〇生徒会室
佐藤　正美「それで、渚くんはなんて？」
山本　奈子「今日、公園で会えないかって」
佐藤　正美「ふうん・・・」
佐藤　正美「その公園って、学校から近い？」
山本　奈子「はい」
佐藤　正美「なら、俺も一緒にいっていい？」
山本　奈子「えっ・・・」

〇公園のベンチ
田中　渚「おっ、奈子・・・」
田中　渚「・・・誰、そいつ？」
佐藤　正美「奈子ちゃんと同じ学校の三年、 佐藤　正美です」
佐藤　正美「渚くんにも説明したほうがいいし、 会ってみたかったからね」
田中　渚「は？」
佐藤　正美「ライバルだしさ、一応」
田中　渚「はああ??」
山本　奈子「正美先輩は、生徒会で一緒なの」
佐藤　正美「それで、今日、奈子ちゃんに告白した」
田中　渚「ちょ・・・なんだよ、それ。 話が違うじゃんか」
佐藤　正美「安心しなよ。 俺たちは、どちらも選ばれてない」
田中　渚「はい？」
佐藤　正美「君、昨日、告ったんだろ？」
佐藤　正美「それで、今日、俺が告った」
佐藤　正美「そんなわけで、奈子ちゃんは すぐには決められないみたいなんだ」
田中　渚「はああ？ おま、どんだけ優柔不断？」
山本　奈子「だって、いきなりだったんだもの！」
田中　渚「いや、んなこと言われても、 匂わせとか、別の学校だと難しいだろ？」
佐藤　正美「俺は、けっこう匂わせてたんだけどなあ」
山本　奈子「えっ」
田中　渚「えっ」
佐藤　正美「好きでもない子と、本の貸し借りなんて しないし、」
佐藤　正美「面倒な生徒会の仕事を わざわざやりたいとも思わないよ」
田中　渚「鈍感」
山本　奈子「だって、正美先輩は、 本当に憧れだったから」
佐藤　正美「で、どうしようか？」
佐藤　正美「奈子ちゃんは すぐには決められないみたいだし」
田中　渚「あー、そうっすね」
田中　渚「だったらお試し期間が 必要なんじゃないすかね」
佐藤　正美「まあ、そうなるよねえ」
田中　渚「やっぱ、ちゃんと考えて決めてほしいすし」
佐藤　正美「同感」
山本　奈子「あの」
佐藤　正美「奈子ちゃん、これから俺と、渚くんと 二人と付き合ってみたらどうかな？」
山本　奈子「えっ！」
田中　渚「あ、オレ、渚でいっすよ。 みんな呼び捨てなんで」
田中　渚「そっちは・・・正美さん、でいいすか？」
佐藤　正美「うん。いいよ。 みんな下の名前で呼ぶからね」
田中　渚「んじゃ、決まり」
田中　渚「奈子、オレと正美さんと付き合ってみて どっちにするか、決めろよ」
佐藤　正美「ジャッジは公正にね？」
山本　奈子「えええええっ・・・！」

〇空
　　こうして私は、正美先輩と渚と、
　　お試しで付き合うことになった・・・

〇教室
山本　奈子（ふう、次は理科室か・・・）
男子１「山本ー。正美先輩来てるぞ」
山本　奈子「えっ・・・」

〇学校の廊下
山本　奈子「正美先輩！ 休み時間にどうしたんですか？」
佐藤　正美「奈子ちゃんの顔を見に来た」
佐藤　正美「昨日の今日だしさ。 このくらいは特権ってことで」
佐藤　正美「今日生徒会だろ。 また、あとでね」
　　正美先輩の大きな手が、
　　頭に軽く触れる。
山本　奈子（頭・・・触られちゃった）
山本　奈子（はあ・・・顔、熱い）

〇階段の踊り場
　　放課後になり、いつものように
　　生徒会室へ行く

〇生徒会室
山本　奈子「失礼します」
佐藤　正美「やあ、来たね」
山本　奈子「やっぱり、私と正美先輩だけですね・・・」
佐藤　正美「そうだね。 みんな、相変わらずだ」
佐藤　正美「でも、俺は、みんなが不真面目で 嬉しいけどね」
山本　奈子「えっ、なんでですか？」
佐藤　正美「・・・奈子ちゃんと、 二人きりになれるから」
山本　奈子「あ、あああの、要望リストですけど まとめは終わってて・・・これで」
佐藤　正美「ああ、ありがとう。 この間はできなくて、ごめん」
佐藤　正美「・・・はじめよっか」
山本　奈子「はい」
山本　奈子「終わったー！」
佐藤　正美「終わったね！」
佐藤　正美「そうだ、奈子ちゃんこれ」
佐藤　正美「ロシア皇帝、面白かったよ！」
佐藤　正美「少しずつ読もうと思ったら 勉強そっちのけで、一気に読んじゃった」
山本　奈子「よかった、私もこれ、大好きなんです！」
山本　奈子「すみません、暗号のほうは まだ途中で・・・」
佐藤　正美「だろうね。 いろいろあっただろうし」
山本　奈子「ごめんなさい・・・」
佐藤　正美「全然いいよ！」
佐藤　正美「こうして、二人だけで会う 口実になるし？」
　　正美先輩の手が、頬に触れる。
山本　奈子（先輩、手、大きい・・・）
山本　奈子（鼓動が、うるさい）
佐藤　正美「・・・・・・」
山本　奈子「あの・・・手・・・」
佐藤　正美「うん」
山本　奈子「どう、して？」
佐藤　正美「別に？」
佐藤　正美「ただ、奈子ちゃんに触れたくなって」
佐藤　正美「・・・頬、熱いね」
佐藤　正美「かわいい」
　　そういうと、正美先輩は手を放す