悪は栄えない

SATO

エピソード2(脚本)

悪は栄えない

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〇綺麗な会議室
私「姫子、ちょっと、やめなさいってば!」
姫子「って、えっと・・・・・・」
私「何を困ってんのよ。って、もう、とにかく姫子はここで待ってて」
雅子「いったいなんだって・・・・・・」
私「あなたはちょっと廊下へ、私と一緒に廊下に出て」

〇水の中
  人様の娘にいきなりビンタをし、それを止められたことに何故か戸惑う姫子を会議室に残し・・・・・・
  私は興奮し騒ぎ出す京子の娘、雅子を廊下へと誘った。

〇オフィスの廊下
私「まずは謝罪させて下さい。どんな理由があっても暴力は良くないわ」
私「本当にごめんなさい」
雅子「なによ!面接に来た人にビンタするなんて、どんな社長なのよ!」
雅子「パワハラを通り越しているわ!私が何か悪いことしたって言うの!」
私「いえ、あなたは何も悪くないわ」
  一体何があったって言うのよ、姫子。あの京子の娘だからって、暴力は良くないわよ・・・・・・
私「後日連絡します。今日は本当に申し訳ないことをしました」
雅子「連絡なんていらないわ。こんな会社こっちからお断りよ!」
雅子「なんなのよ、あの暴力社長は。母から聞いていたのと違うじゃない」
雅子「そうとうな世間知らずの甘ちゃん社長だって聞いていたのに!」
私「ちょっと、それどういうこと!?」
雅子「どうもこうもないわ。この会社で一次試験落ちたって、その時は母が同級生だっていえば・・・・・・」
雅子「甘ちゃんの社長ならきっと合格に変えてくれるって、そう聞いてきたのに!」
私「な、なにを、じゃあ、京子から姫子のことを聞いていたっていうの?」
雅子「そうよ。この就職難の時代に、こんな大会社へ入れるチャンスだって期待したのに・・・・・・」
雅子「逆にこっちから願い下げよ。暴力社長の会社で仕事したいわけないじゃない!」

〇高層ビルのエントランス
  興奮が収まらない雅子は、暴言を吐きながら早足で出口に向かっていった。
  それを止めるべきだとも思ったけど、私も私であの親子に怒りを感じ、引き止めはしなかった。

〇システムキッチン
  そして姫子の様子を伺うにしても、この怒りを少しは抑えた方が良いと思い、給湯室でお茶を飲むことにした。
  な、なんて親子なんでしょう!
  ・・・・・・でも、京子は姫子が社長になったことを知っていたんだ・・・・・・
  それにしても、姫子が社長をしている会社に、自分の娘を就職させようだなんて、よくも思えたものだわ・・・・・・
  自分が口を聞けば簡単に簡単に合格ができるだなんて、そんな発想がどこからくるのかしら?
  まさか、過去に何をしたか覚えていないとか?
  それとも自分の行為が悪いことではないと思っているとか?
  あの雅子って娘も娘ね。一次試験に落ちても、京子の娘だと言えば合格できるって甘えた考えだったなんて。
  不合格で当たり前よ・・・・・・
私「・・・・・・って、そう言えば!このままじゃまずいわ!」

〇個別オフィス
私「社長!大変ですよ」
姫子「えっと、だいぶ怒っているようなので、まずはすごめんなさいと謝った方が良いのかと・・・・・・」
私「それは後で良いですから、それよりあの娘・・・・・・」
  私は廊下で雅子から聞いた話を姫子に伝えた。
私「・・・・・・って話なんです。自分が就職しようとする会社の社長を甘ちゃんだなんて!」
姫子「えっと、なんと言ったら良いのやら・・・・・・」
私「本当はここでビンタした理由を聞きたいけど・・・・・・本題はそこじゃないんです」
私「その時間も勿体無いぐらい、急ぎで対応をしないといけないことがあるのです」
姫子「どうしたんですか?」
私「京子のことですけど・・・・・・彼女の家が、小さな印刷会社を経営していると以前聞いたことがあるんです」
姫子「詳しいですね」
私「実を言うと、社長が高校を辞めて直ぐ、京子の家に怒鳴り込もうと思って、京子のことを調べたんです」
私「そしたら京子のことを中学時代から知っている同級生から、彼女の家、ちょっと危ない筋だって聞いたんです」
私「それで尻込みしたって経緯があるんです」
姫子「そうだったんですか。なんか、私のことで心配かけたようですね」
私「それは良いんです。それより、京子は卒業して数年後に婿養子をもらったんですけど、その相手もなんか危ない人のようなんです」
私「で、そんな家だし、あの京子のことだから、何をしてくるかわからないと思うんです」
私「まぁ、暴力は良くなかったんだし、取り急ぎ、こっちから謝罪にだけは行くべきだと思うんです」
姫子「なんか、私、やっちゃったようなので、とにかく指示に従います・・・・・・」
私「理由とかは後から聞きます。とにかく今は京子の家へ行きましょう」

〇高級一戸建て
  二人で京子の家に向かったのだけど、途中、姫子は寄るところがあるからと、家の前で待ち合わせることにした。
  10分ほど待つと、姫子が手に紙袋を持って現れた。
姫子「ごめんね、待たせて」
  手土産なら私も用意したのに。でもまぁ、一つより二つが良いか。
  それにしても、豪華な家よね。
私「大丈夫です。そんなに待ってません。さぁ、行きましょうか」

〇一軒家の玄関扉
私「すみません。株式会社エルベックと言います。先ほどは娘さんに失礼を・・・・・・」
  インターホン越しの挨拶が終わる前に、京子が勢いよく扉を開けて出てきた。
京子「娘から聞いたわ! あんたっ、どんな教育受けてんのよ!いきなり人の娘を叩くなんて!頭おかしいんじゃないの・・・・・・」
  20年ぶりに見る京子は当時のままの、ワガママ感丸出しの顔つきだった。
  当時のことが思い出され、私もなんだか腹が立ってきた。
  けど、今回はこっちが悪いわけだし。落ち着くまでは京子の罵声を黙って聞くしかないか・・・・・・
京子「・・・・・・だいたいね、あんたは高校の時から変だったのよ。今回のことは絶対に許さないからね!」
京子「どんな手を使ってでも、あんたに復讐してやるんだか・・・・・・」
  京子が姫子に泥水をかけられた。
私「しゃ、社長!な、その紙袋の中の水筒に泥水を持ってきたの・・・・・・」

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