シンデレラ深夜未明

らいら

第8話 ふたたび荒野へ(脚本)

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〇商店街
ビークル「どこにいくんですか」
ビストライト「決まってるだろう。ミメイ博士のところに」
ビークル「なぜ?」
ビストライト「は? なに言ってるんだよ。俺たちの仕事を忘れたかビークル」
ビストライト「行方不明のミメイ博士を見つけて──」
ビストライト「シンデレラS01の自爆装置を取り除き、戦闘人形ではなく日用労働用として働いてもらう ・・・・・・って、あ」
ビークル「100体ほど同じ機体があると考えられていたので、この仕事には意義がありました」
ビークル「あなたもご存知の通り、シンデレラS01の残る機体はひとつだけ」
ビークル「最後のひとり007番は、宿屋で問題なく働いている」
ビークル「おそらくこの先も大丈夫でしょう。もうミメイ博士を見つける必要がないのではありませんか」
ビストライト「・・・本当にそう思うか?」
ビークル「ええ。上にそう報告すれば、この任務は打ち切りになるはずですよ」
ビークル「そもそもご主人さま。定期報告をしているのですか?」
ビストライト「あー、最近それどころじゃなくてな、すっかり忘れてた」
ビークル「ミメイ博士が失踪したのは、それなりに事情があると考えられますよね」
ビストライト「そりゃあ、あるだろうさ」
ビークル「家族ならともかく、他人が危険をおかしてまで会いに行くことではないかと」
ビークル「エラさんは明確な殺意を持って行くわけでしょう。今度こそ爆発に巻き込まれて、死にますよ」
ビストライト「大丈夫だよ、あいつはもう怒りに我を忘れたりしない」
ビークル「そんな根拠のない・・・」
ビストライト「ここまで関わったら、気になるだろ」
ビークル「は!?」
ビストライト「ミメイ博士の顔だよ。見てみたいと思わないのか」
ビストライト「苦労してやっと居場所がわかったんだから。顔を見る権利くらい俺にもある」
ビストライト「お前は着いてこなくていいよ。メンテ延長しててくれ」
ビークル「命を粗末にするあなたを見過ごせと?」
ビストライト「いや死ぬって決まってないけど・・・」
ビークル「たとえあなたが奇跡的に無事だとしても、エラさんがミメイ博士に手をかける様子を、ただ黙って見ているおつもりですか」
ビストライト「そんなわけなかろうが」
ビストライト「あーあ、足止め食らったせいでエラちゃんが先に行っちゃったよ」
  道の先に、エラの姿はもう見えなかった。
ビストライト「とはいえ、場所はわかってる。追いつこう」
ビークル「・・・エラさんは目的を見定め全力で走るでしょう」
ビークル「ご主人さまはバイク移動をしたとしても、体力回復のために途中で何度もバロックで休まなければいけません」
ビークル「絶対に追いつけないですよ。バカなんですか?」
ビストライト「そうだとしても、俺は行くよ」
ビークル「仕方ないですね。わたしが運転します」
ビストライト「は? なんでだよ。来なくていいって言ってんだろ」
ビークル「『道案内』が役目なんですよ。わたしがいなければ荒野で迷子になって、行き倒れです」

〇砂漠の滑走路
  バイクの荷台に必要な旅の道具を補充すると、ふたりは町の外れに来た
エラ「・・・・・・」
ビストライト「・・・あれ? エラ? どうした?」
エラ「遅いぞ 首が2メートルになるところだった」
ビストライト「待っててくれたの? どうもありがとな」
エラ「目的地までは全速力で移動しても何日もかかる。暇だからな」
ビストライト「おっ、ツンデレか!? いいねえ!」
ビークル「なに喜んでるんですか」
ビストライト「じゃあ、俺のバイクに乗っていくかい? お嬢さん」
ビークル「ちょっと待ってください、ご主人さま。このバイク二人乗りですけど!?」
ビストライト「お前、変形して小さくなればいいだろ」
ビークル「!!」
  実はビークルは、小柄な身体を変形させて、旅行トランクに詰められるようなミニサイズになることができる
ビークル「なっ・・・嫌です!」
ビストライト「せっかくコンパクトになれる機能があるのに、いっつも使わないよなー」
ビークル「このバイクはわたしとご主人さま用ですから。他の方は乗れませんから」
エラ「おい。なんでもいいから早く決めろ」
「・・・・・・」

〇荒野
  一人と二体で無理やりに乗ることになった。
ビストライト「なあ、これ、積載量超えでバイク壊れるんじゃないか・・・?」
エラ「重くてスピードが出ない。走ったほうが早いな」
  エラは言うなりバイクを飛び降り、そのまま自分の足で走り出した。
ビストライト「待てって!話が違う!」
ビストライト「あーもう! ビークルはやく小さくなれ」
ビークル「絶対に嫌です」

〇荒野
  それから。
  何度もエラに置いていかれそうになりながら、すったもんだの末に、ついに・・・
エラ「ここが、ミメイのいる場所」
ビストライト「っていうか見渡す限り平地なんだけどほんとにここにいるの!? 見た感じ俺たちしかいないけど」
ビークル「ご主人さま、わたし、気力体力電力を使い果たしました・・・」
ビストライト「え?なに?」
ビークル「節電モードに入ります。充電が完了するまで あと 5 時間の予定です」
  ビークルは急にその場に座り込むと、目を閉じた。そのまま微動しない。
ビストライト「1年以上一緒にいるけど、ビークルが節電モードに入ったの初めて見た・・・」
エラ「日頃はお前に無防備な姿を見せないようにしていたんだろう」
ビストライト「そうなの?」
エラ「・・・さて、行くぞ」
ビストライト「行くってどこへ──」
エラ「ミメイのメッセージに書かれていた座標、その地点に必ず入口がある」
エラ「ここだ!」
  エラは目標地点を見定めると、突然拳を地表に向かって振り下ろした。
  地表の景色が変わり、地下へ向かう階段が出現した。
ビストライト「これなに?隠しダンジョンみたいな・・・。これもミメイ博士が創ったの!?」
エラ「・・・たぶんな」
  足早に階段を降りていくエラの背中を追った。

〇システムキッチン
ビストライト「なんだ?これ、部屋・・・?」
  地下は、住居のような内装になっていた。
ビストライト「ここに住んでるのか?」
エラ「ミメイ・・・」
  キッチンからいい匂いがする。人が姿を現した。
ミメイ「こんばんは。待っていたよ」

次のエピソード:第9話 こんにちはミメイ

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