エピソード1(脚本)
〇綺麗な会議室
雅子「ちょっと、やめ、やめてくださいって! 叩かないでよ!」
雅子「だから、やめってってば!」
雅子「なんなのよ、いったい!何度も叩かないでってば!」
私「しゃ、社長!って、姫子、どうしたの! 暴力はダメよ!」
姫子「え、どうかしました?」
私「どうかしたのじゃないわよ!ちょっと落ち着きなさいよ」
姫子は本来、人に手を挙げるようなことはしないはず。なのだけど、どうしちゃったっていうの?
〇学校の校舎
姫子は高校時代に酷い虐めを受けていた。
誹謗中傷、クラスでの孤立、様々な悪評・・・・・・
今もそうだけど、高校時代から姫子は性格が良かった。
困っている人を助けるという当たり前の行動を率先して行い、常に和かな表情で・・・
学業はもちろんのこと優秀で、容姿にあっても誰もが認める程で・・・・・・
欠点といえば優しすぎることと、育ちの良さからくる世間知らずということぐらいだった。
〇学校の校舎
クラスのリーダー的存在で、虐めの首謀者だった京子は・・・・・・
そんな姫子のことが、どうにも気に入らないようだった。
〇学校の校舎
虐めは酷くなり、鞄や靴、体操服を隠され、水をかけられ・・・・・・
最後は挨拶の代わりにと、泥水をかけられるようになった。
そして姫子は学校をやめた・・・・・・
〇学校の校舎
・・・・・・という話を、私は姫子が退学してから知ることになった。
高校はマンモス学校で、私と姫子はクラスが違ったから、当時は姫子が虐められていたという話を知らなかった。
中学が同じだったから、なにもしてあげれなかったことがショックだった。
同時に、京子に怒りを感じ、彼女の家を調べ、押しかけようとしたぐらいだった。
〇ビジネス街
そして20年後のある日、38歳になった私は偶然姫子と再会した。
〇ビジネス街
姫子は年間収益何億というアプリ開発会社を経営していた。
大会社の社長だ。
高校中退した程度で世間に負ける姫子ではなかったことに、わたしは安心した。
すると姫子は、いまだに世間知らずなところがあるからと・・・・・・
旧知の知れた私に秘書になって欲しいと言ってきた。
前の職場をやめようと考えていた私は、秘書となって姫子の世話をすることにした。
虐めを受けていた当時には、姫子の力になれなかったからこそ、今回は力になりたいと思った。
〇ビジネス街
そして、雨が降る今朝のことに話は戻ってて・・・・・・
〇個別オフィス
社長室に姫子がびしょびしょに濡れて出勤してきた。
私「社長、傘はどうしたんですか?」
姫子「駅を出たところで、傘を忘れたという学生さんがいたから貸してあげました」
私「って、傘を貸したら社長が濡れるじゃないですか」
姫子「でもその学生さん、困っていたのですよ・・・・・・」
姫子「それに私は出社さえしたら着替えとかはなんとかなると思いましたし・・・・・・」
私「社長らしいといえば社長らしい行為ですけど・・・・・・」
私「そろそろ自社ビルを持つ社長として、電車通勤はやめませんか?」
姫子「そうですね・・・・・・それより、今日は高校生が就職面接に来ると言ってませんでした?」
私「はぐらかされた気もしますが・・・・・・まぁいいでしょう」
私「確かに今日は面接の日です。取りあえず、社長は濡れた服を着替えましょうか」
〇綺麗な会議室
雅子「・・・・・・御社のアプリ開発に対する姿勢に強く共感しました。本日はどうぞ宜しくお願いいたします」
私「無難な自己紹介ですね。それに性格もきつそうで協調性もあまり感じられないし・・・・・・」
姫子「でもたった数分の面接で決めるのも可哀想ですよね。もう少し色々と聞いてみましょう。プライベートとか」
私「そうですね。わかりました」
私「あなたの生まれとか、普段の行動とか、よく行くところ、親との関係とか教えてもらえるかしら?」
雅子「はい。住所は履歴書にある通りで、母とは仲が良く二人で出かけることも多いです・・・・・・」
私「履歴書ね・・・・・・って・・・・・・」
私「この子の住所・・・・・・?」
姫子「どうかしたの?」
私「ええ、ちょっと確認したくて」
私「あなたのお母さんの旧姓と、それから失礼だけど年齢と卒業した高校って教えてもらえるかしら」
雅子「あ、はい。母は今年で38になります。高校は・・・・・・旧姓は・・・・・・」
私「社長、あ、あの・・・・・・彼女、京子の娘ですよ」
姫子「京子さんというと、高校の時の・・・・・・」
私「ええ。とりあえずは帰ってもらいますか」
姫子「なぜ?せっかく面接に来てくれたのに、可哀想じゃないですか」
私「可哀想って、良いのですか?。あれだけのことをした京子の娘ですよ」
姫子「当時のことは私にも理解できています。まぁ、京子さんは少々エキセントリックな方でしたけど、でもそれだけですよ」
私「それだけって、高校を中退させられたんですよ」
姫子「いえ、私はやりたいことがあったので自ら学校をやめたのです。なにも京子さんの行動が原因というわけではないのですけど」
私「しかし・・・・・・」
姫子「将来有望な若者です。私は諸般の事情もあって高校を卒業できなかったけど、でも若者にはチャンスを与えなきゃ」
姫子は人が良すぎる。あれだけ酷いことをされた娘にチャンスを与えるだなんて!
だけど、そんなところが姫子らしいともいえるんだけど・・・・・・
〇綺麗な会議室
私「合格か不合格かは後日連絡します」
雅子「よろしくお願いします。母からよく言われるんです。甘やかされて育ったから、少しは痛い目にあいながら勉強するべきだって」
雅子「私ももっと自分を鍛えたいと思います。合格したらしっかり働きますので、是非ともよろしくお願いします」
・・・・・・あの京子の娘とはいえ、それなりにしっかりしているのかも知れないわね・・・・・・
姫子「そうなの、良かったわ。じゃあ・・・・・・」
私「・・・・・・どうしたんですか、社長?」
・・・・・・どうしたのかしら、急に立ち上がって
雅子「痛っ!」
雅子「な、何をするんですか!急にビンタするなんて!」
私「しゃ、社長っ!」
姫子「・・・・・・」
最後の姫子の一撃は迫力ありました。京子の娘が言った事に信頼を持ちたかったのでしょうか?姫子がただただ優しすぎる・・という部分を覆されて、読者としてはより彼女に興味がわきました。