に何かついていますか?」
白木サチ「警察が何の用ですか?」
高山アキラ「おれを捕まえに来たんだ」
白木サチ「え!?」
五味警部「──あははははは」
「・・・?」
五味警部「脅かしてすみません。 不倫は犯罪でありません。 だから逮捕されませんよ」
高山アキラ「よかった・・・」
白木サチ「じゃあ何しにここへ?」
五味警部「昨夜この辺りで空き巣があったんです。 それで聞き込みをしてまして」
五味警部「不審な人物を見かけたりしませんでしたか?」
高山アキラ「いえ、見てません」
白木サチ「わたしも」
五味警部「そうですか。 もし何か不審な点を見かけたら警察にご連絡ください」
「・・・はい」
五味警部「では失礼します」
「・・・」
五味警部「・・・言い忘れてた。 不倫はたしかに犯罪ではありませんが、不法行為です」
五味警部「最悪の場合、逮捕より恐ろしい結果になることもありますので、私はあまりおすすめしません」
高山アキラ「・・・それはご忠告どうも」
五味警部「サチさん」
白木サチ「まだ何か?」
五味警部「あなた本当にサチさんですか?」
白木サチ「・・・はい、白木サチです」
五味警部「いや、以前どこかでお会いした気がしまして」
白木サチ「気のせいじゃないですか?」
五味警部「じゃあ、あなたに似た人ですかね。 兄妹はいらっしゃいますか?」
白木サチ「いません。 あの、忙しいんで失礼します──」
〇マンションの共用階段
一ノ瀬警部補「五味さん。 聞き込みどうっすか?」
五味警部「そっちはどうだ?」
一ノ瀬警部補「ビビるくらい何もないっす!」
五味警部「偉そうに言うな」
五味警部「進展なし。 不倫現場には遭遇したけどな」
一ノ瀬警部補「不倫っすか、穏やかじゃないっすね〜」
彼女、どこかで会った気がするんだが──
おれの気のせいか──
〇おしゃれなリビングダイニング
高山マリコ「おかえり!」
高山アキラ「ただいま」
高山マリコ「遅かったね・・・出張お疲れさま」
高山マリコ「すぐご飯にするね」
高山アキラ「いらない」
高山マリコ「どうして?」
高山アキラ「外で食べてきた」
高山マリコ「せっかくアキラの好きなカレー作って待ってたのに・・・ 連絡くらいしてくれてもいいじゃん」
高山アキラ「ごめん、忙しくて 来週も出張入ったから」
高山マリコ「・・・出張ってホント?」
高山アキラ「・・・どういうこと?」
高山マリコ「最近アキラわたしに冷たいし、出張って嘘ついて他の女の人の所へ──」
高山アキラ「ふざけんなよ! おれが誰のために働いてると思ってるんだ!?」
高山マリコ「ごめんなさい・・・わたしはただ不安で・・・」
〇ファンシーな部屋
サチはアキラの鞄に盗聴器を仕掛けていた──
アキラの声「・・・こんなんじゃおれたちやっていけないな」
マリコの声「待って、離婚だけはイヤ! わたしが悪かった。ごめん、アキラ、ごめん・・・ごめん・・・」
自分の正体が五味警部に気づかれたかもしれない──
すぐにでもあの計画を実行しなくては──
絶対にを許さない──
”りん”を殺した”アイツ”を、わたしは絶対に許さない──
〇黒
つづく